現場発泡ウレタンのメリット・デメリット
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今回のテーマは現場発泡ウレタンのメリット・デメリットです。
断熱材でポピュラーなのは、グラスウールとかロックウールなどの繊維系の断熱材になります。一方で今は発泡ウレタンで断熱工事をすることも増えてきました。
これには背景があると思っています。
みなさんご存知のように断熱工事は絶対に必要なものですよね。今はCO2削減や省エネ性を追求することが、社会問題の解決に繋がっていて、しっかりやっていこうという機運が国全体で高まっています。人の関心も高まっているので、これまで断熱についてそこまで詳しくなかった人も「しっかりやらないといけない」「どんな断熱材がいいのかな?」考えるようになってきているのを感じます。
その際に、みなさんがいいなと思うのが100倍発泡(ウレタンA種3)と言うものになります。これが今すごく人気があるんです。一言で言うと安いんですね。しかもグラスウールと比較して扱いやすいです。シューッと吹くだけなので普通の大工さんでも一定の性能が出せます。特に気密性が担保しやすいです。
最近はお施主さんからも「断熱をキッチリお願いします」と依頼を受けることが増えていますので、100倍発泡のものを活用しているケースも多くなっているはずです。
100倍発泡のウレタンが人気の傍らで、古くから現場発泡が良いと確信を持って施工してきた人たちは、30倍発泡というウレタンを使うことが多いです。100倍発泡のウレタンが「ウレタンA種3」と呼ばれるのに対して、30倍発泡ウレタンは「ウレタンA種1」と呼ばれています。
家づくりについて勉強し始めた人は100倍と30倍と聞いたら、100倍の方が凄いように感じませんか?
でも同じ1というウレタンの樹脂があったら、これを100倍に膨張させたのが100倍発泡ウレタンで、30倍に膨張させたのが30倍発泡ウレタンになります。つまり30倍発泡ウレタン(ウレタンA種1)のほうが密実です。また同じ材料を100倍にするのと、30倍にするという違いがあるので値段が変わります。30倍発泡ウレタンのほうが高いです。
密実というのはどういうことかというと、熱が伝わりにくいです。熱抵抗値で言うと100倍発泡ウレタンよりは30倍発泡ウレタンのほうが良い、つまり性能が良いということになります。その代わりに高価格です。同じ体積を吹こうとしたら、液がたくさん必要ですし時間も手間も掛かります。
ここまで聞くと、100倍ウレタンはダメと思われるかもしれませんが、まずは同じウレタンでも100倍と30倍で特性などが違うんだよということを知っておいて次の話を聞いていただきたいです。
100倍発泡ウレタンと30倍発泡ウレタンは、いずれもどういう風に使うかが大事です。
スケッチを見てください。壁の断面図を描きました。
壁というのは真ん中に柱と柱があって、柱と柱の間に発泡ウレタンを吹いていきます。ただ柱と柱の間はがらんどうなので、片側にウレタンを受けるものがないといけないですよね。なので外壁側には合板が使われます。今、この合板は耐力面材として、構造的な補強にも使うので1つで2つの役割を兼ねています。そこに向けてウレタンを吹きつけます。
壁の構造に戻ると、室内側の方には石膏ボードがあります。ウレタンを吹いたら石膏ボードを貼って、その上に左官屋さんが漆喰を塗ったりクロス屋さんがクロスを貼ったりします。
ここでですね1つ気をつけてほしいのが断熱材の厚みです。
ウレタンは発泡していくので、人間の思ったとおりにコントロールが効かないという面があります。おおよそは止められますがミリ単位での調整は難しいです。多くの場合、柱と柱の間は105mmになっていて、ウレタンは70mm〜80mmという、約2割ぐらい抑えたところで吹き止めるのが理想です。性能表現としては約8cmの厚みになります。
そうするとお手軽ですし、熱伝導率で言うと0.034位になるので、100倍発泡というのはグラスウールと比べてもほぼ変わらないんですね。ただ105mmのグラスウールと80mmのウレタンを比べると、ウレタンのほうが薄いので性能は少し落ちます。
そうすると同じような断熱に思えますが、お客さんが思われてる性能とは差ができるという一面があることを覚えておいてください。
「柱の分の105mm全部吹いてよ」と思われる方もいらっしゃるはずです。これに対してウレタンを吹くこともできますが、ウレタンを吹き付けたらモリモリと溢れてきますよね。そうすると石膏ボードを貼れなくなるので、現場で大きなカッターを使ってカットすることになります。スパッと切って柱面に揃えることになるのですが、ここで「スキンカット」という問題が出てきます。
この100倍発泡というのは、別名“連続発泡”と言われています。
要は100倍にするから、ものすごく空気が入っているんですね。空気と空気の泡が膨らんで引っ付いた時に1つになることがあります。泡と泡ではなくて、連続して1つの大きな気泡ができるイメージです。これを連続気泡と言います。
壁の中には入れたくないものがあります。それは湿気です。内側の壁から湿気が入ってきた時に何が起きるかと言うと、場合によっては結露が発生します。
発泡ウレタンというのは吹いたら表面に塗膜ができます。例えば髪の毛につけるムースってミューっと出したら表面がツルッとしていますよね。ウレタンだと、あれの樹脂バージョンみたいなものができます。これをスキンと呼んでいて、連続気泡になったとしても塗膜があれば湿気が入るのを阻止してくれます。
ウレタンの厚みを80mmで止めた時はスキン層が残っています。一方で105mm以上吹いて表面をカットしたら、スキン層が無くなってしまうので問題になります。
ウレタンの発泡って見た目は湿気なんか通らないように見えますが、カットしたらバリアしてくれる層がなくなってしまうんです。
なのでカットする場合は、透湿バリアもしくは気密シートがないと、結露もそうですし、結露によって事故が起こる可能性が出てきてしまいます。なのでウレタンを使うときは必ず気密シートを付けてほしいです。
30倍発泡ウレタンも同じです。柱と柱の距離を越えて吹き付けたら必ずカットします。
30倍ウレタンの場合、いきなり105mmも吹けないので何回かに分けて施工します。層と層ができて、100倍発泡でカットしたときより幾分マシとは言われていますが、今度は透湿抵抗値というものが100倍発泡ウレタンに比べると3分の1ぐらいになるんですね。なので万難を排するという意味では、気密シートを貼った方がいいです。
ただ、結露計算とかをした上で、気密シートがなくてもいいという判断をすることもあります。これは技術者の判断に委ねられる一面もありますが、こういうケースもあるというのを知っておいてください。
予算が許せば、僕個人としては30倍発泡ウレタンで施工した方がいいのかなと思います。
専門的な話になりますが、今回の場合は透湿抵抗値というものを確認しないといけないです。
外気側の透湿抵抗値というのは面材という板が担保します。室内側に関しては発泡ウレタン、いわゆる断熱材と石膏ボードの合計で透湿抵抗値を持ちます。
一般的には外気側と室内側の比率の中で、2を切るようにしないと結露が起きると言われています。
透湿抵抗値比と言って、「内側の透湿抵抗÷外側の透湿抵抗」で計算をします。
30倍ウレタンは透湿抵抗値が2を切ることが多いですが、100倍ウレタンにすると2を超えて3台になることが多いです。3.13とかになって、2を超えてしまうので「これはシートが欲しいよね」ということになります。
加えて、多くの方が忘れがちなことがあります。面材という外壁の種類において、一番手軽で安いのは針葉樹の合板、いわゆる構造用合板というものになります。構造用合板は層になっていて接着剤で固めた物になります。つまり薄い塗膜の連続なので湿気が逃げてくれないです。
ダイライトとかタイガーEXボードとかハイベストとかいろいろな種類があります。
100倍発泡ウレタンで構造用合板を使うときは特に注意が必要です。
構造用合板を使うのは悪いことじゃないんですが、安易に100倍発泡ウレタンをスキンカットをしてしまうと事故の発生率が高くなるんじゃないかなと思っています。
現場発泡ウレタンのメリットは施工がラクで簡単に気密が出るということです。
デメリットとしては30倍発泡ウレタンだと、100倍発泡ウレタンと比較して高いです。100倍発泡ウレタンは安いけど、施工するときの注意点をちゃんとわかる人が作業しないと結露などの事故が起こりやすくなります。
今回のまとめです。
1つ目は、発泡ウレタンを使うのならスキンカットはしないでください。もしスキンカットするなら気密シートを使ってください。
2つ目が面材は、なるべく透湿抵抗値の低い物を選んでください。
最近はタイガーEXハイパーというものもあって人気があります。壁倍率には、やや難がありますが普通に使うにはほとんど問題ないです。すごく湿気を出してくれるので、考えられる不具合を軽減してくれると思います。こういったことがあるので面材選びをきちんと考えていただきたいです。
3つ目が厚さです。厚みが50mmの場合もあれば60mm、80mmでも、すべて“発泡ウレタン”という表現で済まされてしまうことがあります。
気密性能が簡単に出せるので、断熱性能に高くないのに家全体の性能がすごく上がったような気になってしまうことがあるんです。
ごまかされるという言い方は良くないかもしれませんが、ちゃんと厚みもチェックして、安心できる厚みになるようウレタンを吹いてもらうことをオススメします。
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