間取りを考える前に知っておきたい、豊かな空間をつくるポイント
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今日のテーマは「間取りを考える前に知っておきたい、豊かな空間をつくるポイント」です。
みなさん、家づくりを具体的に考え出したら、いい間取りを作りたいですよね。住宅会社側もね、営業の方と設計の方が、いい間取りをつくるために頑張るはずです。
でも今回は、間取りを考える前に知っておいていただきたいことを解説したいと思います。これを意識すると、家づくりも、完成したあとの暮らしもグッと豊かになります。
深くて難しいテーマなので、僕ごときが喋るのは本当に申し訳ないというか、抵抗がありますが、とても重要な概念なので、頑張って解説したいと思います。
僕の動画で度々出てくる方で、飯塚豊先生という、すごい建築家がいらっしゃいます。僕は飯塚先生から、設計のことについて、いろいろ教わっています。
また、僕が若くて大学生だった頃に当時の教授とか助教授とかいろいろな先生から教わったことも交えながら話をして行きますね。
いきなり僕の反省になってしまいますが、これまでいろいろな方に家づくりのこと教わってきましたが、実務の中でしっかり意識できてるかと言ったら、なかなかできてなかった部分もあります。
例えば、その1つが、家づくりを考えるにあたって間取りを考えることから始めてしまう、ということです。
みなさん意外に思われるかもしれませんが、間取りから考え始めてはいけないんですね。僕も飯塚先生から教えていただいたとき、非常に驚きました。
家づくりしている身からすると、誰もがいい間取りを作りたいって思っています。
例えば、ハウスメーカーの営業さんって、いい間取りができるかどうかでお客様が契約してもらえるかどうかが決まります。それくらい重要ですし、お客様にとっても間取りを考えるのって、家づくりの中で一番楽しいことです。みんなが一番、力を入れる部分ですね。
でも、飯塚先生の考えは違うんですね。ここで僕のスケッチを見てください。
飯塚先生から教えていただいた設計手順というのは、こんな流れになっています。
まず最初に考えるのは屋根の形です。大きさも考えます。間取りではないんですね。
次が家の外でも内でもない領域、つまり中間領域です。
この2つが、ある程度思い浮かんだら次に考えるのは窓になります。
そしたら次は骨組みです。どういう風に柱を入れるか、どういう風に床の高さを決めるかといったことを整理して、最後に考えるのが間取りになります。
「こういった順番で考えないと、いいお家にはならないよ」と飯塚先生はおっしゃっています。
家づくりって、現実的な部分とも向き合わないといけないですよね。代表的なのが予算です。
予算のことがあるけど、いい間取りを提案したいというときに陥る罠の1つとして、家がどんどん大きくなる、というのがあります。
部屋を作って、収納もほしいからいっぱい増やして…となると、家自体が大きくなります。そうすると、極端な言い方ですが、手が届かない金額になっていたということがよくあるんですね。
最初に手の届かない、理想的なプランを作ってしまうと、あとは削っていく話し合いになっていくので、作り手も住み手も面白くないなとか、残念だなという気持ちになってしまいます。
で、飯塚先生の話に戻ると、「屋根を考えるということは、建物の大きさをまず決めようということなんだ」とおっしゃっているんですね。
また、中間領域というのは、家の外との関わりを考えることであるとおっしゃっています。
そのために窓の位置が重要になり、それを成り立たせるために基本的な骨組みの状況が重要になり、これらのことをある程度ちゃんと考えてから間取りを考えるのがプロの仕事だというのが飯塚先生の教えなんです。
今回の設計手順は、設計を極めようとする人、しかもその頂点にいるような人がおっしゃる内容です。見ている方の中には「これを家づくりの初心者が聞いてどうなるの?」と思われているかもしれません。でも僕は、あえて知っておいてほしいと思います。豊かな家づくりにつながる話なので。
例えば、僕らはよくお客様から「広いリビングがほしいです」と言われて、言われるがままに間取りを作ることもあります。
そうするとたいてい、キッチンあってダイニングテーブルがあって、ソファー置いて、ここにテレビ置いてみたいな形になるんですね。
でも飯塚先生は「そんながらんどうな空間作って面白い?」「お客さんは本当に喜んでくれるかな?」「お客さんは生き生きと幸せに楽しく暮らしてくれるかな?」と問いかけてくるわけです。
なかなか難しい話ですが、これも飯塚先生の教えで、お客様が楽しく暮らせる家をつくるために意識しなくてはいけないものがあるんですね。
それは「抜け」と「たまり」です。建物の空間の中には「抜け」と「溜まり」がないとダメなんです。これは僕が大学生の時にも、空間意匠や設計の先生たちがしきりに言っていたことでした。
また僕の絵を見てください。
2階建ての家があったとして、例えば吹き抜けというのは「抜け」にあたります。
「抜け」があると1階と2階の空間は限りなく1つの空間になっていきます。この空間があると、面白さが出たり、人とのつながりが感じられる要素になるんですね。
例えば1階部分が、間口が狭くて奥行きがあるような場合でも、部屋の一番奥に大きな開口があって、そこに光とか風が抜けていくという方向性が出せたら、狭苦しい空間にならないです。
2階の北側って、家の中で一番日が当たらない場所です。あとは建物が建て込んでる空間であっても、2階の一番高い所に窓がうまく切られていれば、奥行き感とか光の方向性とかが感じられます。かっこよく言うと多様性とか賑わいみたいなものが感じられる空間になるんですね。
ズボッとした箱のような総2階の家であっても、上下の抜けとか壁面の抜けが有効な位置に取られていると、豊かな空間が実現します。同じ面積でも、広く感じたり、人が落ち着ける場所に変わります。
もう1つ見ていただきたいものがあります。ざっくりした平面図を描きました。
ここの窓際にベンチを作ります。あるいはリビングと思われてる空間でも、床を30cmぐらい低くして、竪穴式住居で人が集ってた場所みたいなものを作るんですね。(ピットと呼ばれたりします。)
そうした場所があると、人が腰をかけたり、小さい子なら寝そべったり、人が談笑できる空間が生まれます。飯塚先生は、これを空間のたまりという風におっしゃいます。
家の広さとか収納の量とかも大切です。でも平面ではなく空間として間取りを考える時には、「これは抜けという視点からするとどうだろうか?」とか、「広ければいい」という考えから「広い空間が取れれば取れるほど、ここに“たまり”ができるな」という風に考えることも大切なんですね。
今お話ししたようなことがイメージできると、つくる家がとても豊かなものになりますので、良かったら参考にしてみてください。
今回、飯塚先生の話をたくさんしましたので、飯塚先生が設計された例も出したいと思います。(すごい設計なので、僕ごときが解説するのは…とも思いますが聞いていただければと思います)
例えばこの写真。(動画: 分 秒あたり)
広い階段がリビングダイニングにあります。この階段では人が座ったり、佇むことができます。
写真では見えないですが、この階段の向こうには光が注いでいて、抜けを感じるような空間があるんですね。
また別の写真(動画: 分 秒あたり)を出すと、窓が上のほうにあったり、正面にあるものは大きく切られています。これが「抜け」ですね。
それからこの家は吹き抜けの中に、入れ子構造と言って、建物の大きな空間の中に囲われた空間が作られています。
これがまたすごく楽しげなものなんですよね。上にいくと天体望遠鏡が置かれていて“たまり”がありますし、そこから見下ろす形でダイニングやリビングが見えます。また、リビングや、中間領域であるリビングから外のデッキという所にも“たまり”があります。
1つのLDKの空間に“たまり”が何ヵ所もあるうえに、抜けもあるんですね。
こんな家ができると、間取り図以上に空間が立体的に感じられるはずです。
今回のテーマは、かなり上級的な話だと思いますが、せっかく家づくりを考えられているなら、ぜひ知っていただきたい内容になります。
「これから先、ここで一生暮らしたい」と思う家ができると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
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