畳はいるか?いらないか?畳の構造から考える
今回は「畳は必要かどうか」を、畳の構造から考えて解説します。
今日はお盆の時期にちなんで、このテーマにしました。お盆といえば、私は昔、田舎のおじいちゃんおばあちゃんの家によく帰っていました。その家は田の字型の家で、家中に畳が敷かれており、そこでいとこたちと取っ組み合いのプロレスをした思い出があります。今日はそんな日本家屋の畳を題材にして解説していきます。
皆さん、畳の部屋を作られていますか?私より上の世代の方に聞くと「畳の間は一間ぐらい作った方がいいぞ」とか、若い方でも「畳はゴロゴロできるからいいよね」と言って設けたい方もいます。だからこそ、「畳が必要か」という問題はよく議論されます。今回は、畳の構造を踏まえつつ、少し解説します。
畳の構造と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、畳は3つの要素で構成されています。まず1つ目が「畳面(たたみおもて)」です。これは井草の新しいグリーンの部分を指します。2つ目が、四方のうち長辺方向に位置する、布で覆われた「畳縁(たたみべり)」です。3つ目が、多くの人がよくわかっていない「畳床(たたみどこ)」です。畳は一種のクッション材のようなもので、その芯となる部分が畳床です。
古来、日本の畳は稲の藁を使った藁床で作られていました。最近の子どもたちは、水田で稲を刈った後に乾かして天日で干している光景を見る機会が少ないので、藁というものをあまり知らないかもしれません。しかし、私たちが子どもの頃は藁は非常に身近なものでした。藁は稲の繊維でできた、ストローのようなものです。昔の畳は、40cmほどの藁を圧縮し、5〜6cmの厚さにした板状のものが畳床として使われていました。この3つの要素で畳が構成されています。
畳の品質は「畳床」によって大きく左右されます。昔の風物詩である年末の大掃除の際、畳を立てて日に干し、叩いて埃を払うという日本人が慣れ親しんだ光景は、現代ではほとんど見られなくなりました。
畳の素晴らしさの一つは、井草の香りです。今日も井草のサンプルを持ってきていますが、部屋に良い香りが広がっています。現在日本で流通している井草の多くは中国産ですが、良質なものは国産で、特に熊本産が良いとされています。井草には等級があり、特級品、一級品、二級品、三級品のように使い分けられています。特級品は社寺仏閣や高級住宅に、一級品は高級住宅に、二級品は一般的な住宅に、三級品は集合住宅や公営団地などで使われることが多いです。
井草の品質を決める重要な要素は「重み」です。面積あたりの重さがしっかりしており、井草の繊維が密実に詰まっているものが非常に高級品とされています。一説によると、井草にはアンモニア臭のような匂いを吸着したり分解する力が強いそうです。和室に行くと、井草の良い香りがして清らかな気持ちになるのは、実は科学的な作用も関係していると言われています。
畳が最大に優れている点は、その足当たりです。畳のクッション性は非常に優れており、これが畳の最大の特徴です。例えば、鎌倉時代の武将たちが住んでいた屋敷には、板の間が多く、畳は高級品として使われていました。一般庶民の長屋では、畳は少なく、筵(むしろ)を敷いている家もありました。
畳の足当たりの良さとは、立ったときや正座したときの快適さを指します。畳は防音性や防火性にも優れており、燃え上がりにくく、耐久性も非常に高いです。畳には断熱性もあり、昔は畳を断熱材の一部とみなして設計されていた時期もあります。また、畳のクッション性や復元力も優れており、少しのへこみなら、水を含んだ雑巾をつけて一晩置けば元に戻ることもあります。
さらに、畳には湿度を調整する機能もあります。畳が廃れていった理由の一つに、この調湿力があだになり、床下の湿気を吸ってダニの温床になりやすいことが挙げられます。特に昭和の時代には、畳の上に絨毯を敷く人が増えましたが、化学繊維の絨毯は湿気を通さず、ダニが発生しやすくなります。そのため、畳が悪者にされてしまうこともありました。
畳の耐久性については、私が読んだ本によると、大徳寺という国宝のお寺には、寛永13年(1673年)の表記がある畳が112枚も現存しているそうです。350年も畳が持つとは、他に類を見ない耐久性です。
もう一つ、畳が廃れた理由の一つはバリアフリーの普及です。現代の家づくりでは、畳が薄くなり、厚みが15mmしかない薄畳が主流となりました。昔の畳は55〜60mmの厚みがあり、敷居と畳の間に段差がありましたが、バリアフリーのために薄畳が採用され、今では畳の面と板の間の面が平らになるように設計されています。これにより、段差がなくなり、バリアフリーを推進する家づくりに適しています。
畳の厚みや素材の変化によって、かつての優れた足触りやクッション性が失われてしまったという問題が浮き彫りになります。昔の藁床畳は、40cmほどの藁を圧縮して5cmにしたもので、時間が経つにつれて繊維がほぐれ、柔らかくなっていく特性がありました。そのため、足がズブッと沈み込むような柔らかさが、特に60代以上の方々にとっては懐かしい感覚です。しかし、現在の薄畳は15mm程度のインシュレーションボードが芯材として使われており、かつての藁畳のクッション性とは比べ物にならないほど硬いです。
今の若い世代は、畳の上で座ることが少なくなり、正座もほとんどしなくなっています。畳が硬くて痛いと感じるため、座布団や絨毯を敷いて対応することが一般的になっています。しかし、かつての藁畳であれば、使い込むほどに柔らかさが増し、快適に座ることができました。だからこそ、畳を選ぶ際には足触りを重視し、薄畳を見直す時期に来ているのではないかと感じます。
畳の柔らかさを取り戻すためには、伝統的な藁床畳や、それに近い素材を使うことが一つの方法です。例えば、半藁床は藁と人工樹脂の「スタイロ」を組み合わせたものですが、スタイロが半分含まれるだけで硬さが増し、藁畳とは言い難い硬さになります。
最近注目されているのが、ケナフの繊維を使った畳です。ケナフは厚みが大きくないものの、柔らかさに優れており、藁畳のようなクッション性を初期から持っています。例えば、15mmの薄畳に比べて30mm程度の厚みがあるケナフ畳は、藁畳を1〜2年使った後の柔らかさに近い感触があります。しかも、ケナフ畳は比較的手頃な価格で手に入れることができるため、おすすめです。
ただし、注意点が2つあります。1つ目は、ケナフ畳の厚みが30mmと薄畳の倍になるため、畳を支える下地の床と木質フロアを支える下地の床の間に15mmほどの段差が生じる可能性があることです。これを解決するためには、大工さんに少し手をかけてもらい、最初から計画しておく必要があります。
2つ目は、藁床畳の価格が高いことです。姫路はかつて、藁床の畳芯を作る一大生産地でしたが、現在、しっかりとした藁床を作っている会社は一社しか残っていないと言われています。そのため、藁床の高品質なものはあまり流通しておらず、コストもかかります。とはいえ、ケナフ床も足触りの面では十分にカバーできるため、伝統的な藁床畳と同様に検討する価値があります。
畳について考える際、特にバリアフリーを保ちながら畳を導入する場合には、下地の床板の高さ調整が必要になることがあります。小上がりにする場合は、逆に床を上げる必要があるため、その点を考慮して計画を立てることが大切です。
インシュレーションやスタイロを用いた薄畳は、軽量で湿気を吸わず、虫が発生しにくいというメリットがあります。しかし、畳の本来の良さである足触りやクッション性が損なわれている部分もあるため、畳を選ぶ際はこれらの点をしっかりと考慮する必要があります。
最近、畳職人さんからヒノキ床という新しい選択肢を教えてもらいました。ヒノキは日本人にとって非常に親しみのある木材で、ヒノキのチップを繊維状に砕いて床材に加工したものは、藁床に近い感触を持っています。ヒノキ床は、シロアリやダニを寄せ付けにくく、湿気の管理が難しい古い家でも適しています。現在の住宅は、ベタ基礎や防湿コンクリート、防湿モルタルなどで湿気対策がしっかりと行われているため、畳の足触りを活かした藁床の見直しも現実的になっています。
さらに、室内の調湿性を求める方には、畳の導入が効果的です。例えば、ケナフを使用した畳は柔らかさが特徴ですが、厚みが足りないため、調湿機能を重視するなら、藁床やヒノキ床の方が適しています。どんなに小さな家でも、ゴロゴロできる畳のスペースを欲しがる日本人が多いです。例えば、究極の平屋として紹介された清家先生のご自宅でも、2畳分の移動式畳があり、横になれるスペースとして重宝されています。
畳を選ぶ際には、家族全員でその必要性を話し合い、どのような畳が自分たちの生活スタイルに合うのかをしっかりと検討することが大切です。モリシタ・アット・ホームでは、「ほぼ平屋」という新しいモデルハウスで畳の間を復活させる試みをしています。そこでは藁床やヒノキ床の畳を実際に踏み比べたり、寝転がったりすることができるので、畳の良さをもう一度体感してみてください。お近くの方は、ぜひお気軽にお越しいただければと思います。