突然ですが、「買ってよかった」としみじみ思う買い物は何でしたか?
人間は生きている限り、いろいろなものを消費します。食べ物や飲み物、日常用品といったように来る日も来る日も繰り返す小さな消費もあれば、特別な記念日に買うプレゼントや10年に1回やってくる車の買い替えのような大きな消費もあります。
ずいぶん若い頃は、物欲がけっこうあって、「いい時計」「いい靴」「いいスーツ」なんて、貯金をはたいて手に入れた時の喜びは、自分にご褒美という面もあるので。こころの隅に残っています。ただですね、しみじみ思うかと言われるとちょっと違うような気がします。
紺屋の白袴と言う言葉がありますが、ご多分に漏れず工務店の親父である私は、建ててしまった家自分の家にはあまり頓着しない方でした。もちろん小さな修理はお手のものだし、整理整頓・掃除もきらいじゃないので何にもしないわけじゃないですが、それ以外に家に手を入れることは、あまりやって来ませんでした。それが、3年前にはじめて大きなリフォームをしました。何をやったかというと、いわゆる「断熱リフォーム」。シングルガラスだった窓の内側に樹脂製のインナーサッシをつけ、窓の断熱性を上げたのです。
当初一緒に住んでいる母は、「私は外に出るのに2回も窓を開けるのイヤだよ~」とか、「もったいないから私が死んでからやって」などと抵抗感を出していました。女房は「よくわからんけど、パパがやりたいならどうぞ」そんな感じでした。夏場に工事を終えたのですが、直後は2人とも特段の感想はありませんでした。
ところが、工事後はじめて冬にさしかかったある日、外に出ようとした母が声を上げます。「1重目の窓を開けたら、2重目の外の古い窓開けてないのにシビレるくらい寒い!」「20年近くこんな窓のそばで暮らしてこれたことにビックリするわ~、こんなに暖かいならもっと早くしてもらったらよかった~」それからも、「強い風の音や、裏の小学校の子供たちの歓声が気にならなくなった。」「暖房がよく効くし、電気代も少なくなった」となかなか好評でありました。
2月の朝はとても寒いです。洗濯など水仕事も苦痛が伴います。ところが今は、時には鼻歌を歌いながら朝一番の食事の用意をしている女房や、厳しい顔をせずに洗濯をしてくれている母の姿をみることが多くなっています。もちろん家にかけるコストは小さくはないですが、機嫌のいい家族の顔をみるたびに「しみじみ買ってよかった」と思う幸せ感じています。やっぱり窓は大事ですね。