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現場発泡ウレタンのメリット・デメリット

今日は現場発泡ウレタンの工法、メリット・デメリットを解説します。

まず、あらかじめお断りをしないといけないのですが、実はこの話は約1年前頃に一度させていただいています。しかし、ChamChamさんという方からコメントをいただいて、「計算がよくわからない、合ってないんじゃないですか?」とのご指摘をいただきました。見返したら「寝ぼけてたわ」という感じだったので、今回仕切り直して、再びこのことについて解説していきたいと思います。ちょっと込み入った話になるので、頑張ってついてきてください。

現場発泡ウレタンと一口に言っても、種類がいろいろあります。世間的には、100倍発泡・120倍発泡と言われているものが人気があります。それと、30倍発泡の2種類が住宅の現場でよく使われている印象です。

それぞれにメリット・デメリットがあるのでご紹介していきます。まず100倍発泡についてです。このメリットは、低コストなことです。たくさんの棟数を施行されているような会社さんだったら、これが一番大きいと思います。また、発泡ウレタンは、断熱工事・気密工事に不慣れな職人さんでも、吹いてしまえば気密性が高まるという特性がありますから、施工性が良い・気密工事が楽というのが最大のメリットだと思います。

一方で、デメリットもいろいろあります。例えば火が付いた時に、燃え上がることはないですが、燻ることがあります。しかし、それを言ったらほとんどの建材が使えなくなってしまいます。

また、よく気にされることでは、100倍発泡にある「スキン層」というものがあります。これを取ってしまうと、結露の心配があるんじゃないかとおっしゃる方が多いです。それがどういうことなのか、後ほど解説していきます。

その前に、100倍発泡と30倍発泡の比較から説明します。まず、30倍発泡の方が数が少ないから性能が低いかというと、そうではなくて、一般的には30倍発泡の方が高性能です。熱伝導率や熱抵抗値などで示される熱の伝わりにくさは、断熱材の厚みが同じであれば、30倍発泡の方が優位です。その反面、30倍発泡は100倍発泡に比べてコストがかかります。

ウレタン樹脂をブワーッと膨らませて、それが100倍になるものと30倍になるもの、と考えると良いと思います。30倍にしかならないものの方が密度が高く、100倍は広がる分空気が多くて密度が低いですよね。ですから、30倍発泡の方が性能が高いということです。

熱伝導率の差で言うと、100倍発泡では0.034〜0.038W/mKぐらいで計算することが多いと思います。30倍発泡の熱伝導率は0.026W/mKで、物によっては0.022〜0.021W/mKのものもあるそうで、それぐらい100倍発泡と比べて高性能です。

気密が簡単に取れるという利点はどちらにもありますが、30倍発泡の方がより性能が高いということ、そして、結露も起こりにくいと言われています。

続いて、結露の有無について1つの目安をご紹介します。難しい話になるので、好きな人だけついてきてください。

結露するかしないかの簡易的な判定の1つに、「透湿抵抗比」というものが使われます。壁の断面図で説明します。外側から、外壁・通気層・防風層(タイベック)・面材・断熱材となっています。面材については、最近の建物は耐震性を上げるために、外周にぐるりと板を貼っています。断熱材の室内側には、クロス下地や壁塗り下地など、12mmのボードが貼ってあるという構成になっています。

この構成のうち、断熱材と面材の境目を「透湿抵抗の中心」と言います。「透湿抵抗比」は、この透湿抵抗の中心を境にして、外側と室内側のそれぞれの透湿抵抗を比べるという考え方です。公式的に言うと、内側透湿抵抗の合計/外側透湿抵抗の合計となります。この数値が「透湿抵抗比」です。

透湿抵抗比は地域によって分かれています。1・2・3地域の寒い所では5以上、4地域という少し寒い所では3以上、5・6・7地域であれば2以上が良いとされています。その数値以上だと、断熱層と石膏ボードの間の防湿シートを省略してもいいとされています。

100倍発泡をやられる会社さんは、大体このシートを使わないことが多いです。柱が10cmぐらいあって、そこに発泡ウレタンを吹いて、8cmぐらいの厚みで吹き終わります。しかし、お客さんは性能を上げたいから「もっと厚く吹いてよ」と言います。そう言われれば、良心的な業者さんは目一杯吹きます。その結果、柱よりも断熱材が分厚くなると、石膏ボードが収まらなくなってしまい、そうなるとスキンカットと言って、吹いた発泡ウレタンをシュッと切ってしまいます。

発泡ウレタンを吹くと、モコモコとなって、それが固まると表面にうっすらした膜ができます。この膜をスキン層と呼びます。これは樹脂の膜で、塗膜みたいなものなので、防湿シートに近いような性能になります。しかし、これをスキンカットして取ってしまったら、スポンジがそのまま出ているような断面になってしまいます。それでは多少湿気を通してしまうということで、スキン層のある・なしを重要視します。

最近は、日本アクアさんが実証実験をされて、スキン層があってもなくても透湿抵抗はあまり変わらないということをおっしゃっています。ただJISなどの実験団体が出しているような、100倍発砲の「ウレタンフォームA種3」では、透湿抵抗は大体6.57となっています。

先ほどの公式に当てはめて計算してみます。分母側の外装の透湿抵抗は、外壁と通気の合計で1.8と決まっています。そして防風層(タイベック)は0.4、一番安価な面材である構造合板が、22.6もあります。分子側は、断熱層が6.57で、石膏ボードが0.7です。防湿シートがない場合、合計すると7.27/24.8=0.29です。

5・6・7地域では2以上にならないといけないのに、0.29では10%ほどしかないですから、それはまずいですよね。これを計算する人が、100倍発泡は防湿シートをしないで大丈夫なの?と思うわけです。

しかし、ここに防湿シートを加えると、分子に60ぐらい加算できるんです。67.27÷24.8になるので、2を超えます。つまり、シートをつけるだけでまず結露はしないということが簡易に判定できるわけです。

合板が22.6という数値ですが、これはすごく湿気を出しにくいという性能があります。例えばハイベストウッドなど、水蒸気を速やかに出すような性質のものを持ってくると、数値は2.34ですから低まります。このように面材の種類を選んだり、あるいは防湿シートをすれば、そんなに怖くありません。

ただ、防湿シートを選ばずにハイベストウッドだけに変えると、7.27÷4.54=1.6となり、2以上になりませんから少し心配が残ります。ですから、防湿シートをやった方が無難ではないかということです。

コストが安いと思って100倍発泡をやっても、防湿シートもするとなると、少しですがコストアップになります。また、施工もややこしくなるので、工事する側はできれば貼りたくないんです。しかしお客さんから見たら、シートを貼ってもらう方が安心ということです。

では30倍発泡で考えてみます。30倍発泡は、例えば10cmの厚みに吹こうとすると、一発では吹き上がりません。何回かに分けるので、何層かになります。

30倍発泡の「ウレタンフォームA種1」というのは、断熱層の透湿抵抗が23です。層が増える分をダブルカウントしていいかは微妙ですが、100倍発泡では6.57なのに対して23ですから、すごく透湿抵抗が大きくなります。

また、ハイベストウッドなどの水蒸気がよく出る面材にしたとして数字を足していくと、透湿抵抗比は10.28となり、2よりも数値が遥かに良くなります。ですから、結露しない、防湿層は省略してもいいと判断できるので、比較的これが安心かなと思います。

一番気になるであろう結露する・しないという視点で考えると、やはり面材の選び方や、気密シートをやるかどうかは、注意をしていただく必要があると思います。

まとめていきます。
発泡ウレタンをやる時に私が思うのは、まずは2層吹きです。一度に吹くのではなく、2層・3層吹くようにします。そして防湿シートを貼って、極力スキンカットはしないようにすることが1つです。

面材に関しては、強度も出て安価な合板が良いですが、万が一壁体内に水分が宿った時に速やかに水蒸気がよく出る、透湿抵抗が少ないものを選んでおくのも1つです。

そして、それらのことをやる中で、コストバランスを考えて選んでいくということです。低コストにするためには、発泡ウレタンと比べると少々施工技術が必要ですが、グラスウールを選ぶのも手です。

最後に、結露の有無については、現実はすごくベテランの人でも正直なぜ結露したのかわからないという事象が時々あります。

私たちは今回説明したような簡易計算以外に、定常計算などのプログラムを使って細かく計算をします。
そのようにしても、計算結果から想定される結露の有無には結構バラつきがあります。

通常の結露の計算は、冬型結露の話ですから、冬の室内温度を20℃で計算します。しかし実際には、寒がりの方では23〜24℃がいいという方や、はたまた25℃じゃないと嫌と言う人もいらっしゃいます。そうすると、計算と実際の設定が5℃変わってきます。そして、例えば6地域では、結露の計算は外気温0°Cで計算しますが、最近は-5℃なんていう冬の日もありますよね。

そうすると、判定のために計算した温度と設定温度がかなり変わってきます。計算では結露しないと判断した仕様でも、実際は結露してしまうということがあります。

防湿シートをやるかどうかは、暮らし方の条件もよく考える必要があります。お施主さん・工務店さんとよく考えていただいて、定常計算のように詳しい計算をやって選ぶのが、良いのではないかと私は思います。

すごく低コストでお手軽なものですが、知らなかったり暮らし方のポイントがわかっていなかったら、安心して暮らしているつもりでも実際は見えないところで小さな結露が起きていて、長い期間で家に災いする可能性もゼロではありません。そういうこともぜひ頭に置いていただけたらと思います。

今日は少々熱血解説が長すぎましたが、発泡ウレタンを上手に使ってもらえたらと思います。ぜひ参考にしてください。

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