「空き家で困っている。」そういう話をよく聞くようになりました。
2018年住宅・土地統計調査によれは、空き家数は全国で846万戸。総住宅数の13.6%にのぼり、2033年には約25%になり4戸に1戸が空き家になるとの予想。
実際、私たち庶民が住む下町エリアでも空き家は年々増えていますし、住んでいる人が多くが75歳以上のお年寄りたちで、さらに加速するだろうと感じます。
一方、超お金持ちが住んでいる山手エリアでも、大きな家がどんどん空き家になっていて、気が付いたら、解体され何区画かの宅地に割って分譲されているケースもよく見ます。庶民であってもお金持ちであっても、この状況はどうしようもないということでしょうか。
大きな家を手放したお金持ちが、口々におっしゃっていることは「大きな家は、維持することがしんどい」ということ。その理由は大きくわけると2つ。
一つは、当たり前ですが面積が大きいので、日々の掃除や片付けなどの家事の負担が大きいということ。もう一つは、子供や孫が巣立っていって老夫婦2人になると、もったいない気持ちが湧いて、冷房や暖房を最小限にして我慢することが多くなる。その結果体調を崩しやすく医療費も増えて悪循環になるという“切ない経済問題”も起きるということです。
この状況を眺めていて、今一番思うのは「大きな家ってよし悪し」ということ。
それでも、家づくりの現場にいると「せっかく家を建てるなら広いリビングがほしい!」とか「こども部屋は大きくとって、ゆったりした空間で遊ばせてあげたい」といった、家を大きくする希望をよく聞きます。
かういう私も、大きな家を建てました。父が早く亡くなったので、母がさみしくないように同居したこともありますし、3兄弟の長男であったことからも、一族の皆が集まっても“気を使わない広さ”がほしいと考えて、けっこうがんばった感じです。
さて現在、子供たちも大きくなり、めっきり集まることは減りました。我が娘たちも大学に進学し家にはいなくなりました。母も後期高齢者になり、そう遠くない将来、夫婦2人の生活になると思います。
日々、1階は母で2階は女房が掃除機をかけている姿をみて、そのうちこの広さを持て余すことになるな~と感じることが増えたりして、「一族の集まりも、見栄をはらず宴会場でも借りてやってもよかったかな~」と今更思ったりもしています。
ずいぶん夢のない話を書いてきましたが、私がこの歳になって感じることは、「家は小さいほうが合理的じゃないか?」ということです。
家が小さいと建築コストも安く済みます。家事が楽にできる間取りで、エアコン1台で家の隅々まで快適にできる性能にはコストを惜しまず、賢く建てた家は、本当の意味で長く安心して暮らせます。
また、山手の話で書いたとおり、大きな家はそのまま売買することは難しいです。その点、高性能で小さな家は、転売しやすいと思うので、これからの空き家対策の有効打になるように思います。
「家は子育て以降のほうが長く住むことになる。」家族の事情で、永久に住むことはできないという現実もあると、少し頭にいれて家づくりを考えることで、もっとあなたの家づくりはよくなると確信する今日この頃です。