小屋裏エアコンのよくある5つの失敗
最近、同業の方から小屋裏エアコンのポイントについて教えてほしいという話が続いています。その際に設計図を見せていただくのですが、注意した方がいいところがいくつかあるので、今回はそれについて解説をします。
小屋裏エアコンは屋根裏にエアコンを設置して、その空間を冷やして冷気を家全体に供給して空調を図るというやり方です。松尾先生をはじめ、いろんな知見のある先生方が惜しげもなく小屋裏エアコンのノウハウを公開されていますよね。それを見様見真似でやられているようですが、それはこうした方がいいですよ、という点に特化してお話しをします。
まずは屋根裏の断熱です。天井断熱ではなく屋根断熱にします。屋根断熱で小屋裏を確保するので、その空間を空調しても冷えやすいわけです。だから屋根断熱の性能でうまくいく・いかないが左右されるのはわかりますよね。ただその屋根断熱の性能が、意外とそんなものですか?というぐらいの性能でやっている家が多いです。
屋根は太陽によって焼けるほどの熱が入ってくるので、グラスウールなどの繊維系の断熱材であれば、熱抵抗値で考えるなら最低でも屋根の厚みは20cmはないとダメです。例えばネオマフォームみたいなフェノール系の断熱材ならもう少し薄くてもいいと思いますが、それでも10cmぐらいの厚みはないとダメでしょう。それ以下の断熱になると、実際に効果は出るのかな?という気がします。なのでまずは屋根の断熱はしっかり取ってください。これは絶対です。今はUA値で評価する傾向があるので、屋根があまり強くなくても全体で数値が出るということがあります。ただ壁をいくら厚くしても、小屋裏にダイレクトに効くのは屋根です。この屋根が壁並の断熱だったら弱いです。これは注意をしてください。
次が日射遮蔽です。小屋裏エアコンはごく小さいエネルギーで家全体を冷やすので、エアコンの効率を上げる必要があります。その時に一番邪魔するものが太陽の光です。小屋裏エアコンばかりに囚われて南の太陽の日差しカットを疎かにすると、家は冷えません。
冬は日射取得で家を温めるぐらいなので、日射とカットしないと冷房が効かないのはわかりますよね。例えば庇がちゃんと出ていて、日射をカットできるようになっているとか、シェードを付けてカットするみたいなことです。あるいはヘチマやアサガオを植えて、グリーンカーテンを作るみたいな感じですね。これらがないと、効きにくくなります。これも忘れず絶対にやってください。
次に空気の流れです。小屋裏エアコンはまず2階のフロアを冷やします。2階のフロアが充分に冷えてきたら、冷たくなった空気が自然と下に降りていきます。その力を利用して1階を冷やすわけです。なので2階から1階に対して冷気がスムーズに降りる所がよく考えられていないと、下は涼しくなりません。これが最大の壁です。
2階建ての家には階段がありますよね。その階段が例えば廊下や玄関に向かって降りていたら、冷えた空気は廊下にいきます。どちらかと言えば、1階のリビングやダイニングなどの居室に行ってほしいですよね。そうすると階段は居室に向いてる方が効率は高いです。そういう意味で言うと、階段はルート1です。
併せて吹き抜けができるだけリビングやダイニングの上にあった方が望ましいのは、ダイレクトに冷気を降ろしていきたいからです。これがルート2ですね。
では階段と吹き抜けで下は充分に冷えるかと言うと、プランにもよりますが、ちょっと足りないかな?という気がします。なので3つ目のルートを何らかの方法で作ってください。ダクトで送るのも良し、もう1つ吹き抜けを作るのも良しですね。あとは小手先の技になりますが、サーキュレーターで冷気を下に送る促進をする仕掛けも良いでしょう。できるだけルートを複数取るようにしてください。これができてない家はとても多いような気がします。
次はリターン開口が充分に取れてないことです。これが見落としがちです。リターン開口は、暖かい空気を吸い込むところですね。そこから空気を吸い込んで、空調室を冷やしていく形です。そして、エアパスファンやいろんなファンなどで各部屋に供給していくわけですね。空気を供給する分、リターンが入って来なかったらおかしなことになります。うまく冷えないときは、リターンの開口部が小さいか、あるいは上手にエアコンに回るような配慮がされてないケースが多いです。つけておけばいいぐらいで考える人は結構いるので、注意してください。
最後に、1階はサニタリーもあるし廊下もあるしトイレもあるじゃないですか。そこがなんか暑い問題です。そこにどうやって冷気を配っていくかという配慮はいると思います。簡単なパイプファンみたいな物を冷えた部屋からサニタリーや廊下に持ってくるとか、あるいはダイレクトに持ってくる工夫などが必要です。これはいろんなやり方があるので、ひと口で回答できませんが、階段などにもなんとか回す方法ないかな?というのは模索をしてください。
今回は内緒にしてるようなところ、秘密みたいなところも喋ってしまいました。仕方ないですね、お客さんから質問されましたからね。これから家を建てる人は参考にしてくださいね。