住んでからお金のかかる家とかからない家を分けるポイント
今日は、住んでからお金の掛かる家と掛からない家を分けるポイントについて、お話しします。家を建てて、住み始めてからお金が掛かる家と掛からない家があるとしたら、お金が掛からない家を建てたい。家づくりを考えられる方は、誰しもそう思われるはずです。その2つを分けるポイントについて、基本的な事を解説したいと思います。
住んでから掛かるお金とは何なのか。その正体をまずイメージしましょう。多くの方はこうした年表を作られるので、僕も作ってみました。家は5年ごとの節目に、更新しないといけないものが何かしらあると思います。新築時を0円として、家の更新(補修など)に掛かる費用を、50年先まで5年ごとにプロットしてみました。
今回のケーススタディは、30坪2階建てぐらいの木造住宅で、サイディング張り・コロニアル屋根という想定です。プロットの軸には様々なテーマがあります。これは意外かもしれませんが、防蟻工事というシロアリ対策を5年ごとにしないといけません。それから外壁、屋根(トユ)、そしてベランダの防水。これらは外装と言われる部分です。内装も50年の間には何かしら更新しないといけません。そして必ず付いてくるのは設備です。設備は、水回りのキッチン・浴室・洗面所・トイレ・給湯設備などいろいろあります。それから、無くてはならないのが空調機(エアコン)。暖房機で言うともっと他の物もあります。
こういう物に、いつ頃にどれくらいの費用が掛かるのか。建てる場所の地域性や業者さんによって、安い・高いはあると思いますが、ざっくりと言っていきます。防蟻工事は、5年ごとに15万円ぐらいの費用が掛かると見通しをしています。5年ごとにずっと掛かります。外壁に関しては、15年後までには外壁の塗り替えが必要になります。コロニアルの場合はコロニアルを塗らないといけません。もしベランダがFRP防水だったら、防水工事のリプレイスをする必要があります。これが15万円ぐらいです。給湯器もエアコンも当たり・外れがありますが、10〜15年ぐらいの間には交換が発生するかなと思います。
次に大きい節目が30年です。15年・15年で更新していくというイメージになると思います。30年目には、ひょっとしたら屋根替えや内装工事が必要になるかもしれません。なのでここでは多くの費用を見積もっています。「内装が30年でそんなに悪くなるの?」と思う人もいるでしょうか。例えば建具が壊れたり、カラーフロアみたいなウレタン塗装の床であれば、表面がモケモケになったりします。そうなると、このままだと良くないということで、上に何かを張るか張り替えするかを検討します。それをするならクロスも全部張り替えようかということになるので、これは最低限必要かなと思います。
30年も使ったら、キッチンやユニットバスも傷んできます。トイレも壊れると思います。ウォシュレットはもっと早く壊れるかもしれません。少なくともここで替えないといけない感じです。洗面所もすごく汚くなって、古臭いから替えようということになります。給湯器とエアコンも必ず絡んできて、このように費用の移り変わりがあります。これらが、住んでから掛かるお金の中で、大きなウェイトの部分だと思います。
家の更新にこれほどのお金が掛かる中で、これを少なくするか無くすか。もしくはピッチを長くするか。15年で替えるものを20年まで持たせたら、それだけ使える期間が長くなって安くなりますよね。それで考えると、各テーマごとに、お金が掛からない家にするための方策があると思います。
まず、シロアリに関してです。木造である限り、ベタ基礎でなるべく虫が来ないように対策しながらも、防蟻工事はやっていくべきだと思います。シロアリが嫌がる薬は、溶剤系と無機系の物とに分かれます。無機系で代表的な物だと、ホウ酸系のエコボロンとかがあります。溶剤系は化学反応を起こして薬の効果がなくなっていきますが、ホウ酸系は水が侵入して流れることがない限り、防蟻効果が残ります。「上手に使えば半永久的に使える」と言う人もいらっしゃるぐらいなので、それでコストが圧縮できますよね。無機系(ホウ酸系)の防蟻工事は高いですが、50年に渡ってこれだけ費用を掛けることを考えたら、これがコストカットになりますからオススメです。
サイディングの寿命は大体15年と言います。これを例えばガルバや塗り、木張りにすると、15年以上持たせることができます。ガルバは耐久性が売りですし、塗りによっても塗る素材によって耐久性が変わります。木張りも結構強いです。よくハウスメーカーの営業マンで、「木を張ったら腐る」と言う人がいるそうです。例えば田舎の古いお寺で、50年ぐらい前に張った杉の板をそのままにしている所って、見たことありませんか?もちろん雨の当たりが酷かったり、たまたま腐ったりしている部分もありますが、全部がダメになっている所ってあまりないと思います。それぐらい木張りって強いです。もちろんテイストの問題もありますが、そういう選択肢もあります。
同じくコロニアルも塗り替えは必要ですが、塗り替えの頻度が短くて済むガルバや瓦だったら、塗る必要はないです。「上手に使えば50年ぐらい持つ」ということも聞くので、そういう物を選んでもいいと思います。ベランダに関しては、作らないというのも手です。FRP防水がとても多いですが、FRPじゃなくて金属防水でやるのもいいと思います。ちょっと高いですが、耐久性が違いますから。金属防水は、30年経ってもほとんどなんともない家が多いと思います。ステンレスだったらもっとです。普通の鉄板の金属防水でも強いので、ベランダを作るんだったら金属防水でやると、住んでから掛かるお金はグッと減ります。
内装や設備に関しては、新建材より無垢の素材の方がいいと思います。床なんかは典型です。無垢の木は、30年経つと傷まみれになっている場合もありますが、ちゃんとオイルを塗ったり手入れしてあげたら、飴色になったりしてすごくいい感じになります。これからが一番いい時みたいになるほどです。カラーフロアのような新建材系のフロアは、張り替えか、上に増し張りするかになります。
トイレはシンプルにすればもっと長く持つ場合があります。普通のシンプルな洋風便座は、ハンマーで叩かない限り壊れることはほぼありません。パーツも比較的長く持つし、シンプルな作りなので代用が効いたりします。ウォシュレットはすぐに壊れます。僕もウォシュレットは欲しい派ですが、なくてもいいと言う人だったら、そんな選び方もあると思います。
お金を掛けないために、素材の力を利用する手はあると思います。これまでにたくさんの洗面ユニットを交換させてもらってきましたが、使えなくなるというより、みすぼらしくなるから替える人が多いです。素材には素材の力があって、古びるけど味が出るので、このまま使えばいいとなります。水栓の穴があれば、水栓だけを交換することもできる。水栓だけを替えるのと、ユニット全部を替えるんだったら、値段が違うのは決まっていますよね。
次が給湯器です。どんな給湯器設備でも壊れるものは壊れます。ランニングコストの視点で考えた時は光熱費が大事です。例えばガス給湯器とエコキュートを比べたら、エコキュートの方が絶対に光熱費は安くなります。エコキュート自体は高いですが、その差額が光熱費でカバーできたら、エコキュートの方が上ということになる。多くの場合はそうなると思います。使い方の頻度もですが、お湯の作り方をどういう風にするかもすごく大事です。これはイニシャルコストとして考えてますが、光熱費としてのランニングコストを含めて考えてもらえたらいいんじゃないかと思います。
そして、エアコンにお金を掛けないための一番のポイントは、エアコンの数です。例えばリビング・メイン寝室・子どもさんの個室2つ・和室も付けるんだったら、4〜5個ぐらいエアコンを付けることになる。15年ごとに替えると5×2とか5×3になっていくので、それだけお金が掛かります。これを1〜2個の空調機器でやれたら、安くなりますよね。私たちが小屋裏エアコン・床下エアコンをオススメしている理由は、1台でちゃんと全部が冷えて(暖かくなって)快適ということもそうですが、エアコンの数を絞れるという点でオススメしている部分もあるんです。また、台数が少ないということは、光熱費も少なくなります。
さっきの屋根の話に戻ると、屋根は太陽光発電との相性も大事だと思います。例えば、コロニアルの屋根に太陽光パネルを後付けすると、貫通問題があって防水面で嫌がられる。ガルバだったらキャッチ工法ができるし、瓦だったらソーラーシステムを載せるための専用の瓦がある。こういうものを使って太陽光との相性を良くしていく。
太陽光を使うということはすなわち、給湯との相性がすごくいいんです。もちろん全館空調との相性もいいです。夏場の冷房をする時に太陽光発電をすれば、日中に冷房を我慢しなくてもいいということになります。この辺りも、お金を掛けないことに繋がってきます。特にこれからは光熱費が上がり放題の時代です。光熱費マネジメントができる家になっているかどうかは、お金が掛からない家を作る上で重要です。
私がプロットした形で、30年後という比較的近い将来でざっと計算しても、家の補修には1200万円弱ぐらいのお金が必要になる。びっくりですよね。30年で考えたら、維持管理費に年間40万円を貯金しないといけないんです。月に33,300円は貯金していかないと、30年後の補修費用が出せないことになります。
家づくりをする中で、お金を掛けるのが怖いと思っている人は「住宅ローンがいっぱいになるのは心配」「返していけるかな?」と言うことが多いです。身も蓋もない話に聞こえるかもしれませんが、住宅ローンを返す心配は最低限の話で、同時に保守管理のために貯金ができるのかが大事です。その貯金をするためには、キャッシュフローを改善しないといけません。断熱スペックを上げて、お湯の作り方を考えて、空調の方法を考えて、太陽光発電も利用して、光熱費をあまり使わないようにする。そして使わなかった分を貯金していくというマネジメントをしていかなければなりません。
家づくりには、何を選んだらいいか・どれぐらいのコストを掛けたらいいかだけではなく、お金のマネジメントも含めてやってほしいです。ビジネスの世界では絶対優位の戦略という言葉があります。各論でシロアリ・壁・屋根・素材の力のことなど、いろいろ言いましたが、それは絶対に得だしうまく行く戦略じゃないかと個人的には思っています。どうしても目先のお金に心が揺らぐと思います。しかし、長い目で選ぶことで絶対優位の戦略に繋がるということを頭に置いておいていただいて、家に住み始めてからお金が掛かる問題について吟味をしてみてください。