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「空き家問題」を考えると見えてくること

今日は社会問題である「空き家問題」についてです。家の周りに空き家が増えていませんか? 私は兵庫県姫路市に住んでいますが、周りにはお年寄りが多く、最近、ぽつぽつと空き家が増えてきました。今日は空き家問題について考え、それによって見えてくることを解説していきます。

このグラフは野村総合研究所が出典のデータです。2008年(15~16年前)には約8.3%だった空き家率が、2023年には約10.7%に増えているそうです。総数は170万~270万戸で、条件によってはさらに多くなる可能性があります。今後さらに加速し、2043年には空き家率が25.3%に達するとの試算もあります。現在建っている家の4軒に1軒が空き家になると予想されているのです。

では、空き家の何が問題なのでしょうか。主に5つの視点でリスクを伴います。
1つ目は安全上の問題です。地方の過疎地域のような場所では家が老朽化しており、最近では都市部でも同様の問題が見られます。屋根が崩落したり、壁が落ちたりしている家もあります。さらに怖いのは火事です。空き家が放置されると誰でも入れる状態になるため、不審者が火遊びをして周囲に迷惑をかけるケースもあります。

2つ目は防犯上の問題です。空き家に誰かが勝手に入り込み、そこで事件が起きたり、いじめの温床になったりすることがあります。また、浮浪者や不審者が住み着くケース、さらには一部で大麻を栽培していた例もあります。最近流行したドラマ「地面師たち」のように、詐欺に空き家が利用されることもあります。

3つ目は衛生上の問題です。ゴミ屋敷のような空き家が近所にある場合、異臭がしたり、虫やネズミなどの害虫が大量発生したりします。また、こうした空き家があると景観が損なわれ、地域の治安や風紀の悪化につながります。

4つ目はスラム化です。私が大学生だった頃、広島の元町にある高層住宅でこうした現象を目にしました。当時も古い集合住宅でしたが、住民が高齢化し、住む人がいなくなり、スラム化が進んでいました。特に1~2階部分が無人化すると、その地域の価値が低下するという問題が生じます。

5つ目は近隣トラブルの増加です。例えば、住んでいた方が亡くなったり施設に入ったりして庭の手入れがされず、鳥が住み着いて騒音を出すケースもあります。こうした場合、どこに相談すればいいか分からず、トラブルに発展することがあります。

古い家を売る際、最も多いのは隣近所の人に「地続きだからいかがですか?」と声をかけて買ってもらうケースです。しかし、何年も放置されて迷惑をかけられていたら、買いたいと思う人は少ないでしょう。売買に関しても空き家にはリスクが伴います。

また、空き家に関する問題は金銭的な負担にもつながります。空き家を所有していると、その負担は子孫にまで及びます。私も長男で跡取り息子でしたが、長男や長女は責任感から苦しむこともあります。愛着のある家を残そうとすると、外壁や屋根、窓ガラスなどの修繕費や、雑草の片付け費用がかかります。業者に依頼する場合、その費用はさらに膨らみます。

解体して更地にするにも費用がかかります。木造の家であれば少なくとも4~5万円/坪、30坪程度の家でも140~150万円ほどの解体費用がかかります。鉄筋コンクリート造の家の場合はさらに高額になります。

さらに、アスベスト問題もあります。かつては建材にアスベストを使用することが許可されていましたが、アスベストを含む家を解体する場合、特別な解体手順を踏む必要があり、費用が倍増することもあります。都市部の狭い土地ではさらに費用がかさむ可能性があります。築30~40年の家にはアスベストが含まれているケースも多く、空き家の解体には慎重な対応が求められます。

また、解体後には固定資産税の問題もあります。現在、家を建てた場合には固定資産税や都市計画税が特例措置で軽減されています。小規模の土地では1/6程度、一般的な宅地(200平米超)でも1/3程度に軽減されていますが、更地になるとその優遇措置がなくなり、固定資産税が高額になるケースがあります。

国も空き家問題に対して、法律の縛りを強化しています。その一例が、2024年4月から施行される相続登記の義務化です。たとえば、おじいちゃんが亡くなった後に、その家の名義がおじいちゃんのままだとします。この場合、家が老朽化して危険な状態になったときに、連絡先が故人のままで誰にも繋がらないという問題が発生します。こうした事態を防ぐため、誰がその不動産を引き継いだのかを明確にする相続登記が義務化され、未対応の場合にはペナルティが科されることになりました。相続登記を怠ると、後で大変な問題になる可能性があります。

また、別途「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律も以前から存在しています。この法律では、危険な空き家を「特定空家」とラベリングする仕組みが設けられています。空き家には「一生」があります。最初は人が住まなくなったことで空き家となり、時間とともに老朽化し、最終的にはボロボロの空き家になります。この「ボロボロの空き家」が「特定空家」に該当します。

行政は特定空家に対して、まず所有者に「指導」を行います。所有者が「お金がない」「時間がない」と対応しない場合、次に「勧告」を行います。それでも改善が見られなければ「命令」が下され、従わない場合には罰金が科されます。さらに最終手段として、行政が「行政代執行」を行い、所有者に代わって空き家を解体・撤去する措置が取られます。この場合、行政が負担した解体費用は、所有者や責任者に請求されます。支払いが滞る場合は、給与の差し押さえに至ることもある、非常に強力な法律です。

しかし、この措置でも不十分とされるため、昨年12月には「特定空家」にまでは該当しないが、管理が不十分な老朽化した空き家を「管理不全空家」と新たにカテゴライズする仕組みが導入されました。この「管理不全空家」に対しても、特定空家と同様に行政が「指導」を行い、従わない場合には「勧告」を行うことが可能です。さらに、勧告を受けた場合、従来優遇されていた固定資産税の減免措置が撤廃されるため、所有者にとって大きな負担となります。

これからは、たとえ自分の所有物ではなくても、自分に責任が降りかかる可能性を考え、相続やその後の管理について真剣に検討する必要があります。遺産分割はお金であれば話し合いで分けられるかもしれませんが、空き家は残されることで押し付け合いになるケースが少なくありません。このような問題を踏まえると、空き家問題は所有者とその子孫の双方がしっかりと向き合うべき課題であるといえるでしょう。

問題提起として「空き家の出口戦略」について考えてみたいと思います。空き家の対応策は、大きく3つに分類できると考えています。1つ目は「売却」です。空き家を売却する、つまり誰かに買っていただく、または譲るという方法です。2つ目は「活用」です。たとえば、解体して駐車場として貸し出す方法や、ある程度リノベーションを施して賃貸に出すといった活用があります。3つ目は「自己使用」です。たとえば、お孫さんがその家に住む、あるいは1~2年後に定年を迎えてふるさとに戻り、その家に住むという選択肢です。

これらの選択肢のうち、「売却」と「活用」に関しては、従来は主に不動産業者が相談相手や専門家として対応してきました。しかし、「活用」や「自己使用」に関しては、私たち工務店も積極的にサポートする必要があるのではないかと思っています。

工務店として、家の目利きや建築的な知識を活かし、「この家は手を入れて使える」という適切な助言やアイデアを提供できることがたくさんあるはずです。そのため、空き家問題でお困りの際は、親しい工務店に相談してみてください。空き家問題は、街の工務店がこれから担っていくべき責任の一端であると個人的には考えています。

私も62歳になり、大学を卒業して以来、長年家づくりに携わってきました。生まれ育った街に恩返しと言っても、大きなことはできないかもしれませんが、少しでもお役に立てるのであれば、工務店の親父としてこれからも取り組んでいきたいと思っています。もし姫路近辺で同じようなことを考えている方がいらっしゃれば、ぜひご相談ください。これまで家を建てることばかり一途に取り組んできましたが、使われなくなった家を生かしていくこともまた、大事な使命だと感じています。ぜひ参考にしていただければ幸いです。

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