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頭金はどれくらい必要か?

今回は住宅ローンの頭金問題について解説します。

家づくりを考える時に、住宅ローンを利用する方がとても多いですよね。その時に最初に頭に浮かぶ問題として、頭金に関することがあります。頭金はどのように考えたらいいですか?また、どれくらいの頭金が必要ですか?という質問を受けました。

この「頭金はどれくらい必要か」という質問をよくよく考えると、2つの意味で使われることあると思います。

まず1つ目に、頭金はどれくらいの額を用意すれば、借入に関して有利になるのか、あるいは不利になるのかという意味があります。これに関しては、そんなに難しいことではありません。

1つの見極めポイントとして、住宅ローン控除があります。以前よりは控除額が少なくなりましたが、現在は住宅ローンを借りる際に、年末の借入残高に対して上限0.7%を、その年に納めた税金から控除することができます。この控除は13年間続きます。

さまざまな所得パターンがあると思いますが、例えば税金(所得税+住民税)を年間20万円納付している人の場合を考えます。頭金を支払った後の借入額が3,000万円だとしたら、その0.7%なので、21万円が控除されることになります。

しかし、控除は納税額が上限なので20万円ということになり、1万円分の控除額を損することになります。それなら、20万円分の控除で済むような形にするために、借入金額を小さく、頭金をもう少し増やした方がいいのかもしれません。

また、この控除は13年間続きます。だんだん借入残高が減っていくことも考慮して、0.7%の控除がどの程度有効かという点も検討しなければなりません。このような考え方で、どれくらいの頭金を用意すべきかという大体の答えが出てくると思います。

2つ目の見極めポイントとして、金利優遇があります。例えばフラット35では、自己資金が借入額の10%以上ある場合、金利優遇が受けられる制度があります。これはフラット35だけでなく、他の銀行でも同様の制度がある場合があります。頭金の割合によって金利優遇の幅が決まるケースもあります。

頭金をどれくらい用意すると有利か・不利かを考える際には、まずライフプランを組んで試算してみることが大切です。重要なポイントは、住宅ローン控除を13年間しっかりと受けることです。

頭金をたくさん払った方がいいのではないかと考える人は、とても堅実で慎重なタイプです。しかし、お金の問題はきちんと計算すればわかるものです。ですから、あまり怖がらずに試算して金額を検討すれば、その方にとって適切な頭金の額がわかると思います。

次に、2つ目の意味合いを考えます。若いご夫婦が、とにかく家が欲しいという気持ちになったそうで「頭金はどれくらいないと建てられませんか?」と聞いてこられたケースがありました。もっと極端に言うと、「頭金がなくても建てられますよね?」という感じでした。

こういう方にお話しする1つの考え方として、まずは家を建てるためにかかるお金を知っていただくことが重要だと思います。

土地がすでにあって家を建てる人は別ですが、土地から探す人にとっては、土地代、家の建物代、そして諸経費がかかります。諸経費には、登記費用、住宅ローンを借りる際の銀行の保証料、土地の取引手数料、火災保険料などが含まれます。

一般的に、諸経費は土地がある方でも100~150万円ぐらい、土地がない方だと200~250万円ぐらいかかります。もちろん借入の内容によって変わりますが、目安としてそれぐらいは必要です。

土地・建物代をローンで払うのは当たり前ですが、このケースの質問をされる方は、諸経費分も住宅ローンで何とかならないだろうかという考えだと思います。

商品にもよりますが、住宅ローンに諸経費分も上乗せして払うことは可能です。しかしそれでも、完全に現金がゼロで家を建てるのは難しいです。これが結論です。

なぜかと言うと、例えば土地から探す方の場合、気に入った土地に申し込みをする際には手付金が必要になります。通常、土地代の1割が手付金となるので、現金がなければどうしようもありません。

また、住宅会社や工務店と契約する際に契約金が必要な場合もあります。これもすべてが始まる前に一度出さなければならないため、ここでも現金が必要になります。後からそれを住宅ローンに上乗せすることはできるかもしれませんが、当座は現金が必要になります。どうしてもお金がない場合は、親御さんなどに借りないといけないかもしれません。

さらに、家づくりが始まると、今住んでいる所から引っ越すので、引っ越し費用がかかります。また、工事中には祭祀があります。地鎮祭で神主さんにお礼を包んだり、上棟の際に大工さんに差し入れをするのにも、お金が必要です。これらはローンに関係なく現金が必要になるため、現金がなくては家を建てられないということになります。

2番目の質問をする方で「私の年収がこれぐらいなんですけど、建てられますか?」と聞かれたケースがあります。このような考え方も結構乱暴だと思います。例えば、若い方で年収600万円だったらそこそこ貰われている方かなと思いますが、子どもが1人のケースと3人のケースではやはり違います。ケースバイケースで、年収がいくらだからどう、という決め方はできません。別の尺度で考える必要があると思います。

このような質問をされる方には、私はちょっと危うさを感じます。60歳ジジイの説教がましい話になりますが、家が欲しいのはわかります。しかし、現在手元に貯金が全然ないのに家を建てたいと考えるのはちょっと待ってほしいと思います。その前に、果たして自分たちが今貯金ができているのかを確認してほしいのです。

住宅ローンを返す期間は長いです。35年ローンであれば、例えば現在30代前半の人であっても、65歳以上まで支払いが続く計算になります。仮に65歳定年の会社だとしても、定年後にまだ支払いが残っている状態は望ましくありません。年金からローンを払うなんて苦しいことはできません。

そうすると、どこかで繰り上げ返済をするべきなんです。少なくとも65歳で定年になった時には残債をなくして、そこからは年金で暮らすようでないと、危なっかしいですよね。

そのためには、住宅ローンを返しながらも同時に貯金をする必要があります。これは家を建てた後に考えればいいということではありません。私は、家計を適切にやりくりする基本的なスキルだと思います。厳しい言い方をしますが、貯金ができていないのに住宅ローンを借りて家を建てることは、時期尚早だと思います。

説教がましく言っている父ちゃんみたいに聞こえるかもしれませんが、まさにそうなんです。自分の娘のことを思えば、そういう気持ちです。

そして、最近の報道では年金だけで老後を暮らすのは厳しいと言われています。一説では2000万円程度の貯金が必要と言われていますから、ますます貯金が必要になります。今回はローンを返済することだけを考えた話ですが、老後の資金問題も別の尺度で考えなければなりません。

ですから、今回の質問を考える時は同時に、自分たちはどれくらいのペースで貯金できているか、貯金ができる家計のやりくりになっているか、ということも頭に置いていただいて、どのように頭金に取り組むかを考えていただくのが一番健全だと思います。

説教がましい話だと感じられた方がいらっしゃったらごめんなさい。しかし、「良薬は口に苦し」という言葉もあります。もしアイタタッと感じられた方がいらっしゃったら、この話を肴にゆっくりと家族で話し合い、作戦を練っていただければと思います。ぜひ参考にしてみてください。

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