昭和34年(1959年)に上陸した“伊勢湾台風”ってご存知ですか?
記録によると、犠牲者5,098人・負傷者38,921人の最悪の被害をもたらしました。ほぼ全国に及んだ経済的被害は莫大なものとなり、比被害額は阪神・淡路大震災の数倍、関東大震災、東日本大震災規模に達するものであったということなので、いかに凄まじい自然災害であったかが分かります。(母によると、播磨地方でも、学校の屋根が吹き飛ぶほどの影響があったそうです。)
この台風被害を機会に、災害対策基本法が制定され、建築物の基準を示す建築基準法の強化にも大きな影響を与えました。
実は、家の強さを計る尺度には、「地震」に対する建物の強度を計るもの以外に、「台風」に対する建物の強度を示す「耐風等級」いう尺度があります。 「耐風等級」には、伊勢湾台風を受けて強化された建築基準法のレベルを満たす「耐風等級1」と、その強度の1.2倍の強さ(余力)がある「耐震等級2」の2つのランクがあります。
「耐風等級1」とは、「極めて稀に発生する暴風による力に、構造躯体が倒壊、崩壊等せず、かつ稀に発生する暴風による力に構造躯体が損傷しないこと」と基準が示してあります。
さらに言葉の意味を説明すると、「稀に発生する暴風」とは「50年に一度発生する暴風」を示し、「極めて稀に発生する暴風」とは「500年に一度発生する暴風」とされています。 500年とか50年とか、一口で言っても抽象的なので、構造の専門家たちは具体的には、「稀に発生する暴風」を「1991年19号台風の長崎気象台記録」を数値として採用し、「極めて稀に発生する暴風」は、冒頭に示した「1959年伊勢湾台風の名古屋気象台記録」としています。
ここで、それらを一番わかりやすい風速で示してみます。 ・伊勢湾台風 最大風速45.4m/s(10分間平均)瞬間最大風速55.3m/s ・19号台風 最大風速25.6m/s(10分間平均)瞬間最大風速54.3m/s 程になります。 一方、記憶に新しい2018年大阪方面に上陸した台風21号はというと、最大風速45m/s(10分間平均)瞬間最大風速58.1m/s。今年千葉県に大被害をもたらした台風15号は、最大風速40m/s(10分間平均)瞬間最大風速57.5m/sだったと言うのです。
びっくりしませんか? 近年上陸した台風は、極めて稀な(500年に1回)暴風と、そんなに遜色ない強度になっているのです!
伊勢湾台風に学んだ建築基準法レベル「耐震等級1」ではありますが、極めて稀に発生する暴風に対しては「倒壊、崩壊しないこと」という目標なので、「損傷する可能性はある」と読むことができます。
地球温暖化の影響で巨大台風の発生頻度が高まっている現代は、“極めて稀が頻繁に出現する時代”と言える思います。これから家づくりを考えるなら、地震に備える「耐震等級3」はもちろん、巨大台風に備える「耐風等級2」のクリアについても、台風が落ち着く11月だからこそ、頭においておいてください。