月を愛でる!「月見台のススメ」
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今日は、月見台についてお話をしたいと思います。
月を愛でることは、日本人特有の文化です。月見台は聞いたことがあると思いますが、家にあるかと言われたらないですよね。あったとしたら、よほど風流な家だと思います。60歳になって月見台がとても恋しくなり、あちこちで喋っていますが、今日はその延長で語らせてもらいます。
月見台と言えばパッと思い出すのが桂離宮です。ここは、世界中で見ても素晴らしく美しい建築と言われています。日本特有の数寄屋造りで、障子で外界と内界を分離する境界を表すなど、先鋭的な建物です。
桂離宮の最大の見所の1つに、月見台というものがあります。どんな所かと言うと、見開きの障子を開けたら奥に池が見える。その池の向こうには木立があって、さらに向こうに桂川があります。高い場所ではないけど、なだらかに桂川に向かって空が抜けているみたいな、そういう所にある台なんです。濡れ縁があって、その先にせり出したステージのような感じになっています。これは恐らく竹敷きです。
月見と言えば中秋の名月ですが、大体18時前ぐらいから昇ってくるこの月を、120%綺麗に見るための舞台が桂離宮の月見台なんです。
日本の綺麗な言葉に花鳥風月や雪月花など、月をあしらった言葉があります。それぐらい、日本人は古来から月を愛でるということを愛した国民なんです。一説によると月見は平安時代から文化としてあると言われています。昔だったら月を見ながらお団子を食べたり、歌を詠んだり。そんなことをして月を愛でていました。9月は、いわゆる収穫の時期です。月と言えばうさぎさんと言いますが、あれは慈悲の心を表すような言葉だったりします。神や豊作に対してお供えをして、感謝してみんなで喜ぶ。厳しい夏がだんだん終わりに向かう時期に、風雅を楽しむものでした。
一方、今の日本の文化の中でそれに似た物として、ウッドデッキがあります。ウッドデッキはどちらかと言えば昼間に楽しむものという感じがしますが、月見台は夜に楽しみます。ウッドデッキはイスを置いて座るイメージがあると思いますが、月見台は座面に座るという、いかにも日本人的な場所です。
座るということは座禅のように、心の平穏を得るようなところもあります。例えばウッドデッキならセランガンバツ・ウリンみたいな南洋の堅木で作りますが、あれは割とザラザラしています。そのため、素で座るのはハードです。月見台に多いのは、さっきも言った桂離宮の竹敷きやヒノキみたいなソフトな木なので、座るのにちょうどいいのです。
そんな月見台を、どこに作るか。郊外の広い敷地で自然豊かな所は、どうぞ月見台をやってください。できれば、その土地の中秋の名月の方向をちゃんと出して設置してもらったらいいと思います。対して、都市部だと周りに家がありますよね。1階のウッドデッキと同じように月見台を作っても月が見えません。なぜかと言うと、中秋の名月は低い位置に昇るからです。都市部で月見台をしようと思うと、2階のベランダの高さになると思います。
法律で言うと、ベランダの手すりは1.1mないといけません。でも月見台はそんなのがあったら座ると月が見えなくなってしまいます。そのため手すりは無いのが理想ですが、無いと怖いので、あまり高くないものを付けるといいのではないでしょうか。個人の裁量になると思いますが、そんな感じでやってもらうと楽しいかなと思います。
ちなみにうちのモデルハウスの月見台を見ていただいた方もいらっしゃると思いますが、いよいよ中秋の名月が来ますので、私もそこで「今宵はお酒を一献」みたいな感じでやろうと思っています。
余談ですが、桂離宮の月見台に対して月波楼という場所があります。月見台はステージ状で屋根がないのに対して、月波楼はさらに月を愛でることに特化した所です。屋根付きの下の濡れ縁みたいな所で、家の中から見るような感じです。京都の名所なので、行かれる人がいましたら、そこからの眺めも見られることをおすすめします。
無月・雨月という言葉がありますが、曇りで月が見えない時も雨がしとしと降ってる時も月を愛でることができるのは、日本人の感性だそうです。どんな時であろうと楽しむ・愛でる・感謝することが、日本人的なんだとこの歳になって改めて気づきました。そのこともあり、余計に月見台をやってみたくなったのです。もし子どもさんやおじいちゃん・おばあちゃんがいらっしゃったら、お孫さんたちと楽しい思い出を共有してもらえると、家族の距離も縮まるはずです。少し大袈裟ですが、文化の伝承にも繋がるのかなと思います。
今、庭を楽しむという気風が日本人にも戻ってきています。日本の感覚で楽しむ月見台もアリだなということを知ってほしいと思い、解説をさせていただきました。ぜひ参考にしてみてください。
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