新築か?中古+リノベか?で迷ってる方へ
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今日のテーマは新築か、中古を買ってリノベーションかで迷っている方向けのテーマです。
この話をしようと思ったのは2つのきっかけがあります。
1つが久々のインフレです。今、物の値段がすごく上がってますよね。昨年はウッドショックもあって1軒の家の建物価格(作り手側からすると仕入れ原価)が爆上がりしました。僕達と家づくりを考えてる方との間で数百万くらいのギャップができてしまうくらいでした。
その現実をお客様に説明すると「そんなに高いんだったら新築は買えないです。リノベーションも検討しないと」とおっしゃられる方が増えたんですね。
モリシタでは新築を手掛けることが多いですが、リノベーションというのも住まいの選択としては現実的なものになってきたという思いがあります。
もう1つのきっかけが、有名なブロガーで、ちきりんさんという女性が書かれた本です。実際に自分のマンションをフルリノベーションされた時の経験を元にしたものです。「徹底的に考えてリノベをしたらみんなに伝えたくなった50のこと」という本で、とても素晴らしいです。
僕ごときがちきりんさんの本を語るのは申し訳ないんですが、リノベーションに対するスタンス整理に役に立てていただけたらと思います。
僕のスケッチを見てください。僕が理解するに、この本は大きく3つのことが書かれていると思います。
1番目がリノベーションをやるにあたって、事前に知っておいた方がいいであろう大切なことです。僕は個人的に、ここのセンテンスに一番グッと来ました。
2番目がリノベをやるということのリアルなプロセス。
物を買ったりするのと違って、家づくりというのは必ずプロセスがあります。検討から始まって実際の施工、完成してからのメンテナンスとかですね。
3番目が、ちきりんさんが、おそらく人生で初めてだったリノベを体験をした上で振り返って感じたことです。自分の両親との関わりとか、これからの暮らしといった大きなテーマに対して思いを馳せられています。
最初にリノベ前に知っておくといいことです。ここで言うリノベというのは、リノベーションという言葉を短縮させたものです。
リノベーションと似た言葉にリフォームという言葉があります。自分でリフォームする人をDIYと表現することがありますよね。DIYとリフォームとリノベーションの違いについては、プロも特に定義してないんですが、ちきりんさんが消費者の立場として考えたらリノベというのは「生活インフラを更新するかどうか」とおっしゃっています。
生活インフラというのは電気設備・排水給水設備・給湯設備です。
例えば築年数が50年経った家のインフラって古いです。ボロボロになっているという古さもあるし、機能的に今風じゃないというのがあります。こういったインフラの更新をやるのがリノベです。
さらに断熱性能・耐震性という住宅性能の向上も考えられます。一方でリフォームは、表面の壁紙を新しくしたり住設機器だけを変えたりすることです。
なのでインフラ更新・住宅性能の向上ということになったらリノベです。
「スケルトン」という言葉が出てきて構造とかにアプローチするような改修になったら、それはリノベということになります。
何もかも刷新されるイメージになりますが、リノベにもできないことがあります。その筆頭が水回りの移動です。特にマンションだとインフラを更新できても、場所は「ここで」と決まっていることが多いです。
それからリノベの特徴として、プロでも予測不能なことが多いです。
躯体の傷みというのは剥がしたり壊してみないとわからないことが多いです。それから近隣の気持ちも分かりにくいです。マンションなんかまさにそうですね。
マンションに暮らしている人は「あまり近所付き合いをしたくないからマンションは気楽でいい」と思っているところがありませんか?でもマンションでリノベをやるとなったら、近所付き合いがなかったり、理解あるいは同意がなかったらリノベそのものができないこともあります。こういったこともちきりんさんは喝破してます。
そういう前提に立ってリノベを成功させようとするなら、「この概念を消費者の人も業者さんも知ってないと私は絶対うまくいかないと気付きました」ということをおっしゃっています。
それが等価値交換と共同プロジェクトということの取り組み方の違いです。
一般的な商取引は等しい価値の交換をするから取引が成立しますよね。
例えば本にすごい値打ちがあって、お金に換算したら1,000円の価値があるとします。「じゃあこれを1,000円で買います」というのが等価値交換です。
多くの消費者の人は「取引ってそういうものだよね」と捉えていると思いますが、ちきりんさんは「リノベは違うよ」とおっしゃっています。
リノベは買い手と作り手の両方が共同で協力しあって新たな価値を作る、一緒に頑張ってできた価値を分けあう取引だという風におっしゃっています。
僕のような工務店のオヤジに言わせると、お客さんに「共同ですからね」と言うと、お客さんは「え?」という感じになってしまいます。事前の説明が上手くできていなければ、よりそうなりますよね。こういうケースが多いんです。
リノベも新築も、ものすごく大きなお金を払いますよね。なので「お前たちにたくさんのお金を預けるんだからちゃんとやってくれよ」「「変なことをしないようにしっかり見張っておくからな」といったことが起きやすいです。
ちきりんさんはリノベは医療と似てると表現しています。
例えばガンのような重篤な病気になったとき、お医者さんに「金を払うから俺をしっかり助けろよ」とは、あまりならないですよね。
お医者さんからも「あなたが治るためにはお酒を辞めてくださいね」とか「痛みがあるかもしれませんが、やらないといけないですよ」と言われますよね。
患者さん側からは「これは副作用を感じて辛いんです」みたいなことも出てきて、お互いが「何がいいのかな」という風に考えて伝えながら進めなければ医療って成立しないです。
患者さん側が「いやいや。500万円も払ってるんだから俺のガンを治せ」「酒もタバコも辞めへん」と言ったら体は治らないですよね。そういうこととリノベは、とても似ています。
だから、ちきりんさんは「何よりプロジェクトだという理解のコミュニケーションから始めなかったらリノベってうまくいかないんですよね」とおっしゃっています。
この話は業者さんから言いにくいと思うので「業者さんは私の本を買ってリノベをやるお客さんに読んでもらってください」と書かれてるぐらい、両者どちらもが気付いてないことが多いという風におっしゃっています。
その延長で業者さんを選ぶ時には、どうしても相見積もりって出てきますよね。
素朴な質問として「どれぐらいお金(もしくは時間)が掛かりますか?」と聞いてしまうけど、そんな質問は意味がないんだともおっしゃっています。
なぜかと言うと「お客さんが出したいと思う予算に合わせてするのがリノベ」なんですね。いろんなやり方がある中で「お客さんの好みの進め方好みに合わせるのがスケジュール」なので、それを業者さんに聞いたって答えようがないし、そういう性質のプロジェクトなんだよということを1章で言われています。
僕はこの本を読んでいて、我が意を得たりという感じでした。工務店のオヤジ的に「それを言ってもらえたらホンマにありがたいわ」と思います。僕の今回の説明ではわかりにくいところもあるはずなので、ぜひこの本を読んでください。(甘えてしまっていますが…)
続いてリノベのリアルプロセスの中で会社選びがありますよね。
リノベをやる会社には大体5つのパターンがあると書かれています。旧財閥系のような超大企業、不動産流通系、リフォーム会社・リノベ会社という専門会社に設計事務所、そして工務店です。それぞれのメリット・デメリットも語られています。
これを把握したうえでリノベ会社の選び方には「まずは個別相談に行く」というのが出てきます。そこから現地調査とか設備を決めとか、スケジュールを決めたりすることがリアルプロセスになります。先程の等価値交換と共同プロジェクトの話が理解できた後に聞いていただければと思います。今の話だけ聞いてもうまく進まないと思います。
またリノベの見積もりも結構複雑ですが、ざっくり言うと3つで構成されていると思います。①基本的な工事の部分 ②設備・内装 ③管理・税金ですね。
基本工事というのが先程出てきた「スケルトン」です。解体して骨組みを出して断熱強化したり、耐震強化したりですね。ここはあまりいじれないです。
設備・内装はいろいろあって、キッチンとかは金額に幅がありますよね。管理は僕たち業者にとっての利益とか手続きのとかになります。
本の3つ目のセンテンスに話を移します。
リノベを振り返ってみたときに、リノベをやることによって得られる価値はちきりんさん曰く3つあるそうです。
①が住んでる所が新しくなる。②が自分の好みに変えられる。例えば親から譲られたものだから好みじゃないけど使っているものがありますよね。これが変えられます。③が暮らしやすくなる、です。
暮らしやすさというのは機能性で言うと「水回りがすごく使い勝手が良くなった」とか「収納力が増えた」ということもあれば、「冬が暖かくなった」とか「夏がとても涼しくなった」「電気代が安くなった」ということです。
ちきりんさんは「リノベは新築をやるよりずっと難しい」と思われたそうです。
新築が欲しい人は多いけど、いま値段が爆上がりしていますよね。もし都市部で土地から家を求めると言ったら、すごい金額になります。
そこまで掛けられないけど豊かに暮らしたいと言うのであればリノベは最適です。
でも結構難しいということがわかったからこそ“共同プロジェクト事業だ”という感覚がないと乗り越えることはできないんじゃないかな」というのがちきりんさんのメッセージだと思います。
住み手側からすると、リノベは物との格闘でもあります。今住んでる家の物を棚卸ししないといけないです。でも棚卸ししたことで自分のセカンドステージがとても豊かになった・安心できたことは価値が大きい、ということもおっしゃっています。
ご自分の実家のリノベということで「親の家問題の解決になるよね」ということも出てきます。
今、大都市で暮らしているけど、地方に実家があって親が高齢だったり亡くなられて、どうしようかと悩んでる人は多いですよね。売ればいいというものでもないです。更地なら誰でも買ってくれると思いますが、古家付きは買い手が見つからないとことも起きてくるはずです。
なので親の家という問題に対して早期にアプローチするための手段として、リノベがあるということもおっしゃってます。
親の家をリノベを早いうちにしてあげたら、事故を起こしたり、不自由な体になったりすることを予防できますよね。親が亡くなってから物の整理するのは大変ですが、生きてるうちに親にとって一番価値のある物だけを残すと、暮らしのシェイプにつながります。
僕たちが子どもの頃は親に見守ってもらいました。今度は子どもが親を見守るようになります。親の姿はいつかの自分の道でもあります。リノベ体験というのは、そういったいろんな気づきを与えてくれるよ、というのが、ちきりんさんのまとめでした。
もし迷われているのであれば、この本を読んでいただいて、それを肴にご夫婦や親子で話し合っていただくと、住まいづくりの幅が広がるはずです。ぜひ読んでみてください。
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