スイッチの変遷とおすすめのスイッチ解説
今日は、住宅におけるスイッチの変遷と、おすすめのスイッチについて解説します。
最近は、スイッチにもいろいろ面白い物が出ています。インテリアのアクセントにもなる、おすすめのスイッチをご紹介します。スイッチに関しては多くの専門家の方が解説されていますが、私は60歳のオヤジなので昔話から始めていきますね。
私が物心ついた時、どういう風にスイッチを認識したかというと、二股ソケットです。昔パナソニック系のハウスメーカーで働いていたので、松下幸之助翁の話は何回も聞いたし、私の父親の代ぐらいまでは幸之助さんを尊敬している人が多かったと思います。その幸之助さんの成功物語である、二股ソケットを作って大阪の街を席巻した話を知っている方も多いとは思いますが、若い人は実物を見たことがないのではないでしょうか。
裸電球も今はあまり見ることがありませんね。典型的な漫画に出てくるような電球ですが、あれが二股になったソケットを発明したり、二股が三股になったりしました。
特に三股はコンセントのアタッチメントがあって、キュッと巻き込んだらコンセントの差し口になるのです。昔のうちのおばあちゃん家は、電球から電源を取ってアイロンを掛けたりしていました。それぐらい、昔の木造家屋には電気の設備はありませんでした。50年以上前の家は大体そんな感じです。
その中で、今の和室の電気にも名残が残っていますが、プルスイッチと言ってカチッと引っ張るスイッチがありました。これが私にとってのスイッチの原体験です。
今のスイッチって全部壁に埋め込んであるじゃないですか。でも、私の子どもの頃のスイッチは露出でした。線が壁に貼ってあるのが普通なのです。又釘で線が留めてあって、グレーの線をいかにまっすぐ取り付けるかが大工さんの心意気みたいなところがありました。このスイッチ自体は今見てもかわいいスイッチで、使い方はあると思いますが、昔は色気がないと言われることもあったものです。
一方、もっと古い家に行くと、配線も露出でした。今は配線が天井裏や壁に入っているのが当たり前ですよね。白い碍子(ガイシ)という絶縁体の瀬戸物を経由して、巻きつけて電線を送ることをしていました。
昔の電線って今みたいな塩ビのしっかりしたコーティングじゃなくて、布の網のガーゼみたいなもので包まれていたと記憶しています。だから脆弱で、万が一ネズミがかじって電気がショートしないように、絶縁体で対策していたのです。このような風景が、プルスイッチや露出のスイッチをやっていた時代の、電気のスイッチの歴史です。
ちなみに、有名な京セラは京都セラミックという会社です。先日亡くなられた創業者の方は、当時家庭用とか産業用の碍子を作って、京セラという会社ができたそうです。今も送電線に碍子は付いていますが、すごく耐久力のある絶縁材ということで歴史があります。
何が言いたかったかと言うと、電気の世界も一周回って、ノスタルジックな原点に戻ってきているところがあるのです。今日はそういうスイッチの種類についてご説明したいと思います。
パナソニックさんのシェアが多いと思うので、パナソニックさんの商品シリーズでご紹介していきます。今使われているのは、フルカラーと言われるシリーズが一番多いです。15年ぐらい前の建物は大体これです。
フルカラーは白い樹脂の丸みのあるツテッとしたプレートですが、同様のシリーズでソー・スタイルというカクッとした意匠性があって素材感の出るものもあります。これは今わりと使われているのではないでしょうか。
最新のスイッチプレートは、白い樹脂じゃなくて新金属とかステンレスみたいなものでやるのを、建築家の方はオススメしています。白い樹脂のプレートは時間が経つと黄ばんできて安っぽく見えるのです。それを新金属とかステンレスでやると経年劣化が少ないし、古びても素材として味が出るので、それも今はオススメかなと思います。
スイッチの機能とは電気を入れたり・切ったりすることですよね。スイッチの表面をワイドにしてそれをやりやすくする、いわゆるユニバーサルデザインで一世を風靡したのが、コスモシリーズです。スイッチも大きいし、表示も例えば洗面所とか台所と入れられます。
「どれがどのスイッチ?」という経験があるのではないでしょうか。家の人は頭に入っているからいいけど、たまに来た人が「どれですか?」みたいなこともありますよね。コスモには表示が入るので、見たらすぐわかるし押しやすいのです。
小さい子どもが手を伸ばしてスイッチを押す時も、プレートが広いのでパチンとスイッチを入れたり切ったりすることができます。お年寄りの方もやりやすく、非常に体に優しいです。
コスモも流行りましたが、今は樹脂に関してもうちょっとデザイン的に素材感を出してインテリア性を高めたいということで、できたのがラフィーネアシリーズです。
これがいいのは、マットカラー(つや消し)でホワイト・グレー・ベージュ・ブラックがあって、結構カッコいいことです。意匠性の高い設計をする先生も、ラフィーネアシリーズを普通の部屋に使っているのをよく見ます。
例えばお子さんの部屋はコスモシリーズでいいし、リビングや玄関周りなど人目に触れてインテリア性が高くカラーリングもこだわりたい時は、ラフィーネアみたいなものを選んでもらえるといいと思います。
これらはごく一般のタイプですが、ここからは好き者の世界になります。私が最近思い出すのはトグルスイッチです。子どもの頃大好きでした。なぜかと言うと、ウルトラマンに必ずトグルスイッチが出てきたからです。科学特捜隊の本部にはコンソールパネルがあって、トグルスイッチをパチパチやっているのを見て、子ども心にカッコいいと思っていたものです。
トグルスイッチには郷愁があります。ノスタルジックだけどスイッチとして面白いところがあって、ある面操作しにくいところもあるんですけどインテリア性が高いので、店舗の世界ではこれを結構やるんです。
このことをみなさんに解説しようと思ったきっかけがあります。以前の動画でハーフミラー電球を説明しました。電球だけど電球の上半分が鏡状になっているものです。電球って普通は丸い先が明るいじゃないですか。ハーフミラー球は鏡で受けていて、光が根元の方に返るという電球です。
そんなに高いものじゃないけど、意外に壁際に付けると影がいい感じで付いてカッコよくなります。こういう電球にフルカラーのスイッチプレートを付けるのはどうなのかというところがあって、「それに似合うものはないのか?」ということを考えていました。
一方で先日、「書斎にマリンランプを付けたい」という方がいらっしゃいました。マリンランプは船舶照明と言って、船に付けるやつです。客船の内部造作って味わい深いものが多いですよね。船の中の造作はとても難しいです。客船は長いこと乗るので、その設えは重厚でカッコいいものが多いのです。
最近の家づくりは、素材を活かす家づくりを望む人が多いですよね。例えば塗り壁にしたいとか、無垢の木材で作りたいとか、コンクリートの打ちっ放しを活かしたい、石を貼りたいとか。全部素材じゃないですか。
ああいうものに樹脂で作られたプレートみたいなのが似合うかと言うと、ちょっと力負けするみたいなところがある中で、今日ご紹介したいのが4つの素材でできているプレートです。
一番僕がカッコいいと思っているのは、ゾルボンヌというメーカーさんが出されているセラミックプレートです。白い素焼きの陶器みたいなプレートで、さっき言った露出配線の碍子の白い佇まいがプレートになっています。スイッチは泣かせのトグルスイッチで、しかも真鍮製。ネットでも買えると思うので、興味がある人は見てもらえたらと思います。これがマリンランプとドンピシャに合うのです。
ゾルボンヌという会社はユニークなプレートをいっぱい作っていて、ダイカストプレートというものもあります。アルミの鋳物です。アルミのインゴットの削り出しみたいなのもありますが、アルミを溶かして鋳物でやるのもいいですよ。
鋳物って表面がザラザラとしていて、マットな感じで適当な重厚感があります。しかもワイドスイッチなのです。意匠性もラフィーネアと似ていますが、素材感がグッと出ていて高級感も出ます。
例えば書斎のテーブルをブビンガのアフリカケヤキみたいにして、前に重厚感のある堅木を張ったみたいな所に、フルカラーの樹脂プレートスイッチは、合わないですよね。ここにダイカストプレートを付けてもらえると、男心がくすぐられます(もちろん女性でも好きな人もいると思います)。
新金属のプレートでも、クロームメッキでトグルスイッチをかますとカッコよくなりますよ。気分はウルトラ警備隊みたいな感じです。あとはアメリカンインダストリアルという感じで、木のプレートに真鍮製のトグルスイッチをかますような商品があったりします。
一般的な汎用メーカーのパナソニックさんみたいに、入手しやすいものもあります。ただ、一点豪華主義というか自分の世界観の中で素材感溢れるもの、例えばアイアン支柱のテーブルみたいなものにも似合うと思うので、こういうのを知っておいてもらえるとインテリアは面白いです。何せスイッチは最初に決めるとなかなか変えないので、最初にこだわると楽しいかなと思いました。
よく「昔付けたパナソニックのプレートが付いているけど、交換できるんですか?」と聞かれますが、できますよ。現代の規格にちゃんと合わせて作ってあります。
ただ、素人工事は止めてくださいね。電気工事は、事故が起きないように基本的には有資格者に工事をやっていただく必要があります。よく他の動画を観ると「DIYで簡単にできる」と言っていますよね。簡単にできる部分もありますが、安全面で言うとできれば新築時・リフォーム時はプロの方にお願いしていただきたいということを最後にお願いして、解説を終わります。ぜひ参考にしてみてください。