メニュー

Movie

トップページ / 動画 / 家づくりについてもっと知りたい方 / 湿度コントロールで快適にすごす(夏期編)

湿度コントロールで快適にすごす(夏期編)

今回は、夏に湿度コントロールに快適に過ごす方法について解説します。

最近、主に新築を建てた方と話をすることがありました。その中で、高性能住宅と言われるお家に住んでいる方で「高性能の家で涼しくてよかった」と言う人がいる一方で、「ちょっと…」みたいな感じの方もいるんです。

詳しく聞くと「高性能でUA値(外皮性能の数値)が小さい家に住んでいるのに、夏は意外と暮らしにくい」とおっしゃるんです。これは意外で、一体なぜなのかと思いますよね。

ここで1つ思うのが、人間は状況に応じて意識が集中するものが変わるということです。例えばお腹がすごく痛い時は、お腹ばっかり気になりますが、それが引くと、今度はちょっとだけ痛かった右膝が気になり出します。さらにそれが引くと、なんでもなく痒かったぐらいのところが気になり出します。

家も同じで、高性能住宅だから、これまで住んでいた家から比べたらすごくよくなったんですけど、よくなったらなったなりに「もう少しこうだったらいいのに」ということがあるのかな、とも思います。ではその、その人たちが暮らしにくいと言ってるのは何なのでしょうか。話を聞いてみると、「高性能住宅だからすごくエアコンが効いて、すごく温度が下がるけど、寒いけど湿気てるんです」みたいなことをおっしゃいます。

その最大の理由は、家の性能というよりも空調機、いわゆるエアコンです。最近のエアコンはものすごく賢くて、超高性能で、省エネ性も高くていいんです。設定温度に達したらピタッとエアコンの稼働を止めて、電気代を余分に使わないようにします。しかしここで、温度は十分下がっているけど、それって本当にいい状態なの?ということが、今回の題目です。つまり、湿気がうまく取れていない問題です。

今は気候変動の影響で、驚くぐらい湿気が増えています。数値を見ても思うけど、感覚値でも3〜5年前とは違います。それぐらい湿気が増えている中で、今日は、そもそも湿度というわかりにくいものを、どう見極めていけばいいのかという基本的な知識と、実際に湿度をどうやって下げるのか、代表的な対策と着眼点を解説していきます。

湿度を見極めることに関して、私たちが論理的に勉強したものの1つが、湿り空気線図です。別名、空気線図・温度線図とも言います。湿気の尺度の中には「湿度何%」という言葉があります。あれは丁寧に言うと、相対湿度と言われるもので、相対湿度があれば絶対湿度というものもあります。これをある程度解き明かしたものが湿り空気線図です。

図のようなグラフで、横軸は気温、専門的に言うと乾球温度です。昔の温度計は、エーテルの赤い液が上がるタイプの温度計が2つ並んでいました。温度計の下のエーテルが溜まった丸い所に何もついてない方で乾球温度、水を浸したガーゼで覆われている方で湿球温度を測定しました。

この乾球温度は、専門的な言い方で「顕熱」と言います。これに対して縦軸は「潜熱」と言われ、水分量を表しています。ここが絶対湿度の世界になるんです。

どういうことか解説します。例えば水は、0℃の水と0℃の氷がありますよね。これらは同じ温度ですが、水と氷ではどっちが冷たく感じるか、熱を奪われていくかというと、氷の方が潜んでいて、この場合は冷熱が多いと言います。一方100℃でも、100℃の水蒸気と100℃の水があります。このように、状態が変わるというものの中には熱が潜まれる、という意味合いで「潜熱」と言います。そして、顕熱と潜熱の合計は全熱と言って、こういうものを使いながら空気に水分が含まれる量を表します。

空気には水蒸気が含まれていますが、「飽和水蒸気量」といって、空気に水蒸気を含める限界があります。飽和水蒸気量は温度によって変わり、温度が低いと少ないけど、温度が高いと大きくなります。夏は温度が高いから、空気に水分を溜められる量が多くなり、ジメジメするんです。

次に「湿度何%」を考えます。飽和水蒸気量を考えると、100%の時の絶対的なボリュームが、温度が低い時は小さく、高い時は大きくなります。これが相対湿度の難しさです。だから湿り空気線図では、相対湿度ラインが作られています。10%のライン、20%の時、30%の時…という感じで線が引かれています。

例えば温度計におまけでついている湿度は、相対湿度が出ていることがほとんどです。そういうことからいうと「何%だから湿気てない・湿気てる」という考え方は、あやふやなものなんです。これから家の改善を考えていく・家の住環境を評価する際には、ここを知っておいてほしいです。

さて、改めて湿り空気線図を見てください。人間が生きていく上で快適な温度帯は、18℃から28℃の間と言われています。さらにその中で、40%から70%の間が快適なゾーンだと言われています。でも28℃で70%というと、実際は多くの人があまり気持ちいいとは思ってないと思います。相対湿度で考えると、頭がこんがらがるところがあります。

もっと言うと、多分うちの嫁さんは、18℃だったら「寒い」と言うと思います。だから、理想的には20℃以上ぐらいが、本当の意味の「快適」だと思います。そうなると、快適ゾーンのエリアはもっと狭くなります。

こういう概念の中で、実感値として「ここまで来たら湿気てる・乾いてる」というラインはどこかというと、相対湿度ではなく絶対湿度で考えます。夏だったら、1kgの空気の中に13g以上の水分が含まれていると、除湿を頑張った方がいいラインだと言われています。つまり、絶対湿度13%を下回っていれば快適、13%を超えると不快ということです。絶対湿度が確認できるものとしては、みはりん坊という商品があります。そんなに高いものじゃないので、ぜひ持ってもらうと、除湿を積極的にやるべきラインがわかります。

一方冬場は、絶対湿度で7gが基準です。難しい話をしましたが、つまるところ「絶対湿度で、上は13g・下は7gが、湿度の見極めの基準」ということだけ覚えてください。

この尺度を学んでいただいた上で、対策を考えていきます。ただここで思うのが、対策よりも暮らし方の話として、最近室内干しの人が多いことです。夏に室内干しをすると、例えば4人家族で、1人あたり1.5キロの洗濯物を乾かすとすると、その約60%は水分があるので、1日3.6Lぐらいの湿気が部屋内に供給されることになるんです。

ここで、除湿の方法はエアコンを使うことが多いと思いますが、エアコンはすごく頑張っても、1時間あたり1Lぐらいの除湿能力です。3.6Lの湿気が増えるとなると、エアコンを回しても湿気が取れないのは当たり前ですよね。だから夏場に部屋干しするのなら、人間が暮らす部屋とは分離するとか、外干しする工夫などを考えてもらわないといけません。これが、湿度を下げるための前提です。

その上で湿度を下げる方法を、機械的な側面で3つご紹介します。まず1つ目は、換気の見直しです。今は24時間換気が法律で義務付けられていますから、一般的に多いのは3種換気です。居室にダイレクトに給気をして、水回りのトイレ・洗面所や、廊下などから排気をする方法です。これを1種換気にすると、熱交換・湿気の交換をしてくれるので、外気からの湿気の総流入量を減らせます。

例えば30坪の大きさの家なら、だいたい1時間あたり150㎥の空気が給気されていると言われています。夏場の水分量は9.4g/㎥なので、9.4×150で1420g/hです。1種換気なら、これを50%で交換してくれるので、710gがそもそも室内に入ってこなくなります。だから、ものすごくUA値の低い高性能の家なら、この1種換気をつけた方が、より夏は過ごしやすいと思います。

2つ目が、エアコンに代わる除湿能力のあるもの、例えば除湿器を使う方法です。ここで予算が許すなら、ダイキンさんが出している、カライエがおすすめです。あれは「相対湿度を何%に下げるまで動く能力がある」というもので、1時間あたり最大417g除湿すると言われています。ただ、カライエは消費電力も高くて320Wあるので、効率はエアコンほどじゃないんです。

つまり、除湿をよくやっていくポイントは、AI搭載の省エネ性能の高いエアコンを、どうやって温度が下がった後も働かせるか、ということなんです。これにはいろいろな知見があります。私が、広島の巨匠の衣川さんや友人の小暮さんにいつも言われるのは、いかにエアコンに熱を入れるか、ということです。

私は普段、エアコンを効かせるために日射遮蔽をしろ、と言っています。日射遮蔽するとは、太陽熱を入れないということです。しかし除湿を考えると、太陽熱は一定入った方がいいということです。矛盾あふれるパラドックスのような話ですが、やってみる価値は大いにあります。

なのでもし、エアコンをかけて快適な温度になったはずなのに湿気が取れないと感じたら、どこか1箇所のブラインドを開けて、熱を入れることを実験してみてください。これをやって熱が入ると、エアコンが頑張り出す現象はよくあります。私の話を聞くよりも体験した方が絶対いいし、お家の立地条件によってはうまくいかない時もあるので、まずは実験してみてください。

広島の巨匠の衣川先輩は、これを本当に巧妙に、上手にやられていて、いつもすごいと思います。室外機から水が出てくる所にビーカーを置いて、熱を入れる前後で、例えば10分間あたり何cc溜まるかなどと比べてみると、私の経験では上手に湿度が取れると、1時間換算で1Lぐらいの水が抜けます。でも衣川先輩がチューニングするお家は、1.4Lとか、すごいと1.6Lということもあるようです。それはいろんな条件が重なるから絶対ではないですが、そんなこともあるようです。

これは、正確に言うと「エアコンのリターンに熱を入れる」ことです。ルームエアコンは頭の方から空気を吸って、冷やして除湿して出していますが、この頭のところをリターンと言います。リターンに熱が入らないとアカンのです。エアコンの設置の仕方・窓の構成などによって、上手にできるかは変わります。これは申し訳ないですが、門外不出の秘伝みたいなところがあって具体的には言えないのですが、そういうことに着眼してやると、改善の余地は大いにあるということです。ぜひチャレンジしてもらいたいから、今日はご紹介しました。

ただ実際は、先ほど3種換気を1種にしたらいいなんて言いましたが、3種換気で除湿できてる家もいっぱいあります。名人小暮さんのところは3種が多いけど、カラッとしている家もあります。当社のお客さんの家でも、ここは上手にいけたなと思う家もあります。エアコンにも再熱除湿型という、熱を加えると湿度が下がるというものもあります。

鍵はエアコンのリターンをどう取るかです。単純にUA値の小さい家を作って、高性能・快適を目指しても、冬はできても夏はそんな単純じゃないということも、知っておいてください。

これから日本の夏は、ますます長くなります。この知見は私ももっと蓄積して、当社の若い子たちにもいっぱい経験させてやっていきたいと思います。ぜひみなさんも、熱を入れるってどういうことかな、とチャレンジしてもらったり、新築の時には、リターン開口が熱が取れる位置にあるかを考えてみてください。そんなことも踏まえながらやっていただくと、みなさんの夏場の快適さはさらに一段階向上するんじゃないかと思います。ぜひ参考にしてください。

家づくりのことなら、なんでもお気軽にご相談ください
お電話でのお問い合わせ
受付時間 9:00〜18:00 【水曜定休】