築30年以上の家のリノベ(空調・換気編)
今回は、築30年を超えるお家のリノベーションで気にしてほしい、空調・換気について解説します。
リノベというのは、お家を大規模に改修していくこととして使われる言葉です。その中で私は、耐震性・断熱性・気密性などの家の性能・質を高めていくことが、リノベの本質だと思っています。
リノベをするということは、断熱・気密の改修・改善をすることです。それを前提に考えるならば、絶対に空調・換気も同時に考える必要があります。なぜかというと、家の質が変わるからです。
築30年以上の家のリノベとなると、多くの場合は社会経験の多いシニアといわれる方がお施主様になることが多いです。お施主さんたちとお話しすると、冬場の暖房のやり方に関してものすごくこだわり・割り切りがあると感じます。
どういうことかというと、その方が住んできたお家の多くが、石油ストーブ・石油ファンヒーター・ガスファンヒーターのような、家の中で強い火力を利用しながら家を暖房する形なんです。
私は、リノベするならそれはやめましょうと言っています。リノベすると、そのような暖房方式は必要なくなるからです。
言葉遊びみたいになってしまいますが、日本では「暖房」という言葉は、本当の意味で使われていません。古いお家は石油ストーブ・ファンヒーター・こたつを使っていることが多いです。石油ストーブみたいに、カーッと赤くなって側にいたら手足が焙れたりするものもあります。
西洋で暖房をしているお家は、文字通り部屋全体を暖めています。こたつとか、部分的に手を焙るものとか、もっと古いと火鉢とか、あんなものを置いていることはほぼありません。暖房したらそんなものはいらないということです。
一方日本は、暖房しながら採暖もしています。手焙りとか、足元だけ暖めるようなことを補助的にやります。そうでないとしっくりこない、と言う方もいます。
そういう方が好まれるもので、床暖房があります。床暖房にしてからすごく快適になったと言う方が多いです。しかしこの床暖房も、フルには使われていません。なぜかというと、光熱費が掛かってもったいないからです。日中はつけずに、晩御飯の時だけつけているような方が多いです。
リノベの時は、床暖房はなくてもいいと思います。リノベすると、断熱・気密がきちんと改善できます。気密性能が上がると隙間風が入ってこなくなるので、空気が入れ替わりにくくなります。
家の中で火を焚くと、酸素を使って二酸化炭素を出します。ここで怖いのは一酸化炭素です。不完全燃焼を起こす危険もあり、新鮮な酸素を入れる必要がありますから、1時間に1~2回は必ず換気してくださいと決まっています。
しかし換気をすると、せっかく暖めた空気を逃がして冷たい空気を入れるということになります。何をやっているのかよくわからなくなりますよね。
リノベをする時は、今後はエアコンで暖房するように切り替えていただきたいんです。
なぜかというと、エアコンはヒートポンプという仕組みを使っていて、非常に省エネ性が高くエネルギー効率がいいものだからです。
エアコンは火も燃やさないから、空気を汚すこともありません。それから、エアコンは暖房だけでなく冷房にも使えます。いろんな意味で、エアコンが経済的・便利だということです。
強い火力のストーブ・ヒーターのようなものとこたつを併用しないと暖かくないという固定観念を、リノベする時は捨ててほしいのです。床暖房も、昔の寒い家と比べたら快適かもしれませんが、高断熱のお家になったら、床暖房が暑すぎるという話も聞きます。
リノベをするなら、必ずエアコンを使う形の空調にしてください。
続いて空調に関してです。先ほど、1~2時間に1回必ず換気をしないといけないという話がありましたが、日本の家は今は法律で、24時間換気を義務付けられています。
古い家は、24時間換気の義務化前で換気機能がついていない家が多いですが、リノベをやったら24時間換気を改めてつける必要があります。なぜかというと、気密が非常によくなって、自然換気されなくなるからです。第三種換気・第一種換気のどちらかを必ずつけていただくことをおすすめします。
三種換気は一番素朴なシステムで、人がいるところで小さな吸気口から空気を入れて、廊下・水回りなどに換気扇をつけて排気する方法です。
リノベーションでリビング・ダイニングにおすすめなのは一種換気です。熱交換型のコンパクトなロスナイみたいなものがあります。熱交換も同時にできて、換気が促進されますので、エネルギーのロスも少なくていいです。
お年寄りが将来にわたって安心して住まれる時には、エアコンで暖房をとって一種換気で換気しておけば、ずっと閉め切っていても空気が汚くなることはありません。
ちなみに、エアコンは過乾燥になりやすいので、加湿だけはしてください。それだけ気にしていただけたら、リノベを考えた家に関しては一番ぴったりな空調になると思います。
ぜひ参考にしてください。