「35歳と60歳」の理想の間取りは違う
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今回のテーマは間取りです。35歳と60歳が考える理想の間取りは全然違うという話をしたいと思います。
私事ですが、この3月で60歳になりました。それから僕たち夫婦は結婚して30何年と経ちました。そうなってくると、いよいよ娘たちが巣立っていくことが現実的になってきて、僕と妻と僕の母との大人ばかりの暮らしになっていくなぁと予感しています。こうして60歳になった自分自身の状況から、家づくりで必要なことや生活の変化について、改めてわかったことがありますので、みなさんにも知っていただきたいなと思いました。
今は平均初婚年齢が30歳と言われています。モリシタのお客様でも、30歳で結婚されて子どもさんを授かって数年経たった、年齢にすると35歳ぐらいのご夫婦が家づくりを始められるというのが結構多いです。
そういったご夫婦が希望される、あるいは提案される間取りを描いてみました。8P×8Pのシルエットで、2階に夫婦の寝室があります。お子さんは2人ぐらいになるかなという予定、もしくはすでに2人いるという家族構成です。
今、僕がスケッチに描いた間取りは、決して変な間取りではないですよね。「こんな感じならいいかな」と思われるような1つの例だと思います。
この間取りで家を建てたとして、25年経つと、その頃にはお子さんたちが巣立っていく時期を迎えると思います。ということは家族の状況も変わってきますよね。
ご夫婦が僕と同じ60歳を迎えたとして、1階の間取りはそこまで大きく変わるということはないと考えています。問題は2階です。
建物のシルエットを利用して、2階の間取りも描いてみました。ご夫婦の寝室の位置は、35歳でも60歳でも大きな変化はないと思いますが、もしかするとベッドの配置が変わるかもしれません。
30代であれば仲良くしたい頃だと思うので、スケッチに描いたようにベッドを2つ合わせるのを望まれる方が多いと思います。使い勝手もいいです。
そこから60歳になると、決して夫婦仲が悪いという意味ではないですが、それぞれの生活のリズムが変わってくる傾向があるんじゃないかなと思っています。
例えば僕たち夫婦はこんな感じです。
僕の場合だと、仕事から帰ってきたら晩酌をするのが楽しみなんですね。で、お酒を飲んでいい気分になったらそのまま眠ってしまいます。妻よりも早く寝ています。
一方、妻は、僕が眠ってしまうから、代わりに片付けをしてくれることがあります。そのあとゆっくりお風呂に入ったり、テレビを観たり、本を読んだりという感じで心が緩んでいくような時間を楽しんでいます。
人が眠っている横で電気を点けて本を読んだり、テレビを観たりすると、夫婦喧嘩の原因になることもありますよね。なので、夫婦それぞれの生活リズムがハッキリしてきたら、ベッドの間に仕切りをしたほうが良かったりします。お互いの生活ペースを尊重できるし、気配もわかる、というようなものですね。(この歳になると睡眠中に呼吸が止まる可能性もあるので、気になった時に姿がすぐに見られるというのも大事になります。)
あと2階には子ども部屋をつくられる方が多いです。家が完成してから25年後、子どもたちが巣立つと、子ども部屋は普段は何も使わなくなりますよね。
その時期を迎えたら、これまでのお客さんの中には、書道・手芸・パッチワークが趣味で、仲間内を呼んでワークショップみたいなことができるように教室として活用された方がいらっしゃいます。そうした使い方もいいですよね。
こういった感じで、35歳と60歳とでは「こんな家がいいな」というものに違いがあります。生きていく中で必ず変遷・変更があります。
「そうしたいと思ったときに変えればいいじゃん」と思われるかもしれませんが、1つ問題なことがあります。それは部屋の間仕切りが構造的に必要なものになっていて、外したくても外せない状況になっていることです。これは木造住宅でよくあることです。間仕切りが屋根を支えていたり、耐力壁になっていたり、間仕切り以上の役割を担っているケースですね。
模様替えしたくても外せないケースはよくあります。なので、僕は家づくりをスタートさせるときに「スケルトン・インフィル」という考え方をご提案しています。間仕切りはただの間仕切りであって、構造とは別にしておき、部屋の間取りを変えるときに影響しないようにするというものです。
家を建てるときに、自分のライフサイクルとか、人生のあらゆるスケジュールを想定するのは難しいですよね。予想できないです。
先程のスケッチでは、子どもが独立して部屋が空いたから教室に変えたという話をしましたが、場合によってはお子さんが大きくなっても住むというケースがあります。あるいは子どもは2人だと思っていたけど3人授かったとか、そういったこともあり得ますよね。
そういった予想外のことにも対応しようと考えると、家の構造はシンプルであるというのが非常に大事になります。スケルトンインフィルという考えなら、外周と丸い柱、耐力壁以外は取れます。極端な話、間取りを変えたいなと思ったときに邪魔なら取ってもOKになるよう、考えられているんですね。いらない間仕切りを取っても地震や台風に弱くなるということはないです。
スケルトン・インフィルなら、よく言われる「建物の間取りの柔軟性」とか「可変性」というものが担保できるようになります。自分の人生のスケジュールが変わっていったときにも、いろんな形でその家を楽しんだり利用したりすることができます。
さらに言うと、今、家はすごく値上がりしていますよね。建てるときにはコストが結構掛かるわけですから、自分たちで住んで終わりではなく、できれば自分の子どもや孫にも住んでもらえたらいいですよね。直系の子どもたちだけじゃなく、親しい方に譲るとか売る選択肢も出てくるはずです。
仮にお孫さんに譲るとしても、そこでどんな暮らし方をするかはお孫さんの自由ですし、他人であれば、なおさらそうだと思います。
そういうことから言うと、スケルトン・インフィルで間取りの柔軟性を担保しておけば、自分たちの人生の中にも柔軟性が生まれますし、家の資産価値としてもいいことですよね。
もっと言うと、1階の床下には基礎が必要になります。基礎というのは立ち上がりが複雑に絡み合うので、水道(あるいは排水)・ガスなどのライフライン系は、この中をかいくぐりながら収めていくんですね。
住む人が変われば、キッチンの位置も大きく変更したくなることだってあるはずです。そうしたときのことを見越して、基礎の部分もスケルトン・インフィルのような概念に近い形にされておくと、より良いですよね。
50年後、住み手が変わって、水回りも含めてガラッと変えたくなったとき、給水・給湯が簡単にできます。1つ注意が必要なのは排水です。これは勾配を取る必要があります。変更したいけど基礎を傷める可能性があるからやめよう、となっても、ある程度融通が効くほうがいいですよね。
これからの家づくりには、こういった可変性のある間取りというのがとても重要だと思っています。特に自由設計・注文住宅ということを選ばれる方は、どうしても自分たちにジャストフィットな間取りを望まれる傾向があります。スケルトン・インフィルにしても、自分たち仕様のスペシャルな間取りは実現できますし、構造面で融通が効くようにしておくことは将来のことを考えるうえでとても重要なことです。
60歳になった今、そのことを切実に感じていますので、みなさんの参考にもなればと思ってお話をさせていただきました。
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