10月というと気候もよくなり、さまざまな秋の収穫が増え、正に“自然の恵み”あふれる頃。新米に色々な果実や香り高いキノコ、ピカピカ光る魚を見ると、日本人に生まれてよかったな~としみじみうれしさがこぼれたりします。
ただ、今年の日本は違います。“自然の恵み”より“自然の猛威”が際立ちます。 まず1月にマイナス5℃を記録。ご当地姫路は瀬戸内海式気候で温暖なところなので、庭のバケツの水があんなに分厚く凍ったのを、姫路で初めて見ました。
なのに、梅雨明け後は、全国的に気温が40℃に近づいたり超えたりして、熱中症で体力の弱った人が多数病院に担ぎ込まれたり、空調機が故障し入院中のお年寄りが亡くなったりする事件も起こりました。 また梅雨には、広島県全域と隣の岡山県真備町での大規模な河川の氾濫。2階の大屋根まで登らないと水から逃げられないなんて、遠い異国にしか起きないと感じるレベルの被害になりました。
同様に姫路市近郊の山間の町も、濁流にのみ込まれたところが多数出ました。 そして8月、昭和36年の第2室戸台風以来の風速50メートルを超える超強力台風が近畿に上陸。風力発電機がなぎ倒され、何百台も車が風に舞い、水につかり炎上したケースも。究極は、大きな船が風に流されて連絡橋を破壊。関西国際空港が封鎖の憂き目に遭いました。
さらに、大きな地震の発生率が0に近いと診断されていた北海道でも、震度7を記録する揺れが襲い、山の半分が無くなるような巨大地滑りが多くの人を飲み込みました。一方平野部では昔湿地帯だった宅地を中心に、大規模な液状化現象で多くの家が壊れ道路が寸断されました。
昭和37年生まれ56歳の親父である私が初めて経験するレベルの“自然の猛威”。これらの傷痕は今だ癒えず、まさに50年に一度の厄災や、想定外な結果を目の当たりにした機会となりました。 改めて感じますが、家を建てるなら、「どこに建てるべきか?」は超重要です。
山や崖、大小問わず河川や水路の存在、その宅地の昔の地形や歴史の確認。我々プロはそのリスクを警鐘し、時には計画そのものを止める勇気も責任だと知りました。 そしてその上で、地震や台風、気候変動による豪雨や、冬の寒さや夏の暑さに対する“備え”を盛り込んだ家を、「どのように建てるのか?」を命題に、これからもしっかり取り組んでゆきます。