家の暖気の流れを考える
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今日のテーマは冬支度です。
寒くなると家の中で暖房を点けますよね。そのとき室内には暖気が広がっていきます。このことを解説していきます。
実はこの話は僕の師匠の松尾和也先生から「本当の意味で暖かい家をつくる」ことについて学んだときに教わった内容です。それを僕なりにまとめて、かいつまんで解説していきたいと思います。
ここで僕のスケッチを見てください。
まず家の例を1つ描きました。これは典型的に多い家の例です。
多くの人は予算の都合などがありますから、そのときの一番基本的な基準をもとに家を建てることがほとんどだと思います。
で、その特徴として部分間欠暖房というやり方を取られることが多いです。これはコスト意識が高いことが関係していると思われます。
部分間欠暖房というと難しい専門用語に聞こえますが、なんていうことはないです。LDKのところだけ暖房する、というようなものですね。
基本的に人が長い時間を過ごすのはLDKですから、そういう1つのエリアだけを集中的に暖房するのがいいと思うのは自然なことかと思います。
でも、この部分間欠暖房をした場合、どんなことが起きるかというのを知っておいてほしいんです。
専門的な話になりますが、平成28年度基準というのがあります。
UA値という建物の外皮性能で言うとUA値=0.87になります。これはスタンダードな基準で、家を建てる方には最低限守ってほしい内容です。ひと昔前なら次世代省エネと言ってたような基準ですね。
この性能の家に、一般的に多く使われている三種換気の形を取った場合、熱はスケッチのように移動します。
LDKを暖房しますよね。そうすると、この熱はもちろん窓からも出ていきます。
僕はよく「窓は家の弱点や」と言っていますが、大体大体10%ぐらいの熱が外に出ていきます。
今回の家は三種換気で24時間換気してるので、外から冷気が入ってきますよね。それによって10%ぐらい熱が失われます。
次が外壁。寒い外に面してる所からは約7%ぐらいの熱が抜けると言われています。
一方で暖房してない部屋には、結構多くの熱が抜けていきます。
どういうことかと言うと、LDKの天井に向かって熱は約31%抜けています。先程の7%とか10%と比較すると、結構抜けていますよね。
実は外で失う熱より、自分の家の中で失う熱の方が多いということがあります。
暖まった空気というのは、どんどん上に上がろうとしますよね。なので暖気は天井のほかにも、間仕切りや階段など通って2階に上がっていこうとします。
この階段経由では、さらに31%の熱が失われます。なので天井・階段・間仕切りなどで62%以上の熱が失われているんです。
つまりLDKだけを一生懸命暖房するというのは、暖房器具にとって負担が大きいし、光熱費がかかりやすい家になるということになります。
そういうことで言うと、このパターンでは最も悲しいことが起きているんですね。
それは何かというと、LDKを暖めた暖房エネルギーは外や暖房していない2階の部屋に上がっていくので、1階の脱衣場とかトイレといった場所には暖気が届かないんです。なので1階のトイレとか脱衣場は最悪な環境になります。
僕は以前に別の動画でヒートショックの危険性について解説をしました。ヒートショックというのは人の死に繋がることもあります。僕の父はヒートショックで亡くなっているのですが、まさにこういう状態でした。
親父たちが寝てる1階の寝室には、ある程度暖房が効いていたけれど、トイレには全然暖気が届いていなかったんですね。父はそれで倒れたわけです。
なので、もし家がこういう造りの場合は、LDK暖めたうえで、さらに脱衣場やトイレにセラミックヒーターのような瞬間的に暖かくなる器具を置いてほしいんです。命を守ることに繋がりますのでね。
部分間欠暖房には、こういったロスがあると知っておいてください。
で、ほとんどの家が部分間欠暖房だと思うので、僕から改良案をご紹介します。
すごく簡単なことで、リビングダイニングの上の方から、脱衣場・トイレに向けてダクトを通してほしいんです。
脱衣場とかトイレというのはリビング・ダイニングからそんな遠い距離にないことがほとんどです。
ただシンプルに繋いでおくだけで、1時間あたり約66W、ちょっとした暖房器具ぐらいの熱量がトイレに届きます。(もし換気扇を付けられるなら、ぜひそうしてください。)
こうすることによって、先程のヒートショックのような最悪なことは少し抑制できます。
この話を松尾先生から聞いた時、すぐに、とあるお客さんにご提案してみました。そうしたら、結構効果があったんですよね。このお家では換気扇も付けました。
その結果を知って「間欠暖房の時でも、この形を取ればいいんだな」と思いました。お客さんも「脱衣場が暖かくて良いわ」って喜んでくださいました。
改良案と言い切れるかは分かりませんが、もう1つ、ご紹介したいものがあります。
先程、天井に抜ける熱エネルギーが多いという話をしました。なので1階の天井裏(2階の床下)に繊維系のロックウールやグラスウールをグッと敷き込んでおくんです。これは2階の床の遮音も兼ねられます。音抜けや振動が伝わりにくくなりますからね。
こうすると熱の抜けは30%から9%ぐらいに抑えられるという試算が出ました。ただ、2階に熱エネルギーは届かないので、2階は暖房が必要になります。
特に、窓もなくて日が全然入らない部屋だと、暖房なしでは寒いです。2階には夫婦の寝室を作られているケースが多いですから、眠るときに「寒いなぁ」となるはずです。
部分間欠暖房というのは、多くの人が「合理的」とか「経済的で良さそう」と思って選択されています。でも暖気の流れを知ると、そうではないことが分かります。
で、僕は今回の動画を通して、「じゃあリビング・ダイニングの光熱費をケチろう」となるのではなく、もう少し長い目で家づくりのことを考えてほしいなと思います。
僕のおすすめはこんな感じです。
家の外皮の性能にHEAT20という基準があります。これは国の基準ではないのですが、建築家とか家に関する専門家の中で、「これから家の住環境を良くしていこう」という目標の中で生まれたものになります。
このHEAT20はG1とかG2というランクがあって、 最低でもG1、可能ならG2がいいよと掲げています。ですので、これから家を建てるみなさんには、ぜひともG2をクリアしたものをつくっていただきたいです。
今回、「部分間欠暖房」という言葉が出てきましたが、これの逆は「全館暖房」になります。家全体の断熱をきっちりやったうえで、家全体を暖めようというやり方です。
モリシタで床下エアコンを導入しているのは、これをうまくやるために、1つの方法として取り入れています。先程ダクト方式の話をしました。この方法でもいいと思います。
全館暖房をやる上でのポイントがあります。
暖かい空気というのは上へ上へと上がっていきますよね。ですので、床下を暖めるのが効率的です。
床下空間をがらんどうにして、暖かい空気が通りやすいようにします。この構造で、足元から暖めるような仕組みにすると、放っておいても家全体が暖かくなります。
暖めた空気が上へ上へと上がっていくので、床下を暖めた空気は、今度1階を暖めて、さらに2階を暖めてくれるという感じになります。
これは家全体の外皮の性能がちゃんとなっていることが前提です。そうすると魔法瓶の中みたいになって、小さい熱エネルギーでも充分に暖かくなります。また一番いいのは、室内の温度差が抑えられます。廊下や階段でヒートショックを起こす心配がないって良いですよね。
先程は脱衣場とかトイレで起こしやすいという話をしましたが、北側にある廊下などでもヒートショックが起こる可能性はゼロではありません。
暖気の流れは上へと上がっていくこと、それから今回はあまり触れませんでしたが、太陽の光を充分に取る。冬支度というのは、この2つに尽きると思います。
これから冬支度を考えられる方で、新築を検討されているのであれば、今回の動画を見た上で家づくりについて考えていただくと、暖かくて過ごせる、いい家ができるはずです。
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