片付く家の各論(玄関編)
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今日のテーマは片付く家についてです。このテーマにはいろいろなポイントがありまして、今回は玄関について解説をします。
以前、片付く家と散らかる家の違いというのを解説しました。この内容に、僕が改めて伝えたいことを加えてお話ししたいと思います。
▼片付く家と散らかる家の違いとは?
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僕のスケッチを見てください。
玄関に関していろんな考え方があると思いますが、僕が玄関スペースを考える時には、お客様に3つのシーンをお聞きしています。
1つ目が帰宅したとき。2つ目が身支度をするとき(家から外へ出ていくときですね)。3つ目が荷受けとか搬入するときです。
特に帰宅したときは仕事とか学校が終わったあとなので、みんな疲れて帰ってきますよね。ストレスフルな状態なので、そういった状態であることを考えて進めると生活ストレスを軽減させることにつながります。
玄関のスペースを考えるにあたって、まずは、よく聞く不満・要望を出してみました。
1つ目が玄関のシューズボックスの棚板の数が、もう少し多ければいいのにという内容です。
特に高いヒールの靴じゃなくて低めのもので、いろんなものを持っている女性から、棚板はいっぱいあった方がいいといった意見を聞くことがあります。
2つ目が小物入れが欲しいという内容です。代表的なのがハンコや鍵を置きたいというもの。僕はカッター・はさみ・テープ・紐とかも玄関にあった方がいいなと思います。宅配物を受け取ったときやバラしたダンボールをまとめるときに必要なものですね。
3つ目がコンセントがほしいというもの。玄関にコンセントを作るって、あまり考えないと思いますが、最近は電動自転車を充電するのにほしいという方が増えています。事前に考えていなくて、不便さを感じたり、延長コードでなんとか対応してるけとカッコ悪いという話を聞きます。
4つ目が鏡。鏡を付けたいなというものです。
5つ目が写真・絵・花を飾りたいというもの。玄関は家の顔になるところなので、そういった気持ちもありますよね。
6つ目がベンチが欲しいというもの。これは若い人はわかりにくいと思いますが、僕みたいに腰痛持ちの人だと立ちながら靴を履くのって辛いんです。座って履きたい気持ちがあります。女性もブーツのような長い靴を履くとき、座って履けるほうがラクだと思います。なのでベンチがあると便利なんですね。
7つ目が靴以外の持ち物も置ける場所がほしいというものです。そういった要望をよく聞きます。
典型的な玄関のイメージを描いてみました。シューズボックスがしっかりあって、玄関収納と言われているものも、ちゃんとある造りの中規模ぐらいの玄関です。
玄関というのは基本設計の際、小さくしすぎると、家が片付きにくい原因になります。
僕は大体のマンションって玄関が結構狭いなぁと思います。そして玄関が狭いと、靴が散乱してたり、いろんなものが無造作に置かれているケースが多いです。なので、玄関スペースをどれぐらいにしたほうがいいか決めるポイントもお伝えします。
必要な玄関スペースを決めるのには、大体4つの流れがあります。まずは家族構成を聞いて、家族が持っている靴の形と量を把握します。
一軒家のシューズクロークは学校の靴箱と違って、さいの目に切られたような造りではないですよね。一足一足を納めるのではなく、横長の板の上に靴を何足も並べる形になっていることが多いと思います。縦板だけを適度に区切っている形もあります。
この縦板を区切りって使うタイプが結構くせ者です。というのは、足のサイズによって置けないものがあったりするんですね。僕はあまり背が高くないのですが足は結構大きくて27cmぐらいの靴を履いています。靴の横幅も広いです。なので妻の靴は3足並べられるのに、僕の靴だと2足+片足しか入らないのでスッキリ収納できないんです。だから靴の形とか1人当たりの靴のサイズ、とくに靴の横幅というのは玄関を計画する際に大事なポイントになります。
一般的に靴というのは男性が少なくて女性が多い、みたいなイメージも持たれていますが、現場を見ていると、そういうのは思い込みな気がします。実際、僕も靴好きなのでたくさんあります。
あと、小さなお子さんがいるご家族は将来のことも含めて考えていただければと思います。今は小さい靴を履いていても、数年後には成長して大きな靴を履くこともあり得ますので、将来のスパンも考えて靴の型と量の把握をしてください。
靴の型と量を把握したら、次は家族の行動パターンを確認します。家を出る時、鍵の置き場所が決まっていれば慌てなくて済みそうとかありますよね。
あとは僕の昔話になりますが、家を出る時に、母に「あんたハンカチ・ティッシュ持った?」とよく聞かれていました。なのでハンカチやティッシュも玄関に置けるといい場合もあるかもしれません。これは好みもあると思うので確認していただければと思います。
その次が来客についての確認です。「ウチは家族以外ほとんど出入りしない」とか「来るのはおじいちゃん・おばあちゃんぐらいかなぁ」とか、来客が多いお家なら、友達がよく来るのか、気を張る人なのかといったことがあります。僕が玄関を考えるときは、頻度も含めて聞いていきます。
最後が「靴以外のもので玄関に置きたいのは何?」という把握です。
お子さんがまだ小さければベビーカーとか、外遊び用のスコップなどがありますよね。最近であればアウトドア用品を置きたい方も多いと思います。僕はカー用品も置きたいです。車の洗剤とかですね。あと防水スプレーは玄関に置けると便利です。靴とかコートに使うと後々の手入れがラクになります。
それからペット用品。僕は黒柴を飼っていて、毎朝散歩させるのが日課になっています。そうすると、おやつとかリードとかウンチ袋を入れるような箱とかも置きたくなります。僕は犬を飼ってない時期に家を建てたので、こういったことを想定していなかったです。ペット用品はむき出しのまま置いておくと、スペースがゴチャゴチャする原因になりやすいので、将来ペットを飼う可能性がありそうであれば、事前に考えておくことをおすすめします。
また、冒頭で3つのシーンを聞くという話をしたとき、荷受けのことを言いました。宅配物が来たら、段ボールをその場でバラして捨てる日まで置きたい、というケースもあると思います。そうすると段ボールを切るためのハサミとか、テープ、紐が必要ですよね。
また最近は非常用の持ち出しグッズを置きたい、というのもあります。防災グッズは結構なスペースを取るので、設計側としては、どこに置くのかを事前に聞く必要があると考えています。
小さなトピックかもしれませんが、シューズボックスや玄関収納を考えるとき、詳細設計に入ったら、ぜひ立面で考えていただきたいと思います。
例えばシューズボックスだと、ブーツのように高さのあるものはどこに置いたらいいのか考えやすくなります。「冬しか使わないから上に置きたいけど、取り出しやすい高さがいい」ということに気付けるようになります。
僕は思うに、子どもの靴は下の方、奥様は中間ぐらいで、旦那さんは上の段としておくと使いやすいと思います。旦那さんの方が体格いい方が多いと思うのでね。奥様の背が高い時は、上の段を使う、というのもいいと思います。ペット用品とかは使う頻度が高いので下の段がいいですね。冠婚葬祭みたいな局面の時にだけ履くフォーマルな靴は、使う頻度が少ないので上の段でいいかもしれません。
そんな感じでざっくり置き場所を考えて「このスペースでいいかな?」という風に考えていただきたいです。今お伝えした話は個人の好みが入るので、プロの設計士と言えども、よほど詳しくヒアリングしてくれる方じゃないと分からないことが多いです。細やかな設計をされる方は大丈夫だと思いますが、皆様のほうでも、家づくりが始まったら家族で議論しておいていただけると話がスムーズに進むはずです。
玄関収納に関しては、置きたいものがいろいろあると思います。これも好みがありますよね。
非常用のグッズとか、電動自転車も置くのであれば充電タイプはどんなものか、車の掃除をするのにハンディタイプのクリーナーを置きたいとか、充電式ならコンセントが必要だとか、いろいろ出てくるはずです。なので玄関収納も立面にして何を置くか考えていただくと、使い勝手のいい収納が実現します。
予算ややスペースに余裕があれば、2Wayの玄関が理想的です。リビングに直接入ってくる所と家族用の玄関という形ですね。
例を描いてみました。最近はコロナの影響で手洗い場の位置も重要ですよね。帰宅してすぐに手を洗いたい、ということもあります。なので玄関に手洗い場を作るかどうか、作るなら位置をどうするか、とかですね。花粉症の人であれば花粉が付いたコートを持ち込みたくないから、2Wayだとコートは玄関の土間に置くみたいなこともできます。
玄関でよく聞く要望で「ベンチがほしい」ということがありました。これは非常に面白い解決方法があります。僕の師匠の松尾和也先生に教わったものです。
最近の玄関はバリアフリーのために、玄関土間から1階の床に上がるときの段差を20cm満たない位に抑えていることが多いです。でも20cmの段差に腰掛けるのって、僕みたいにお腹が出てる人だと腹がつかえるし、腰が痛い時はかがみ過ぎになるので不便なんですね。でも玄関スペースは限られているからmベンチを置く場所もないということもあるはずです。
その時にオススメなのが「斜め框」です。斜め框にして、端に三角のステップをつくるんです。そうすると通常は20cmぐらいの高低差で収めるものを、2ステップに変えて30〜 40cmぐらいの段差にするんですね。玄関の上がりとしてはすごく高くなりますが、三角のステップが入ることで、1ステップあたり20cmぐらいになるので、部屋にあがるのがラクになります。しかも框の高さがベンチとしても使いやすい高さになるので、腰痛持ちの人も、ロングブーツを履きたいお嬢さんや奥様も使いやすくなります。
片付けやすさとは直接関連のない話でしたが、玄関というのは人の出入りだけじゃなくて、靴を履く・脱ぐといった作業もする場所になります。そういう視点でも玄関を考えていただくと、片付けやすくて使いやすいスペースが実現しますので、ぜひ知っていただければと思います。
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