いまさら聞けない遮熱材について解説します
今日は遮熱材について解説します。
これから家づくりをしようと思っている人からは、断熱材に関する質問を受けることがよくあります。その中でも今回は、あまり世間の人には知られていない遮熱材について「これってどうなんですか?」「遮熱シートは使った方がいいんですか?」という質問がありましたので、遮熱材について解説をしていきます。
遮熱材を説明するには、まず科学的な基礎知識が必要です。遮熱材の説明の前に、まずそれを説明します。
断熱・遮熱を考える時に、気にすることは熱の移動です。断熱材は熱を通さないので、熱の移動をゆっくりにすることができます。暖かい・涼しい家を考える時には、必ず熱の移動を気にしないといけません。
熱の移動は大きく3つに分類できます。
1つ目が熱伝導です。熱源があって、物質の中を熱がゆっくりと伝わっていくことです。2つ目が対流です。空気は風に乗って動いていきますが、その空気が熱を持って移動することで熱も移動して、熱が伝わっていく仕組みです。伝導と対流は馴染みがあると思います。
もう1つが、輻射というものです。よくわからないかもしれませんが、例えばダルマストーブはこれを利用した仕組みです。温められた空気が対流するから暖かく感じるという点もありますが、それだけではありません。
例えば、ダルマストーブからは距離があるのに頬がポカポカするような経験があると思いますが、あれはダルマストーブから出る遠赤外線が体に当たっているから熱を感じているんです。これを輻射熱と言います。赤外線などの電磁波が物質に当たって、物質が熱を帯びて伝わってくる感じです。
電子レンジも同じです。ご飯に流れる水分の分子に電磁波がジャンジャンと攻撃して、それが発熱してご飯が温かくなる仕組みです。
さらに言えば、宇宙空間もそうです。宇宙空間は真空だから、空気も物質もありません。だから伝導も対流もないはずです。しかし、太陽はものすごく遠くにあるのに、太陽からの熱が地球に届いていますよね。あれは、太陽熱が電磁波となって、真空の中輻射熱として地表に届いているからです。
また、根拠はよくわかっていませんが、遮熱材を売っている人たちの中で、熱移動を体感する比率を出したデータでは、伝導は5%、帯流は20%、輻射は75%もあるそうで、輻射の比率が一番大きくなっています。
遮熱材とは、輻射熱を反射する反射材のことです。遮熱材にもいろいろありますが、大体は金属膜を使っていて、一番ポピュラーなのはアルミ箔です。
昔のアポロ計画などの写真で、月面に行くロケットに、表面がウニャウニャした金箔・銀箔みたいなシートが貼ってあるものを見たことがあると思います。あれはアルミ箔です。アルミは理論上、輻射熱を90〜99%反射するそうです。だから輻射熱が来たら、アルミの反射面が90%以上の輻射熱をはね返してくれるということです。
輻射熱の中には、もちろん遠赤外線のような熱線もありますが、冷線と言って、冷熱のようなものもあります。例えばコンクリートの壁が冷え込んで、壁から離れているのに冷気を感じることがありますよね。あれは冷輻射です。
次に、世間に売られている遮熱材の3つのパターンを紹介します。1つ目は、シートの素材にアルミが吹き付けてある、アルミ蒸着です。タイベックさんが作っている、タイベックシルバーみたいなタイプです。普通のハウスラップは透湿防水シートだけど、さらにそこにアルミを吹いているから遮熱も効いています、という売りの商品です。
もう1つは、ウレタンなどの断熱ボードにアルミ箔が貼ってあるものです。野地板に屋根断熱と兼ねて使われることもあります。アキレスのキューワンボードが有名です。これはアルミ箔の弱点も補うものと言われています。
もう1つが、バブルポリウレタンです。せんべいの缶に入っているプチプチや、クッキーの上のエアタイトなどに近いイメージです。あれのもう少し丈夫な感じで、ポリウレタンの被膜の間にバブルポリウレタンの層が1~2層ある感じです。その表面にアルミ箔がプラズマ溶着で貼り付けてある複合素材です。商品では、リフレクティクスさん、アストロホイールさんなどがあります。
遮熱材のメリットは、遮熱効果があって熱線・冷線を弾くことで、お家を快適にできる効果と、アルミなので紫外線劣化もしにくいことがあります。例えば大きなスレート葺きの倉庫は、夏にとても暑いのですが、あの裏側にバブルポリプレタン型のアルミ箔がついている遮熱材を使ったら、すごく涼しくなります。
デメリットは、コストが高いことです。また、アルミは鍋にも使うくらいですから熱伝導しまくります。対流に関しては防げません。
アキレスのキューワンボードさんは、遮熱材の弱点である熱伝導に対抗できるようなウレタンボードを複合することで、2度おいしい材料だという売りでやっています。
また、これはグラスウールにも近いですが、正しい施工をわかっている人が意外に少ないです。
例えば絵に描いたように、屋根・空気層・野地板があって、屋根のすぐ裏にアルミ箔(遮熱材)を貼っている時と、屋根に空気層を設けて空気層の内側に遮熱材を貼った時を比べると、効果が全然違うそうです。前者はほぼ効果がないそうです。
なぜかというと、屋根に冷熱・熱を受けたものが、熱伝導のせいでそのままアルミ箔から出てしまうからです。遮熱材を入れる意味がなくなってしまいます。
しかし、内側に空気層を持つと、俄然遮熱効果を発揮します。遮熱材の外側には空気層が要るのです。このように、遮熱材を使う時には基本的なメカニズムがわかっていないといけません。
また、空気層は空気層でも、静止空気層の方がいいです。対流・通気しない、締め切ったような空気層がある方が、遮熱効果は非常に高いです。
遮熱材に関してはいろんなことを言う人がいらっしゃいます。例えば、私がすごく尊敬するちゃんとした工務店さんからは、こんな話を聞きました。
断熱をしっかりした上にアルミ箔を貼るケースと、断熱だけしっかりやってアルミ箔は特に貼っていない屋根とを、同じような形状で隣の家で計測して比べたところ、アルミ箔は貼ってもなくても、中の居住性は変わらないそうです。「だから貼らなくていいんじゃない?」と、遮熱材にある意味否定的な方もいらっしゃいます。
一方で、静止空気層を上手に使えば遮熱材だけで十分快適性を維持できるとおっしゃっている方もいます。
私は個人的には、経験からその効果がわかっています。例えば屋根断熱ではない小屋裏収納で、バブルポリウレタン系のアルミ箔を貼った遮熱材を使った時には、小屋裏収納が非常に快適になります。また、うちで飼っている柴犬の犬小屋の中にも遮熱材を貼っていますが、冬は幾分か犬の機嫌がいいし、よく寝てくれたり静かになったりします。
静止空気層・空気層を、どのように活用したらそれが本当にうまくいくかに関しては、熟知した人と知識はない人とでは差があると思います。遮熱材を本当の意味で有効に使う時には、施工経験がしっかりある方や、理論が体系的に身についている方にやってもらう必要があると思います。
私もある程度は使いこなせると思いますが、私は遮熱材を絶対に使って快適にするというよりは、まずは断熱・気密をしっかりやって、遮熱材は補助的に使う形がいいとか、改修工事で上手に使うと非常に効果を発揮するものと思っています。
遮熱材に関しては、このような感じがニュートラルな意見じゃないかと思います。そんなことを意識していただきながら、遮熱材を活用していただいたらと思います。ぜひ参考にしてください。