屋根断熱と天井断熱はどちらがいいのか?【2023年度版】
今日は屋根断熱と天井断熱について解説します。
なんだかどんどん日本が夏化していますよね。寒い時には暖かい家にしたい、という気持ちが働きますが、こう暑くなってくると「涼しい家をどう作るか」という話が、家づくりの現場では増えてきています。
家づくりの初期段階では、家の間取りやデザインを気にされます。その部分が固まってくると、次にチェックするのは「涼しさ・暖かさ」になります。その中でもお客様が気にされることに、屋根や天井部分の断熱があります。
壁の断熱は、ダブル断熱や基礎断熱などを考えられますが、天井部分の断熱はおろそかになることが多いのです。そして、屋根断熱と天井断熱の2つの方法について、「どちらが良いの?」という質問もよく受けます。そこで今日は、2~3年前にも触れたことがあるこの話題について、再度解説したいと思います。
▼屋根断熱と天井断熱どちらがいいのか
なぜなら、ここ数年で大きく状況が変わってきたからです。その変化とは、1つには夏が非常に暑くなり、たとえば6地域でも40°Cを超えるような日が出てきたこと。もう1つは、ウクライナ危機などによりエネルギー価格が高騰し、電気代やガス代が上がってきたことです。
こういうことに対して屋根断熱・天井断熱は結構重要です。そういう視点も含めて、ここをきちっと理解していただいた上でご自分の家づくりをされる方が良いと思うので、久しぶりに再度その話を解説していきます。
まず、屋根断熱・天井断熱の概要をざっくりと説明します。外観は同じに見えるお家でも、上部の断熱については大きく2つの方法が存在します。
1つ目は、屋根断熱というもので、これは屋根の形状のラインに合わせて断熱を試みる方法です。もう1つは、天井断熱というものです。こちらは居住部分のスペースの、天井のすぐ上に断熱ラインを設ける方法です。
これらの違いは、日常生活を送る中ではあまり感じることありません。どちらがどうなのかは、よくわからない感じだと思います。それぞれにメリット・デメリットがあるのでご紹介します。
まず1番スタンダードな天井断熱のメリットについて説明します。1つ目のメリットとして、私はコスト面を挙げます。
天井断熱は、断熱材を水平面に敷いたり吹き付けたりするだけの方法なので、非常に手間が掛かりません。また、動くことがない場所に最初から設置するので、重力の影響も受けません。
それに対して屋根断熱は、上側に断熱材を貼り付け、重力に逆らって落ちないようにします。そのため、断熱材を固定しなければならない問題があり、その分コストが割高になります。
このように、コスト面におけるメリットとデメリットは、天井断熱と屋根断熱との間で大きく異なります。
天井断熱は安くて良いのですが、私が現場を預かっている立場から申し上げますと、デメリットもあります。
まず1つ目のデメリットとして、建物内部の部屋を仕切る「間仕切り」が存在するため、その中側の取り合いという部分の気密を保つのが難しいという点があります。断熱するコストはそれほど高くないですが、よく考えておかないと気密性に影響が出て、結果として大工さんの手間賃がかかってしまうことがあります。
2つ目のデメリットです。最近の住宅では、埋め込み型の照明器具が多いですよね。LED照明が普及し、コンパクトで小さな照明器具が主流となってきています。昔は、シャンデリアのような自己顕示欲の塊みたいな照明を考える人が多い時代もありましたが、今はどちらかというと、天井面にきれいに収まっている照明の方が、スマートでカッコいいと思う人も多いです。
しかし、天井断熱が施されていると、このようなダウンライトや埋め込み照明の設置が難しくなることがあります。なぜなら、LED照明から発生される微量の熱が、断熱材にやや影響するためです。これを避けるための、ケースや箱を設けなければなりません。
3つ目のデメリットに、空調や換気の設備に関して、ダクトの設置が難しくなるという点も挙げられます。断熱層にダクトを貫通させると、様々な問題を引き起こす元になりますから、避けたいところです。そうすると、全館空調や第一種換気などのダクティングに関して、特に難しさが伴います。
このように、断熱工事としては安価で手軽な天井断熱ですが、設備やインテリアデザインの面で考慮すべき点があります。
一方、コストがやや高くなる屋根断熱にも、メリットがあります。その1つが「空間利用」です。屋根断熱では、小屋裏(天井裏)の空間を利用できます。
この空間は様々な利用方法があります。1つ目の利用法は、ここを勾配屋根、あるいは勾配天井にすることです。通常のフラットな天井とは異なり、斜めになった天井はその分上に高さが取れ、開放感が生まれます。
この性質を利用して、2階にロフトを作る活用法もあります。特に男の子などは大体高い所に上りたがりますから、自分の部屋にロフトがあると大喜びします。もちろん、元気な女の子も喜ぶと思います。
2つ目の利用方法は、小屋裏を使った小屋裏冷房です。小屋裏空間を全館空調としての空調エリアという形で使えることも、非常にメリットだと思います。
全館空調を導入する場合、建物の壁の中や天井裏をダクトで通す必要があります。狭い空間ですから、よく考えて通さなければいけません。しかし、小屋裏は一定の広さがあるため、ダクトを使用するにせよ、使用しないにせよ、例えば冷房の冷気のやり取りなどが非常に行いやすい空間となります。
特にこれだけ暑い夏が続くと、全館空調は「もったいない」ではありません。いろんな意味でトータルコストも安くなるし、体の負担も軽減し、本当に涼しさを実感できます。しかし全館空調を望む場合は先ほどお話ししたように、屋根断熱にしておかないと、その実現が難しくなります。
小屋裏を利用する空調で、私が今松尾先生からも教えていただいて、1つの課題にしているのが、第一種換気と小屋裏エアコンの併用です。
第一種換気を使うと何が良いのかというと、第一種換気は外の湿っぽい空気をあまり持ち込まずに、熱交換と併せて湿気の交換もしている点です。あまり湿っぽくないフレッシュエアを入れて換気する機能があるので、それを全館空調で使うと、非常に除湿の効率がよくなります。
夏の暑さというのは、気温の高さもありますが、湿気の多さの影響もあります。この湿気が抑えられると、とても良いことが多いのです。何が良いかというと、室内の温度をそんなに下げなくても、涼しく感じるということです。
日本は高温多湿という国柄ですが、例えば「常夏の楽園」と言われるハワイが、常夏でありながら、多くの人が「あそこに行きたい」と言いますよね。なぜかというと、風が吹いていて湿度が低いからです。温度は比較的高くても、カラッとした気候が特徴です。
そんな感じに家がなったら良くないですか?例えば女性は、冷えすぎないけれども涼しい空間は喜びますよね。赤ちゃんやお年寄りも、もちろん男の子も喜びます。
温度設定が低すぎない、温度が高くても涼しいということは、それだけ冷房に使うエネルギーが少なくて済みます。それは省エネに繋がりますし、電気代の負担も軽減され、2度も3度も美味しいということになります。
そう考えると、第一種換気やエアコンの機械を設けることが考えられます。機械やダクトなどをいろいろと設置すると、運用中は問題ありませんが、空調や換気は途中でやはりメンテナンスが必要になります。
その時に、作業スペースがあると良いですよね。壁に埋め込まれていたり、天井に埋め込まれていたりして外す必要があるよりも、小屋裏に行って上に上がり、メンテナンスを行う方がラクだと思います。職人さんも嫌いませんし、嫌わないということは、工賃も安く済むということなので、非常に良いことです。
屋根断熱のメリットについては、2~3年前に私がお話ししたことよりも、より皆さんが頭に置いておかれると良いかなと思うようになりました。
現在私たちは、小屋裏の新しい空調法に、第一種換気を組み合わせるという取り組みを行っていて、実験的にモデルハウスで試しています。ちょうどこの7月・8月の一番暑い時期に、どのように上手く動作しているか、あるいは改良の余地があるかを、ドキドキしながら試しています。
これがどういうことなのか、興味がある方や、これから家づくりをされる方、全館空調を運用されている方で、「このエッセンスはどういうこと?」と知りたい方などは、ぜひ見に来ていただければと思います。
最後に、何より最も基本的なことをお伝えしておきます。屋根であろうが、天井であろうが、断熱の厚みは十分に取ってください。例えば壁が10cmなら、断熱材の厚みは、倍の20cmは取るようにしてください。さらに付加断熱をする人なら、250mmや300mmほど取っても十分満足できると思います。
このことは、暑い時だけでなく寒い時にも重要です。こうすることで、1年中より快適に過ごせるでしょう。見えない部分で働いてくれる、家の構造・設備という感じです。家が完成してしまうと見えなくなってしまう、地味な部分ではありますが、それは非常に重要なポイントです。ぜひ参考にしてください。