築30年以上の家のリノベ(インフラ・設備編)
今回も築30年を超えるお家をリノベする時に気にしてほしいポイントに関して解説をします。その中でも、家のインフラ・設備に関して詳しく解説をしていきます。築30年以上経ったお家をリノベーションして、もっと長く快適に暮らしていくためには、設備関係・インフラに関して考えないわけにはいかないんです。人間は生きている限りは、水も電気もガスも必要です。それらを使って煮炊きをしたり、暖房・冷房をすることで、初めて快適に暮らしていけるので、ここはとても重要なんです。そういう視点で気にしてほしい何点かのポイントを解説していきたいと思います。
古い家で一番気にしてほしいのはお風呂です。多くの古い築30年以上のお家は、在来浴槽と言って、タイル張りやモルタル塗りの床・壁・天井が多かったんです。このお家のお風呂は間違いなく冬は寒いはずです。例えばお風呂で倒れたり調子が悪くなる人の多くは、すごい寒さの中 熱い浴室に入ることで起きていることがほとんどだと思います。ヒートショックのような感じ。弱った時に、嵩に懸かって不調にならないような家にするためには、タイル風呂をユニットバスに変えていただくことが一番かなと思います。
昔はユニットバスというと、高段住宅の無味乾燥なユニットバスを思い浮かべる人が多かったですけど、今は全然違います。非常によく作られてて、手すり・シャワー・物の収納・鏡とか、あらゆることがシステム的に考えられていて、お風呂桶にたくさん断熱剤が巻いてあって、お湯を張っても湯冷めしないお風呂もある。昔はお湯を溜めているそばから冷たくなるお風呂はよくありました。だからお父さんが残業して帰ってきて最後に入ろうと思ったらお風呂に入れるけど風邪ひくわみたいな感じで、差し湯・追い焚きをしたりするのはなかなか大変だったのが、今は温度がほぼ下がらないようになってるし、ユニットバス全体の断熱性能が高まって湯冷めしにくい、そういう構造になっている。もちろんタイル張りがアカンというわけじゃないですけど、タイル張りで暖かいお風呂を作るのは相当大変だと思います。絶対無理とは言いませんけど、タイル張りの下に断熱層を作るから、ある程度の面積が必要なんです。断熱材の分だけ中が狭くなっていくので、それから腐りにくかったり水漏れしにくかったりするようなディテールも細かく考えないといけない。そういうことは簡単じゃないと思うので、一般的にはユニットバスにされることをオススメします。
次に気にしていただきたいのが給湯方法です。その中でも、電気温水器というのがあるんですが、絵で言ったらこんな感じです。これがものすごい電気を食うんです。僕は実際にこれを使ったことはないですが、以前ハウスメーカーから電気温水器がいいと言われて付け足してもらったお客様がいて、あの方たちは大変だったんじゃないかなと懺悔のような気持ちになります。それぐらいすごく電気を食うので、これは即刻変えた方がいいです。それから田舎だったら都市ガスがないからLPガスでガス給湯器を使っていると思いますが、エコキュートに変えてもらう方がいいです。エコキュートと電気温水器の違いですが、エコキュートは見た感じ冷蔵庫みたいだけど、エアコンのように室外機がついてます。
室外機も貯湯槽も外にあるんですけど、ヒートポンプという技術を使って空気中の熱を汲み上げて、それによってお湯を沸かすので、エネルギー効率が全然違うんです。電気温水器というのは簡単に言うと大きなコイルみたいなものでグラグラ沸かしているだけだから、エネルギー効率が1に対して1しかお湯が沸かないけど、エコキュートは何倍も効率がいいです。ちなみに、電気温水器からエコキュートに変えて元年ぐらいで費用を回収できると言われているので、電気温水器を使っている人は速攻変えた方がいいんじゃないかなと思います。
LPガスに関しても、高い料金体系でやられている方は絶対に変えた方がいいで、これも4年ぐらいで費用を回収できます。省エネ性というより値段なんです。ガスが無駄にならないとか、ユーザーの方の経済的負担が大きいので、ぜひやめていただくべきです。この2つが二大巨頭という感じです。
その上で、築30年ぐらいならまだマシかもしれませんが、築40年〜50年のお家だったら水道の配管がダメになってたりします。昔は鉄の配管だった時もあるので、そういうのは錆びて流れが悪くなってることもあります。それから分岐型といって配管にはジョイントが必ずあるんですが、例えば1本の管が1本で進むことはなくて、どこかに継ぐ(継手)があり、それから直角に曲げる時は曲がりというのが必要です。さらにこれを1回曲げて垂直に上げる時は2つ曲がりが必要です。それからT字型といって直の管を途中で抜き出す時に使うものもある。全部ジョイントで繋いでいるから漏れも多かったんです。
今はヘッダー方式といって、メーターの根元から分岐するような装置はあるんですけど、そこから先は、トイレだったらトイレ、キッチンだったらキッチンに1本のパイプで繋ぎ目なく送るというのが主流です。これは非常に耐久性の高い樹脂のパイプでできていますから、もちろん錆びたりすることはないですし、継ぎ手が一切ないから漏れたりすることがないんです。また万が一どこかに釘が刺さった・傷が入った時は抜き替えができるサヤ管ヘッダーという設備があります。
あとは、古いお家は分電盤が小さくて多いんです。なのでお父さんがドライヤーを使っててお母さんが電子レンジでチンしたらブレーカーが落ちるというのは、回路数が少なくて1回路あたりにいろんな荷電がぶら下がっているから起こるわけです。
これをこの際だから大きいものに変えて、各回路をもう1回整理し直すことができれば、電子レンジやテーブルの上でホットプレート・電気鍋を使うことも多いと思うので、そういうところは専用回路でやっておくとブレーカーが落ちたりしなくて安心という側面があるから、大きな分電盤の方がいいです。昔みたいに大仰じゃなくてスリムなものもありますので、そういうものに変えていただくことも大事かなと思います。
そして先ほど給水の話をしましたけど、排水も変えていただくということもできればやっていただきたいです。それからガス管の場合も、ガス管自体を替えておくことも方法論としてあります。ガスじゃないという人もいらっしゃるので、それから忘れてはいけないのはネット系。古いものはそんなにないと思うので、これに関してはルートをこしらえておくこともやる必要があると思います。
最後に年長者の方に関しては、洗濯物を干すということに関してこだわり・これまでの生活習慣があって気にされる方も多いんですけど、年を取っていくにあたって家をリノベするというようなことがあるならば、例えばガス乾燥機とか、内干し用の除湿機を用意して内干しスペースを作っておくんです。我が家の話で恐縮ですが、仕事部屋があるんですけど、梅雨の時は大変です。母が洗濯物を僕の書斎で干してるんです。他の子たちの部屋はかわいそうだけど、息子部は遠慮がいらないから干しているんだと思いますけど、内干し専用空間を作っておくのも重要です。
洗濯は外に干すという感覚が根強いとは思うんですけど、部屋内に打ち干しできる空間もリノベの際に作られることをオススメします。年を取っても洗濯はするし、年を取ったら体が衰えていろんなことをやるのが大変になるから、部屋内に干せる方が楽です。特に梅雨時の乾きにくい時も楽です。寒い時に干しに行く必要もないです。体の調子が悪い時もあるし、昔の女性の中にはそういうことは道徳的によくないと嫌がられる方もいらっしゃるんですけど、僕は楽をしていいと思うので、外干しを減らす設備というのもリノベを考える上でインフラ設備の改修に入れていただいたらなと思います。