子供部屋を巣立った後も活用する方法
今日は、子どもさんが巣立った後に子ども部屋を上手に使うアイデアについてご説明します。
この話は、もう子どもが巣立った人にはもちろん、これから子ども部屋を含む家づくりを考える方にも頭に置いておいてもらった方がいいと思いました。なので、今日はそのことをネタに解説をしていきたいと思います。活用法についてはあまり深くないというか、こんなのがありますよという感じです。多くの人の意見をまとめたら、大体これに集約されるのではないでしょうか。
1番は、夫婦の寝室に使うことです。ひと歳いったご夫婦は昔みたいに並んで寝るのではなく、それぞれの時間のペースで休めばいいというところもあると思います。それからもう1つが、子どもが巣立ったら夢の書斎にしたい、 あるいは奥さんの仕事部屋にしたいみたいな感じで、書斎にすることです。
3つ目がさっきと被るのですが、趣味の部屋です。例えば音楽をやる人は音楽室とか、映画が好きな人はホームシアターとか、絵を描くのが好きだったらアトリエとか。少し変わったところでは書道を嗜んでいらっしゃって、書道教室をほんの数人だけど集めてやるみたいなことに使うとか。
それから多いのは、子どもが出た後に物置きになることです。みんなそうなっていると思います。収納・クローゼット代わりに使うというところですね。
最後に私が一番思うのはゲストルーム、お客さんの部屋にするというやつです。今日はそのことに関して絡めて考えていきたいと思います。
そもそも子ども部屋は一体どうあるべきか。子ども部屋を作ってしまって巣立ってからというより、これから作る人には大事ですよね。子ども部屋を考える時に一番思うのは、広さとどこに作るかという場所でしょうか。
広さは、ちょっと前まで多かったのは子ども部屋なら6畳は作ってあげたいという意見です。人によっては8畳なんて剛の者もいますが、大体6畳ぐらいが多いと思います。
それが最近、6畳まで必要ないということで、4.5畳でいいんじゃないかとか、私なんかは最近は4畳でいいんじゃないかと思っています。もっと言うと、飯塚豊先生なんかは3.25畳でいいんじゃないのかということもおっしゃっています。
3.25畳はどれくらいかと言うと、部屋の壁の中心寸法の概形で2275mm×2275mmになります。6畳よりもかなりコンパクトなので、3.25畳の部屋が成立するためには子ども部屋の機能を絞らなければいけません。
子ども部屋の機能とは何なのかというと、まず勉強部屋なんて言葉がありますから、学習のための机と椅子ですよね。それから子どもさんの衣類です。自分の服は自分の部屋にかけるなんてこともあるでしょう。それから子どもが読む本とか漫画とか、趣味のコレクター物があったらそういう物を置く所。それから何と言っても寝具、ベッドです。
最後に、さっきのコンテンツと一部被りますが、オーディオとかコンポ。私の子どもの頃はラジカセでしたけど、テレビを置く子もいますよね。ちょっとしたボリュームのあるPC、ノートパソコンなどを置く場所。そういうものが機能としては求められることだと思います。
飯塚先生は3.25畳を成立させるために、3つの要件を満たしましょうとおっしゃっています。まずはこの部屋には学習机を置かないこと。すごいですよね。それから洋服ダンスも置かせない。シングルベッド1個あればいいというのが、飯塚先生の考えられていることのようです。
また、この最小寸法が成り立つための前提があります。それは機能の分離です。まず、子ども部屋に求める機能の中からスタディコーナー。最近流行っていますよね。子ども部屋の代わりに、ダイニングとかリビングとかキッチンの側に子どもが勉強できるスペースを設けるのです。お父さん・お母さんのワークスペースにもなったりするので、そこで家族のふれあいがあってもいいですよね。子どものことを見られたり、相談ができたりするのでいいと思います。
子ども部屋に洋服を置かないので、家族の衣類は1ヵ所に集中させるということで、ファミリークローゼットが必要です。本箱も何も置かないなら、ファミリーライブラリーも別機能にさせなければならないと思います。こういう前提の中で、広さも考えなければなりません。
これらを計画する時に誰が決めるかというと、多くの場合は親でしょう。子どもの希望を聞く人もいると思いますが、大体は親がこうだよと言うものだと思います。そのため、親の願いが子ども部屋に現れるのです。
親の願いとは、突き詰めたら2つだと思います。まずは、子どもを目の届く所に置いておきたいということ。そういう気持ちはありますよね。特にお子さんが小さい時もそうですし、ひと歳いった時に引きこもりにさせたくないという気持ちもそうだと思います。
この2つはある面、目が届くということは引きこもりにさせないというものだから、それなら子ども部屋は必要ないことになりますよね。この相反する視点から、親というのは子ども部屋はどうあるべきかと考えることが多いと思うのです。
ここまで親の立場のベクトルの話をしました。しかし、もちろん主役は子どもさんです。なので子どもの立場で考えることも重要だと思います。その1つが、子ども部屋の寿命問題です。
4〜5歳ぐらいまではお母ちゃん・お父ちゃん、パパ・ママと言って子どもが引っ付いてくるけど、そこからだんだん冒険して離れていきます。そうなってくると、子どもが18〜20歳ぐらいまで家にいるとしても、子ども部屋は大体15年前後の寿命じゃないですか。
私はよく申し上げるのですが、家族ってテンポラリーですよね。定まっていないというか、流動的でどんどん変わっていくと思います。もっと言うと、親と子が共に互いの視線が嬉しいとか愛おしいと感じる季節は、意外と短いのです。
私も、いつでも子どもがパッと振り返って「パパ!」と言ってくれたのは何歳までだったかな、と振り返ってみるのですが、意外と短かったですよ。子どもからすると親がいつも側にいてほしいという気持ちもありますが、そうじゃない気持ちもあるということです。
ここで飯塚先生が名言をおっしゃっています。「家族には実は2つの大きな安心が必要なんだ」と。この分類は秀逸ですよ。家族はまず、一緒にいることで育まれていく安心が必要ということ。それはそうですよね。安心したから一緒にいて、それで結婚したわけですから。
一方で、いつでも1人になれる保証があるという安心感もあるとおっしゃっています。これは子どもに限らず、自分もそうじゃないですか。女房と口喧嘩して気まずくなったら、逃げ込める所があるといいですよね。お父さんも子どもも一緒なんです。
児童のことを研究している研究家によると、子どもは6歳から縄張りを作るそうです。なんと言っても、子どもは親に怒られたり、兄弟ゲンカしたりして、どこかに逃げ込みたい時があります。その時にどこにも居場所がないと、とても辛いのです。
飯塚先生は、「子ども部屋なんて親から思い切り離してあげなさい」とおっしゃいます。親とすれ違わないぐらい距離がある方がいいとまでおっしゃっているのです。
恥ずかしいのですが、私は結構べったりするタイプです。子どもがいつまでもかわいくて、ダメなお父さんなのです。側に置いておきたい、いつも目に入れておきたいと思ってしまいますけど、子どもは迷惑ですよね。そういう視点で子ども部屋を考えてほしいのです。
そういう前提条件を満たした上で、子どもが巣立った後にどうあるかというところがポイントかなと思います。最近、こういう間取りを作りたい人が多いですよね。例えば男の子2人兄弟だったら、ドーンと大きい部屋を作っておいて将来ドアを2つ作って真半分に分かれるようにしておくような間取りです。これは私もよく勧めます。
でも飯塚先生は「分けるんだったら最初からしておいたら?」とおっしゃいます。飯塚先生は東京で育ったみたいですが、「兄貴と同じ部屋はかなり嫌だった」と。
そういうことから、飯塚先生の話を私はこう理解しました。大きい部屋は作るんだけど、最初から区切っておく。逆に言うと後から区切るんじゃなくて、区切っておいて後で簡単に取れるようにしておきなさいということかなと。
最初の活用法の話に戻りますが、広くなった部屋はゲストルームに最高だなと思っています。さっきも言いましたが、私は子どもに引っ付きたい父親です。将来の密やかな夢を正直に告白すると、娘が旦那さんと孫を授かってくれたら孫を連れて時々帰ってきて、夜ご飯を一緒に食べて「酔っぱらってるから泊まっていきなよ!」「おじいちゃんの家にはゲストルームがあるから」みたいな。こんなのが夢です。ベッドも設えてあって、広いので何も気にせず寝られます。
例えば私の娘は2人姉妹なので、2つの家族が雑魚寝するみたいなこともいいですよね。昔、私自身もいとこ同士で雑魚寝して楽しかった思い出があります。うちの娘の子どもたちが、「じいちゃんの家に泊まって雑魚寝して楽しかったな」とか言っているのを、亡くなる寸前の私が聞いて喜ぶ。そういうことができれば、すごく幸せだなと思うのです。
夫婦の寝室もアリだし、書斎とか趣味の部屋もアリだけど、もし子ども部屋を作られるのならば、将来それがゲストルームになるというのはいかがでしょうか。これは森下的提案ですが、ぜひ検討してもらえたらと思います。
最後に、飯塚先生がこの話をひっくるめて「家族でいつまでも仲良くいたいと思うなら積極的に離れなさい」とおっしゃっています。深いですよね。こんなことを思って設計する人ってあまりいないと思います。
家族にはいつか別れがあります。悲しいけど、人の成長のプロセスとして必要なものが絶対に自分の家にも10〜15年後に来るのです。そのことも踏まえて子ども部屋を考えてもらえたら、いい家になると思います。ぜひ参考にしてみてください。