C値(気密性能)はどこまであると良いのか?
家の快適性・省エネ性を測る1つの尺度にC値と言って、建物の気密性を図る尺度があるんですけど、この数値がどれぐらいの家にしたらいいんですか?それはどういう根拠なんですか?みたいな、なかなか僕たち専門家にしても骨の折れる質問をいただきまして、今日はそのことを簡単に説明していきたいと思います。
僕たちの業界ではとても有名なHEAT20という一般社団法人で、そこが公式に出した「2021年度版 設計ガイドブック」からC値についても言及されてますので、これに基づいてお話をしていきます。
まず気密性能はなぜ必要か? という目的と必要性に関してもう1回おさらいしておきます。1番は暖冷房、つまり空調を冬だったら暖房、夏だったら冷房をやった時の熱負荷の低減と室内環境の向上、電気代・光熱費があまりかからずに人間が快適に過ごせる、それを向上することが気密の目的です。これが1番に置かれていて最大の目的です。
次が、二次的なものとして、断熱材の性能は気密がしっかり取れてると下がりにくい、断熱材も傷んでいくんですけど、品質の劣化を抑えていく目的で気密はある、というのが2番目です。そして3つ目が、繊維系断熱材、グラスウール・ロックウールとかああいう綿状の断熱材を使った場合の壁体内の結露を防止するのに気密が要ります。これが3つ目です。4つ目が、計画換気の性能保持です。ちょっと難しいですよね。計画換気というのは、何年か前にシックハウス対策といって化学物質が住んでいる所に出て体の調子が悪くなった、気分が悪くなったという事件があったじゃないですか。あの時を受けて日本は24時間換気を義務付けたんです。ちゃんと機械できちんと管理して計画換気しましょうって、これをちゃんとやれるためには気密が要るよ、ということなんです。
ここに関しては、我が師匠である松尾先生の動画が最高なので、松尾先生はC値をどれくらいにしたらいいかは4つの視点において非常にわかりやすい解説をされてるので、僕の拙い説明よりも松尾先生の動画をぜひ気になったら見てください。
僕は一番最初に出てきた省エネ性と快適性、ここに対して特に快適性に関してHEAT20が詳しく論じてるところに関して絞って解説をしていきたいと思います。1に関しては、HEAT20は学者さんが書いてる文章なので読みにくいんですけど、さらに気密性能を高めるメリットは冬期の冷気の流入、いわゆる寒い隙間風です。これが入ってきて不快、というのをなくす快適性NEB、なんて難しい横文字ですけど、この向上にあるんだということで論旨が展開されています。
日本では気密性能は気密測定器という機械を使ってそのお家の任意の5点の通気量を測って外気と内気の出入りに関して内外差圧(外と中の圧力の差)の回帰式から差圧9.8Paの時の1時間あたりの通気量を有効開口面積、窓・ドアとかの面積と実質の床面積で乗じた値で判定しています。これを聞いてわかる人はほぼいないと思うんですけど、HEAT20はさらに精緻に何が人間にとっていいのかを弾きたくて、でもこの実質床面積というのは現実を考えたらちょっとまずいよね、と思ったようです。
昔は1階の床があって2階建てなら2階があって天井があって真四角・スクエアな空間の家が多かったけど、今は吹き抜け・勾配天井があったり住宅空間も多岐にわたってて、昔は床面積でざっくりやったらいいんじゃない? と言ってたのがそうじゃなくて気積と言って実質の容積に鑑みて内外差圧を捉えないと精度が悪くなるんじゃないの? と考えてもう少し基準を厳しくしようや! とそういうことがあったんです。世界はどうやってるのかと言ったら、内外差圧をさっき9.8Paと言ったのを50Paの時にACH(Air Changes Per Hour)1時間あたりに空気が入れ替わるすなわち換気回数で規定してることが多いので、ここに準じて日本も基準を考えたらいいんじゃない? という議論になったんです。
要は、より細かく、今建っている家の実態に即して、みんなが失敗しないように基準を作ろうということをHEAT20という諮問機関の偉い先生たちが論じたわけです。その結果、内外差圧9.8Paにおける通気量Q 9.8㎥/hを断熱外皮、建物の外の外皮の内側の気積(容積)Viで除した換気計画で表したらいいんじゃない? そうすると世界の基準とも実態とも合って、より施主さんに不利益にならない基準になるよね、と導き出したのをACH9.8=Q9.8/Viという公式で表したものです。
それで、ここでHEAT20が考えたのは、人間が不快に感じるのは風速なんです。隙間風が入ってきたら不快だし、少なかったら不快じゃないということで、それでいうと、環境工学的には不快じゃないというアカデミックな言い方をするんですけど、不快じゃない、つまり快適ということだと思うんですけど、その条件のうち15%以下の不満足者が15%以下ということが達成できたら、ほぼ快適と言っていいみたいな学者的逆説的な言い方になったんです。それを表したのが、平均温度と平均気流速度(不満足者15%)の相関的なグラフなんです。
空気の温度が20℃・21.1℃と書いてあるんですけど、日本の冬は室内20℃ぐらいだったら快適じゃないですか。20℃という視点で考えたら、平均気流速度(風の速さ)が0.2m/sぐらいになったら、これをより少なくしなくてもあまり関係ないと確かに言われたらそっちの方がいいかもしれないけど、俺一緒でええわ、みたいな感じが言えるよね、というところを導き出したわけです。それを踏まえて、今度は気密性能と外壁の幅木下流流入速度関係、入ってくる空気と気密性能の相関を不満足者の15%以下という視点で見た時には、グラフを大きくしたやつを見てもらえたらと思うんですけど。
グラフのすぐ下に書いてあるのがACH9.8値という国際規格みたいなものです。下がC値で読み返すと同じことなんですけど、単位・区切りが違うので、こう見た時に0.2というところと快適と判定する基準で見たら、ACH9.8値で言ったら0.5になるから、これはC値で言う0.9ぐらいにほぼ一致することがわかったんです。いろいろ現実の細かいしわをお客さんに不利益にならない施主さんのためになる厳しい基準で考えたら、C値が1を切る ≒ 0.9ぐらいだったらめちゃええやん、という判断になったんです。さらに、気密性能というのは新築の時が最高で劣化するんです。気密テープなどはテープだから、あれが剥がれることだって考えられますよね。地震で動くかもしれないし、その時に新築時より2~3割は将来的にはアカンくなることも見越しておいた方がいいよねと補正したんです。その結果、国際基準としてはACH9.8では0.4±1ぐらいにしておけばいいんじゃないの?となりました。
でもACH9.8の値と言われても、よくわからないじゃないですか。読み替えてHEAT20が言ってるのが、C値=0.7±0.2。C値が0.5~0.9に自分の家がなってたらいいんです。そのことを学者の立場で公明に言ってくれてるんだから、それで良いと思います。そんな感じでC値を見てもらったら、そんなに大きな失敗はしないんじゃないかと思います。
かなり頑張って噛み砕いたつもりなんですけど、なかなか難しい話でした。気密測定をして、なんでうちは0.1じゃないんですか!残念です、なんて言う必要はないので、そういう感じで見てもらったらいいんじゃないかなと思います。