寒い吹き抜けと暖かい吹き抜けの違い
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今回のテーマは吹き抜けです。寒い吹き抜けと暖かい吹き抜けの違いを解説します。
僕のスケッチを見てください。
先日の見学会でも「吹き抜けって寒くないんですか?」と質問を受けました。
吹き抜けに関して僕が一番ポイントだなと思うのは、吹き抜けについている窓です。吹き抜けには当然窓が付いてると思うのですが、この窓が付いている方位によって、寒くなるか暖かくなるかが変わります。
最近はリビングを吹き抜けにするのが定着していますが、僕の小さい頃を思い返すと、吹き抜けがあるお家ってお金持ちの家というイメージでした。で、吹き抜けはどこにあるかと言うと玄関にあることが多かったです。
その家の家長の威厳の証明だったのかもしれません。玄関の扉をガチャっと開けたら、そのお家に来た人は「おおー!吹き抜けすごい!」と感じるはずです。慣れたら普通になりますが、最初はすごい!と思いますよね。
玄関が真南に作られている場合もあるので一概には言えないですが、たいてい南側は居室が配置されていて、玄関は北か西か東になります。冬になると南からの光が入らない玄関は寒いですよね。吹き抜けも南向きにあるほうが暖かいので、窓が南側についているかどうかで暖かさが変わってくるというのがあります。
でも、この話は当たり前のことでもあるので今日はもう少し細かい話もしていきます。
吹き抜けというテーマから外れてしまいますが、既存の建物の中で寒さを感じるときの話をします。
寒い=熱の損失ということになりますよね。この損失はどこで何%位なのかを、まず最初に理解していただけたらと思います。
既存の家で寒いとなるときは、窓やドアからの損失が36%です。建物の隙間が26%です。つまり「寒い」と感じるとき約6割以上はこれらの問題なんです。残りは外壁が18%、天井が11%、床が8%です。
さっき窓の方位の話をしましたよね。つまりこれは窓の取り方に関わります。
寒い吹き抜けというのは、吹き抜けに付いてる窓の性能が低いことが原因です。うちの父が建てた家も吹き抜けがありました、すごく寒かったです。でも「吹き抜けだから寒い」のではなく、「吹き抜けに付いてる窓の性能が低すぎた」というのが正しい見方かなと感じています。
当時、家に使われている窓の多くはシングルガラスでした。でも今はペアガラスがスタンダードになっていて、予算的に余裕があればトリプルにする方もいらっしゃいます。
吹き抜けの上にある屋根の部分の断熱性能も重要なポイントになります。これは寒さというより暑さ対策の方に大きな影響があります。以前、別の動画で「冬の一番寒い日は晴天の朝です」という話をしました。
▼屋根(天井)の断熱は壁の2倍以上に
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晴天の日に放射冷却という現象が起きて温度がすごく下がるんですね。晴天ということは雲が全然ない状態です。さらに宇宙空間というのはすごく温度が低い絶対零度の世界なので、そこに向かって地球上の地表の熱が奪われていきます。
家の屋根も地球の表面みたいなものですから、寒い日は家の屋根から熱が抜けていこうとします。吹き抜けの上にある断熱性能が不十分の場合、当然吹き抜け空間は寒くなりますよね。
そして何より影響が大きいのが隙間です。これまでの家で、吹き抜けがあって寒いという家の 9割以上は気密性が悪いです。気流止めがされてなかったり、気密シートを貼っていなかったりして、じんわり冷たい風が入ってきています。
暖かい吹き抜けを実現するなら、窓の方角を意識して、窓の性能を上げて、吹き抜け上部の断熱もしっかり実施して、吹き抜け全体の隙間を限りなくゼロに近付けることが必要です。
その上で何より一番重要なものは太陽の取り込みです。北側に向いている吹き抜けの窓が寒かいのは、光と熱が全然入らないからです。でも南に向いていれば、そこから光と熱を充分に取り込めます。
吹き抜け空間というのは1階にも2階にも窓が付いてるケースが多いです。なので、今言ったことを実践するだけでも、入ってくる熱がべらぼうに多くなって絶対に暖かくなります。
ちなみに窓の性能のお話をすると「それならトリプルを付けた方がいいですよね?」と聞かれますが、一概に「そうです」とは言えないです。お住まいになってる地域によって答えが変わります。
モリシタがある兵庫県のように本州の6地域、あるいは次に多い5地域のエリアで、吹き抜けがきちんと南に向いてる窓であれば断然ペアガラスがいいです。トリプルよりペアの方が日射取得の効率がいいからです。夜はハニカム構造のスクリーンを降ろして断熱性能をプラスします。
一般的にペアガラス+ハニカムスクリーンにすると、トリプルガラス並みの断熱性能に近付きます。なのでトリプルガラスとダブルガラスのいいとこ取りみたいになるんですね。
なので窓を選ぶときは、ただ性能値を上げるのではなく、スクリーンやカーテン、シャッター、雨戸など周りの設備も考慮していただきたいなと思います。
窓という開口部の性能を挙げる、というようなイメージです。そうしていただくと、いい吹き抜けが実現できるはずです。
最後に暖房の話をします。冬の時期、晴れの日は吹き抜けから太陽の光と熱を取り込むことができます。ですが曇りの日とか夜になったら太陽は出ていないので、部屋を暖かくするのに暖房機のお世話になります。そうすると、暖かい部屋にするには暖房機の取り付け位置も重要になります。
当たり前ですが、暖められた空気というのは上に上がっていきますよね。
なので例えば「家の構造とかも考えて、エアコンがよく効くように上の方に付けようか」と考えても、あまりに上にのほうにすると暖気が下まで降りないので、上に溜まってしまうことがあります。なので部屋の上部は暖かいけど、床のあたりは寒いなみたいなことになります。
ファンヒーターとかストーブは下に置くから問題ないと思いますが、エアコンは高い位置に取り付けるのがほとんどですので注意してください。
モリシタでは、暖房に床下エアコンをおすすめしています。低い位置に取り付けて使うエアコンで、名前のとおり床下を暖めて、その後は暖められた空気が家全体にまんべんなく循環するように設計をします。(住宅会社さんによっては据え置き型のエアコンをおすすめしているかもしれません)
低い位置にエアコンを取り付けて部屋を暖めるなら、部屋の上にファンみたいなのを取り付けて対流を促進させる機能を備えておくと、尚いいかなと思います。
吹き抜けというのは1階のリビングを明るくしてくれるメリットもあります。都市部のように建物がたくさん並ぶエリアで家を建てるなら、すごく有り難いことです。なので「吹き抜けはやらなくてもいいかな…」と食わず嫌いせずに、上手に使っていただきながら、暖かい暮らしに役立てていただければと思います。
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