床暖房は理想の暖房なのか?
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今日のテーマは床暖房です。
僕のスケッチを見てください。
日本人は床暖房が大好きです。可能なら付けたいという方が多いように思います。というのは「冬は床は冷たい」という刷り込みがあるからだと推測しています。
ハウスメーカーさんのモデルハウスとかに行くと“スリッパを履かずに素足で上がってください”というところがあります。その箇所は床暖房になっていて、お客さんが「あぁ暖かい。これって床暖房ですか?」とテンションが上がっている光景をよく見ます。
昔の家だと畳の間か板の間で、この板の間が冷たくて最悪だったんです。畳はまだマシという感じ。でも我慢できずに絨毯を敷くみたいな感じでした。
今は、ほとんどフローリングですよね。ということになってくると、昔は寒いから嫌だったものが標準的な表面材になってる以上、「やっぱり床暖房はマストなのかな」と思いがちです。
今日は床暖房を理想にするためのポイントを確認していこうと考えています。
まず最初に、快適な暖房には諸説あります。そのうちの1つに「気流感がなく比較的低温で暖める」というのがあります。
1つ目の気流感について言うと、風が体に当たるのはあまり気持ちよくないということです。
エアコンが嫌いな方いらっしゃいますよね。冬なら顔にガーッと暖かい空気が当たって乾燥するから嫌いと感じる方が多いです。なので気流感は無い方がいいんですね。
2つ目の比較的低温について言うと、顔に熱い風がかかったら火照りますよね。なので“暖房”という視点では相反するように思えますが、熱い空気より低めの方が快適なんです。ある程度、(比較的)低温の方がいいということになります。
「気流感がなく比較的低温で暖める」ということから、快適な暖房について考えると一番手が輻射式暖房になります。
熱の移動には3種類あって①が熱伝導になります。ちなみに壁は熱伝導しにくいものがいいです。寒い空気がが伝わりにくいので。
②が対流です。エアコンは対流ですよね。暖かい空気がグーッと回っていくので。
③が輻射です。赤外線ストーブとか石油ストーブみたいなものからは、そのものから輻射熱が出ると言われてます。輻射の伝導というのも暖房の中では快適です。
①の熱伝導で暖かくしようと思ったら、比較的高温にする必要があります。②の対流も部屋を暖かくしようと思ったら高温にする必要があります。一方で温度を上げすぎると、気分が悪くなったりします。
③の輻射は、いわゆる電磁波として体に直撃してきます。電磁波が体に当たって体液を揺さぶるので暖かく感じるわけなんですが、これが実は快適と言われています。
実は床暖房も輻射式暖房です。
輻射式の輻射熱は、まっすぐにしか進みません。アルミとか鏡みたいなもので反射することはできますが、対流みたいに回ってきたりはしないです。熱の伝わり方は常に一歩通行です。
一歩通行の熱というのは距離の二乗に比例して弱くなります。暖房器具が離れたところにあるばあい、対流なら熱が届きますが、輻射式暖房は届きにくいところが出てきます。
そういう意味で言うと、床暖房は快適な暖房ではあるけど、理想の暖房にするためには条件を揃える必要があります。今日はこれを知っておいてください。
理想の暖房にする条件は3つあります。
1番目が「高断熱」です。家が高断熱であるということ。加えて床暖房はパネルになっていて、パネル内にチューブがあったりヒーターが入っていて暖める仕組みになっています。なのでパネルの下側の断熱をしてないと、めちゃくちゃ損します。
というのが、パネルから出る熱というのは、人が一番熱を感じる上側には約半分(52〜53%)出ると言われてます。「じゃあ残りはどこに行くの?」と言うと下側、つまり床側に約2割ぐらい抜けてしまうんですね。さらに残りの熱は配管などに逃げていきます。(電気タイプのものはまた違いますが。)
温水タイプの床暖房に関しては配管のところで、なんと3割近くロスします。なので配管自体にも断熱をしっかりしておかないと、せっかくの熱を失うことになります。
こういうところが理想の暖房にするためには重要です。
2番目が低温です。
輻射式暖房は表面温度が熱くなり過ぎると不快になります。比較的低温だけど暖かいということが大事です。そのためには大きな面積が必要です。
床暖房が世の中に出てきた時に「リビングだけに設置する」というのが多かったです。でも、この方法だと理想からは遠くなります。パネルを敷いているところは確かに暖かいですが、他は寒いですからね。
一条工務店さんとかはすごいですよね。1階のほとんどの床を床暖房にされていたと思います。あれが理想の使い方です。ただしエネルギーはすごく必要になるので、太陽光発電とかで自分たちで電気をつくって使う形にして帳尻を合わせていく必要性も出てきます。
そういう意味では床暖房を理想の形にしようとするとイニシャルコストが高くなると思います。
電気式のヒーターではなくヒートポンプ型で循環型の床暖房にしないと結構電気を食うことになります。これも良し・悪しになります。床暖房の理想を実現するためには「高断熱・低温・大面積」を押さえないと機能しないということを覚えておいてほしいです。
なので床暖房のパネルの下側にはアルミ箔みたいなものがあるといいですね。アルミは反射しますので、下に抜けようとしたものを反射したら上(床側)に熱が行くじゃないですか。
ただ、アルミは反射しますが熱伝導もするので注意してください。その下に断熱材がしっかり入ってないとロスしてしまいます。
この前、北海道の技術者の人と話をする機会がありました。話を聞くと、その人は1階の床をものすごく断熱していたんですね。「こんなに厚くするんですか?」と聞いたら「これだけ厚くしたら床暖房なんかいらないよ」と言ってました。かなりしっかり断熱しているから表面温度がそんなに下がらないそうです。
「床暖房のコストを床断熱に使ったら、そんなの何分の1になりますよ」ともおっしゃっていました。
床暖房フリークの人には水を差すような話になってしまいましたが、床の断熱はそれぐらい重要だということを知っていただきたいと思います。パイプの断熱も同様です。
以前の別の動画で暖房についてお話ししたとき「採暖」という言葉を解説しました。
▼石油ストーブvsエアコン、どっちが暖かい?
https://www.m-athome.co.jp/movie/stove_aircon_atatakai
火鉢とかこたつのように部分的に暖を取るという方法です。一番原始的な暖房ですね。長い歴史を振り返ると、この採暖から、部屋全体を暖めるという暖房に進化していきます。
断熱・気密の大家に南先生という方がいらっしゃいます。その南先生は「進化した暖房よりさらに大事なことがある」とおっしゃっています。それが「除寒」になります。文字通り寒さを除くということです。使う暖房を進化させることより優先順位が高いことだともおっしゃっています。
例えば窓の下は、コールドドラフト現象といって冷えた空気が下に降りてきます。なので窓下に小さいパネルヒーターがあったら、寒さというのはすごい和らぐんですね。
家を暖かくするという視点からすると、窓というのは弱点になります。なので、そこの寒さを除くという対策になります。
もっと言うと窓自体を高性能化するのも大切です。シングルガラスよりダブルガラス、ダブルガラスよりトリプルガラスが良いですし、あるいは2重にすることで窓の開口部の性能を上げると寒さを除くことができます。
また冷えというのは下から来るので、床断熱をしっかりすると寒さは除かれて、より快適さが増します。
ここを突き詰めていくということが、最終的には暖房の進化系になります。
これもまた別の動画で「最強の暖房器具は窓」ということをお話ししたものがあります。これも除寒です。つまり、すごい効果がある暖房は除寒なんですね。
▼何度も失敗して辿り着いた最強の暖房器具
https://www.m-athome.co.jp/movie/saikyou_danboukigu
今回の内容を踏まえて床暖房の理想化を目指してもらうと、暖かくて快適な家づくりにつながりますので参考にしてみてください。
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