木製サッシのメリット・デメリット
今日のテーマは木製サッシのメリット・デメリットです。
僕のスケッチを見てください。
家にある窓というのは全て、言い換えるとガラス障子になります。障子というのは日本のものですが、これは西洋の家の窓であっても、構成は同じです。
窓というのは大体四角いですよね。ガラスがあって、その周りに枠つまりサッシがあります。
ガラスにはいろいろ種類があってシングルガラス・ペアガラス・トリプルガラスなどがあります。サッシもアルミとか樹脂、木製のものがあります。
今回の動画は木製枠のガラス障子についての解説になります。
僕の小さい頃を思い返すと、家の窓って全部木製サッシでした。(ガラスはシングルガラスでした。)この木製が最近回帰しているなと感じています。
昔は木製のガラス障子って嫌だなと思っていました。大人たちも「アルミのサッシの方が窓がピシャッと閉まって隙間風が入らないのがいいな」と思っていたんです。
なので日本の家の窓の移り変わりを振り返ると、その後、木製サッシはアルミサッシに変わっていきます。アルミサッシは何が良いかというと、ガタツキとか隙間が少ないんですよね。
ただ、アルミサッシも欠点が目立つようになります。隙間風は入らないけど熱を通しやすいから冬にすごく結露するのがイヤだなぁとなっていきます。
そこで次に出てきたのがアルミ樹脂複合サッシです。表面はアルミで内側が樹脂というものですね。近年はこれがオール樹脂になりました。樹脂はアルミより結露しにくいですが、最近だとオール樹脂よりさらにハイグレードなものとして木製サッシの認知が高まっています。
なので「木製サッシに憧れるんです!」とか「木製サッシにしたいんですけどどう思いますか?」という質問をいただくことがあります。
まず木製サッシのメリットを説明すると、一番は熱伝導率が低いということです。断熱性が高い、と言ったほうがわかりやすいですかね。それから結露もしにくいです。
熱伝導率の低さをお伝えすると、アルミが175W/m K、塩ビが0.18 W/m K、木材が0.09〜0.19 W/m Kになります。アルミと比較すると1/1000くらいになるんですね。ちなみに木材の数値に幅があるのは木には種類がいろいろあるからです。なので、ざっくり言うと樹脂サッシより倍ぐらい断熱材が良いとなります。
次のメリットは風合いになります。やはり木は温かみがあるし素材感があります。樹脂だとプラスチックの延長みたいで味気ないと思われる方もいらっしゃるかと思います。
次のメリットが大開口が可能になることです。(これは2番目に大きいメリットだと思います。)
樹脂サッシでも大きい窓を入れることは可能ですが、幅が2.5mで高さが2m20cmぐらいまでが精いっぱいだと思います。
ところが木製サッシになると作り方によっては幅が4mぐらいまで広がります。大開口すべてが窓みたいなことが可能になるといわれているんですね。(現状だと外国製の木製サッシを使うことになると思います。)
窓が大きくなると重たくなるので、開閉には“ヘーベシーベ”と言う、建具の重さを軽減するような特殊な装置を付けることになります。またロックするのも樹脂サッシやアルミサッシだと1ヵ所支持でロックしますが、木製サッシは2ヵ所でグッと引き寄せることになるので、一般的には気密が非常に良いと言われています。
そして木を使うとなるとアルミサッシと比較して、ある程度大断面になるので、防音性も高くなります。気密がいい=音抜けが少なくなる、という面もありますね。
それから最後のメリットが耐久性です。
お客様とかに「アルミサッシって何年持つと思いますか?」とお聞きすると、大体「30年とか50年くらいですかね?」となります。ところが木製サッシは100年ぐらいもつんですよ。
100年と聞くと、今度は家が100年持つのかというところが気になりますが、一度建てたらほぼほぼ入れ替え無しで済むくらい持つということです。
今お伝えしたのが木製サッシのメリットになります。こんなにメリットがあるなら、なぜ、みんな木製にしないのかと言うとデメリットもあるからです。
一番のデメリットは値段が高いことです。
寸法とか取引先の工務店さんとか、ハウスメーカーの掛け率の問題があるから一概には言えませんが、ざっくり言うと、アルミサッシの金額を1としたら、アルミ樹脂複合は2倍弱、オール樹脂は3倍、木製は6倍くらいになります。(寸法・断面などで変わるので参考程度にしておいてください。)
2つ目が定期的なメンテナンスが必要だということです。
取り入れた方の話を聞くと3〜5年周期でメンテナンスをされています。組み方の都合でどうしてもジョイントができるので、隙間が発生しますよね。また木材は外に晒されていると風化もあります。なので接合部にシールを貼ったり、表面にニスとかオイルステインを塗るといったメンテナンスが必要です。
先程お伝えした100年持つというのは、定期的にメンテナンスしたうえでの話になります。放ったらかしだと100年は持たないと思います。
また木製サッシを取り入れるのであれば、雨がバンバン当たらないように庇を考えたり、少し奥まった所の開口部に使うというような工夫が要ります。こういったこをを考えてもらう必要もあるので、さらに金額が上がるという面もあります。
3つ目が海外メーカーのものが多いことです。
日本も木製サッシのメーカーさんも増えていますが、今の時点で実績があるのは海外です。なので物によって部品の在庫が少なかったり、すぐに修理したくても必要なものがなかなか手に入らない、というケースがあります。
ちなみに防火は、そこまで不安にならなくて大丈夫です。
「木って燃えるから防火はアカンですよね?」と聞かれることがありますが、実は鉄やアルミより燃えるのに時間が掛かります。たしかに燃えてはしまうのですが、意外と火に強いですし、防火認定を受けてるものも多いです。
これは予備知識ですが、アルミや鉄というのは意外と火に弱いです。一部分は燃えてないけど、燃えた部分はグニャっと変形します。なので木製サッシの防火性能に関してはデメリットにカウントしなくてもいいかもしれません。
ここまでのメリット・デメリットで考えていただくと、予算に余裕がある方は、木製サッシをたくさん使っていただくといいと思います。
そうでなければ、どこか家の見せ場になるような大開口に使うのがいいかなと思います。
1つの例をスケッチに描いてみました。
3m×2mぐらいの窓を取り付けたとします。格子も何もなくて、ピクチャーウインドウと言われる、外の景色がそのまま額縁の中の絵のように見える窓にすることも可能です。
ガラーッと開けてしまえば、リビングと外部が繋がって気持ちのいい空間になりますよね。春とか秋のような時期に開けて過ごしたら、とても豊かな時間が過ごせていいですよね。
こういう強い空間を1点作る、という場合は木製サッシがすごく活躍します。
なので、今回のメリット・デメリットを知っていただいた上で木製サッシを検討されると、豊かな家をつくるヒントになるはずです。ぜひ参考にしてみてください。