先回母の日にちなんで、お母さんへ捧げる本を選んだので、父の日を迎える今月は、お父さんに捧げる本を探しましたところ「僕が見たお父さんのはじめてのなみだ」という素敵な絵本に巡り会いました。
その内容は、「お父さんのなみだを今まで一度も見たことがない」そのことに気づいた主人公のゆうき君が「お父さんはなんでなかないの?」と質問をして、初めて明かされる、怖かったお祖父さんとの思い出、そしてお祖父さんに教わった、人として、男としての「大事なこと」を教わる、胸が熱くなる親子三代のファミリーヒストリーで、ぜひ子供さんと読まれることをお勧めします。
実は、私にも「初めて父の涙を見た思い出」があります。
我が家は曽祖父・祖父と代々大工の家柄で、私の父も大工でした。何せ、昭和の時代の職人ですから、とても厳しくて怖い父でありました。30代になった頃、父は職人から工務店を経営する立場に変わり、仕事の責任も大きくなり益々気難しく、時には暴君のような言葉を家族に投げる夜もありました。
今の姿からは想像できないかもしれませんが、子供のころの私は病弱でした。持病の喘息の発作を年数回起こしていて、中学に入学した頃でもまだ体調を崩す日がありました。「日頃の節制がなってない」「気持ちが負けている」今から思えば、父なりの叱咤激励だったのですが、そんな言葉に傷つくこともありました。
それがある日、「そんな発作を起こすのは気がたるんでいるからや」酔った弾みだったのでしょうか、父から出た言葉に、どうしようもなく腹がたって「俺だって好きで身体が弱いわけじゃない!」、生まれて初めて父と大喧嘩をしてしまいました。余りの私の剣幕に「ケンカはやめて~」と母や弟までが泣きながら私を止める事態に、家の中は騒然となってしまいました。しかし、なぜか父は一言も言わず、静かに私を見つめていました。
「親父に殴られてもいい。」言うだけ言って、絶対君主の父に逆らった私は、自分の部屋に逃げ込み、気持ちの高ぶりを止められず弟といっしょに泣いていました。何時間たったでしょうか、深夜私の部屋に父がやって来ました。身構える私に父は静かに言いました。「今日は、すまんかった。」その目には涙があふれていました。強い父がはじめて泣いている姿を見て、とてもビックリしてしまいましたが、きちんと謝ってくれたことがうれしくて、その夜は父と長い時間色々な話をしました。
その事件があってから、父は私を一人の男として、敬意をもって接してくれるようになりました。父と本気で言い合えたことで、その関係がガラッと変わったことは、父を亡くして27年以上たった今も、とても大切な思い出なのです。
さてせっかくの父の日。お父さんに感謝の気持ちを伝えるのはもちろんですが、お父さんと御祖父さんとの思い出を聞かれてみてはいかがでしょうか?私も父親の一人ですが、子供たちとそんなひと時を持つつもりです。亡き父を偲びながら。