24時間連続暖房は得なのか?損なのか?
寒い季節になったらよくされる議論で、24時間連続暖房した方が得なのか・損なのかについて解説をします。
一言で申し上げまして、高気密・高断熱をしっかり設計・施工をされている住宅に関しては、エアコンを24時間連続運転した方が光熱費はお得になるというのが1つの通説というか、結論になります。ただその言葉だけを鵜呑みにされて、拡大解釈をされている方もとても多いので、今日はその辺の勘所みたいなところを説明できたらと思います。
昔は家の性能をQ値で表すことが多かったです。最近は外皮性能、いわゆるUA値という言い方で評価することが多くなってきましたので、両方の数値で説明していきます。
例えば断熱等級4と言われてるQ値2.7・UA値0.87ぐらいのお家だったら、恐らく間欠運転の方がお得かなと思います。大手ハウスメーカーさんだと、大体Q値1.9・UA値0.56ぐらいの性能で、いわゆるZEHレベルの家なので、間欠運転の方が得というか割安になる印象があります。
Q値1.6・UA値0.46、いわゆるHEAT20のG2グレードだと連続運転と間欠運転が拮抗してくるでしょう。ほぼニアリーですね。さらに性能が良くなってQ値1.4・UA値0.4、松尾先生がよくおっしゃっているG2.5ぐらいのお家なら、連続運転の方が得になると思います。
ただ、二元論で得か損かじゃなくて、家の性能によっても判断は分かれてくるところがあります。その上で影響が大きいものが冬期の日射取得、つまり日当たりです。これがちゃんと取れるか取れないかがとても大きいです。
南側に1600mm*1800mmぐらいの窓があると、それだけでこたつ1個分ぐらいの熱が取れると言われています。つまりそういう窓がたくさんあれば、2000〜3000Wぐらいの熱エネルギーが取れますから、グッと話の条件が変わってきます。
これは暮らし方にも関わってくることなので、大きい窓があっても日中にカーテンを閉めたりシャッターを閉めたりすると、太陽熱の恩恵を受けられないので運用方法が変わってきます。なおかつ家に住む人がずっといらっしゃるのか、例えば子どもさんとかお年寄りとか専業主婦(夫)の方みたいに日中にずっといるのか、そうでないかで変わってきます。
昔の日本の間取りは、間仕切りで区切ったり、建具で仕切って細切れにしてる家が多かったので、連続暖房をすると言っても全ての部屋にエアコンを付けて全てを回すのはもったいないです。ましてや断熱性能が良かったら余計にもったいないと思います。
そういうところは、どこか広い部屋1室でエアコンをつけておいて、建具を開け放してワンルームみたいな感じで使えれば評価の仕方が変わってきます。大きい空間ならそれなりの運営になるし、小さい空間で断熱性能の高い家なら暖房がムダになることが多いです。ちょっとで暖かくなるから、エアコンを切っても太陽の光が入るからそれで良いのでは?ということになります。
間欠運転で言うと、1階の北側の1室だけを暖房する時は、連続運転をする時でも外側には断熱されているので良いですが、部屋内の方が寒い部屋だとそこは無断熱なので、冷輻射で熱伝導してきます。すると内側から冷やされるので、エアコンはずっと動いていていっぱいエネルギーを使ってしまうことになります。
なのでどれぐらいの性能なのか、日射はどういう取り方を日中にしているのか、そして暮らしぶりは広い空間をみんなで使っているのか、小さく仕切っているのかで分かれてきますから、その中で損か得かを考えていただくことになると思います。
その上で、床下エアコンを使うような運用であれば、日没して太陽が陰ったら床下エアコンをつける。夜中じゅうつけておいて、朝方に日が昇る時までつけておく。日中は日射取得の一部と床下の空間に溜め込んだ蓄熱したものを放出してやるということで、ほぼ一日中、気持ちいい空間にすることができます。エアコンはずっと回しているのではなく、半分だけ回してる感じですね。こういう形をオススメします。
松尾先生がしきりに言われていて、かつ、実践量が多いG2.5ぐらい、つまりUA値0.4を切る建物なら、日没して寒くなってきたら暖房をつける。寝る時は切っておいて、明け方の起きる2時間ぐらい前からタイマーをセットしておく。このやり方の方が、連続運転ではなく全体を使った間欠運転が一番の省エネになります。
こんな感じで冬場の暖房の運用を考えていただいたり、これからお家を建てられるならどれぐらいの断熱・気密スペックが必要なのか、ということを頭に置いておいていただくと、快適で暖かい家はできると思います。