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家の設計は一級建築士に頼んだ方がいい?

今回は、住宅の設計を一級建築士に頼んだ方がいいのかどうかをテーマにお話しします。

あるお客さんに聞かれました。「住宅の設計は一級建築士にしてもらった方がいいですよね?」と。「どういうことですか?」と聞いたら、我々の会社だけじゃなくて他の会社さんからも提案を受けられていました。その提案してくれた方が二級建築士のライセンスを持った設計士さんだったのです。出てきたプランを見て、しっくりこなかったのでしょう。それで「一級建築士の人じゃないと僕たちの理想の家づくりはできないんですかね?」という問いかけになったのだと思います。私も一級建築士の1人なので、建築のライセンスとはどういうものかということを、ニュートラルに解説していきたいと思います。

木造住宅を設計するには、3つのライセンスがあります。1番目は一級建築士、そして一番多いのが二級建築士です。3つ目に木造建築士という木造建築に特化した資格があります。何が違うかと言うと、建築計画や建築の法規という学科があり、特に木造の構造・施工という学科があって、この学科で一定以上の点が取れるかということが1つあります。その後、実技として設計製図をするとライセンスが下ります。二級建築士も、言ってしまえば学科内容は一緒です。

一級建築士だけは、学科の中に環境・設備という項目が1つ増えます。その分、やっていることに関しては高度な部分もあります。一級・二級・木造の建築士において、何が一番違うかというと、設計する時に扱える建物の大きさや規模が違うのです。そういう意味で言うと、一級建築士に縛りはありません。高さが13m超える高いビルや、軒の高さが9mを超えるような鉄筋コンクリート造・鉄骨造(S造)と言われてるもの。この延べ床面積が300㎡(約90坪)を超えるものに関しては、一級建築士しか設計できないということです。

二級に関しては規模がもうちょっと小さくて、300㎡(約90坪)以下です。もしお客様が90坪以下の家を建てたい、かつ、3階建てまでの木造建築を建てたいんだったら、二級建築士にお願いすればいいのです。木造建築士に関しては、3階建ての木造建築はダメです。2階建てまでで延べ床が300㎡未満、100㎡から300㎡までと、広さ・大きさに関して規定をされています。

ライセンスの違いとしては、これだけあるということです。特に設計製図に関しては、基本的に手書きです。私の学生時代は手書きなんか当たり前で、T定規・三角定規・ドラフターという製図マシンで書いていました。でも今の学生さんは、CADを使う方が多いと思います。

恐らく建築の実務は、ほとんど今はCADベースですよね。3DCAD・2DCADとかいろいろあります。今の実務をやっている人たちの中には手書きが苦手な人もいて、限られた時間でいろんなことをまとめて手書きすることに苦しんでいる人もいるはずです。CADは図面を描いて図面のバランスが悪いから少しこっちに動かす、みたいなことが簡単にできます。手書きだと消しゴムで消して書き換えなければならないため、最初に建物の枠組みがちゃんと見通せていなければ、時間内に書くことはかなり大変です。そういう違いがあると思います。

そうなってくると「1級がいいの?」ということになりますが、個人的には、実務をたくさんこなしている二級建築士の方が、実際は優れた人が多い印象があります。これは異論はないのではないでしょうか。

一級建築士の資格は、なかなか勉強しないと取れません。平たく言うと、例えば大学を卒業するとか大学院に行って博士号を取るような人って、すごく勉強しているとは思いますが、一級建築士の学科や製図の勉強はまた違うのです。

例えばペーパードライバーという言葉があるじゃないですか。免許の試験は通ったけど、実際の運転は下手っぴというやつです。極端に言えば、昔の田舎なんかでは高校生ぐらいの悪い男の子がお父さんの車を勝手に運転していました。それも田舎だから、広い原っぱでいつも運転していて、運転技術は結構あるのです。その代わり免許を取りに行ったら、全然交通法規とかがわからないから免許が取れないという子がいます。ただ、運転ということで考えたらそっちが上だったりするのです。

ライセンスを取るのは確かに難しいけど、取っているからと言って実務ができるかということはまた別です。常識で考えたらわかると思います。お医者さんの世界で言ったら、お医者さんにも医師免許というのがありますよね。では、医師免許が取れたら人の命が救えるか。そんなに単純じゃないですよね。中には天才的な人もいるかもしれませんが、実際は医師でセンスがある人だって、実務経験がないと本当の意味の高度な治療なんてできないわけです。例えば脳の手術とか心臓の手術とか、子どもさんの心の問題の高度なケアをするって、本を1冊読んだからってわかるようなものではないじゃないですか。そういうところがあるということです。

一級だからどうとか、二級だからどうかという時に、「一級建築士を取った人は真面目に一生懸命勉強してえらいね」「1つの通過儀礼を乗り越えた努力家なんだね」という評価はOKです。だからと言って、二級だからダメということはありません。二級で実務をバリバリやっている人は、超多忙で力がある人が多いので、意外と資格取得試験の勉強に時間を取れないという人もいます。とても力はあるんだけど、50代で二級建築士の人とかもザラにいるのです。そういう風に見てほしいです。

建築士の資格という中の優劣よりも、まずはその設計士の方の実務経験がどの程度あるのか、そして専門は何かです。例えば一級建築士でも木造建築が全くわからない人がいます。あるいは木造建築には詳しいけど、鉄骨造とかRC造はわからない人も多いです。お医者さんと一緒です。脳外科もあれば小児科もあって、それぞれに同じ医者だけど違いますよね。

そして実務経験の中には、ネットワークを持っているかどうかも大事です。例えば構造計算というのは、学科を取れば構造に関しては勉強しますが、これで合格したからと言って高度な構造計算ができるかと言うと別です。お医者さんの世界でも、検査したり薬を調剤したりする人が別であるように、お医者さん1人で医療行為は成り立っていませんよね。検査技師で見立てがよくできるとか、高度な機械を操れる人の力を借りながら診断をやるじゃないですか。調剤師の方の力を借りながらお薬を出してもらいますよね。 そんな感じで建築士にも、構造建築士と言われるスペシャリストがいるのです。その辺とのネットワークがちゃんとあるかも重要です。

全ての人が万能にできたら、それに越したことはありません。松尾先生みたいにすごくできる人もいらっしゃいます。ですがそうではなく、ネットワークをしっかり持っているかも重要だということを知っておいてください。

プラスして私が言えるとしたら、その設計士さんの生活経験です。例えば独身なのか家族がいるのか、家事をするのか。草木・動物の世話をしたことがあるか。こういうことの方が良い設計の差を生むと思います。それに何と言っても価値観です。例えば友人の小暮さんという社長はキャンプや車が好きです。私から言わせれば変態ですけど、世界観が広い人というのは思わない引き出しを持っているので、やっぱりいい設計をしてくれます。

そして何より一番大事なことは、相性だと思います。コミュニケーションして話しにくい人には、いくらすごい設計をしてくれても、注文を言いにくいのではないでしょうか。「私はこうしたい」と言って「それは止めておきなさい」と言われても、「私はこういう思いがあるんだ」と言ったら「わかった、それを優先しましょう」と言ってくれる人じゃないと、自分の家にならないと思います。スピード感や気が合うとか、馬が合うとか何でもいいです。そういうことを含めて、建築士の方を評価してあげてもらえたらと思います。

最後に繰り返しになりますが、一番大きいものは実務経験です。どれだけ真剣な思いを繰り返したか。私たちの世界では量稽古と言いますが、どれだけの量をこなしたかということは、何よりの実力・実績になります。そこの部分を一番に評価していただいて、その上で一級を取っているということはよほどの努力家ですから、それは2重丸・3重丸で評価をしてあげてもらえたらと思います。

ぜひ参考にしてみてください。

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