2022年 住宅ローン減税の改正点を解説
今日のテーマは住宅ローン減税です。
日本には長らく、これから家を建てる人のための応援といった形で、住宅ローン減税10年間という措置がありました。
僕のスケッチを見てください。
例えば1軒の家を建てるのに、3,000万円なら3,000万円4,000万円なら4,000万円で借り入れをします。
住宅ローンを活用してちょっとずつ返していくのですが、その年の終わり(年末)にローンの残りの残高がわかります。
3,000万円借り入れた場合、1年ぐらいであれば大して変わらないと思うので、残高も大体3,000万円としますね。
働いていたら当然、所得税を納められてるはずです。これまでは「所得税の1%の金額を上限に減額してあげるよ」という措置が住宅ローン減税になっていました。
普通であれば税金としてもらうものを返してあげることによって、あなたの家づくりを応援してあげるよということですね。かつ、この10年間はOKだよ、というのが少し前まで実施されていました。
2019年に消費税が8%から10%になりましたよね。当時はその2%分を「ローン減税の期間を10年から13年に 3年間延長することで、ほぼほぼそれに匹敵するようなことをします」というのをしていました。これが2021年までの ローン減税です。
本当を言うとローン減税が10年から13年になるのは、8%から10%に上がった時の一時的な救済措置だったので、すぐに終わる予定でした。でもコロナが起きて2年間ぐらい、なし崩し的に伸びていたんですね。ここのところコロナも落ち着いてきたので、2022年度の住宅ローン減税に関しては国が見直しますよ、となった訳です。
例えば3,000万円の建物の場合、2%分の消費税を余分に払うとしたら、約60万円余分に取られますよね。60万円÷3年で1年間で約20万円。大体ひと月20万円を、毎年還付してあげるねというのがローン減税の骨子になります。
そのことを1つクリアするために、国は、その時の市中金利を考えて1%ぐらいの残高を上限にしたらいいかなと思っていたんですね。
今、住宅ローンの変動金利には0.4%台というのがゴロゴロあります。
また10年固定のローン減税でも、直近のソニー銀行さんなら、10年固定で0.6〜0.65%ぐらいになります。だから1%を上限にしたら、なんと金利の方が安いんですね。だからお金を借りた方が儲かるという信じられない事態が去年までの金利情勢で起きていました。さすがに会計監査院が入って、それはおかしいだろうとなったんですね。
「返してあげるのはいいけど、逆ざやが発生するのは健全じゃないよね」ということで見直す流れになって、1%の枠を縮小せよという令が出されました。今年(2022年)はそれで行くことがほぼ決まってます。
いくらになったかというと1%が0.7%になると言われています。
そうなってくると、ローン残高の目安が3,000万円とした場合、0.7%で試算をしてみると年間21万円になります。21万円の還付するかしないかの攻防ということになるわけです。
今回の試算はあくまで1つの例です。
そんなの言われても自分にどう関係するかピンと来ないこともあるかと思います。
なので、例えばご主人の年収が550万円ぐらいで、奥さんはパートをしているけどご主人の扶養の範囲というご夫婦で考えてみたいと思います。
(だだし、お住いの市町村などによって条件が変わりますので、1つの例として聞いてください。)
今回のご夫婦ですと、所得税は14万5千円ぐらいになることが多いそうです。
そうすると住民税は97,500円くらいになります。住民税って本来はもっと高いですが「住民税のうち97,500円の額までなら、所得税でカバーできなかった場合、住民税も還付してもいいよ」という決まりがあったりします。
厳しくなったルールに沿って考えると、年収550万円ぐらいの人であれば、年間24.25万円ぐらいの還付が受けられるということになります。そうすると21万円を越しているから100%取れるということになります。
どれくらいが臨界点かなというのも考えてみます。
520万円ぐらいの年収のご主人で計算すると約21.25万円になりますから、この“年収が約520万円以上の人”は、みんな、ほぼほぼ還付が満額受けられるということになります。
期間が10年だったのを特別立法で13年にした話をしましたが、これはそのままにしてくれるらしいのでいいですよね。
消費税8%のまま家を建てるのと同じようなことが2022年も続けられるということになります。
ここで少し考えてみてください
1%よりは厳しくなったけど、0.7%ですよね。ということは市中の10年ものの固定負債0.6%ぐらいを選んだらあるわけなので、まだ0.1%逆ざやなんですよ。
ということはまだ新築をローンを借りてやることに関しては得だなということになります。
なので、これからは、ひと昔前の人たちは「お金借りるのは怖いからあまり借りない」と言ってたのが、今は「ローン残高をしっかり政府が返してあげよう」となりますよね。21万円より多くなるぐらい借りておいた方が、(逆ざや分は若干ですけど)全体的にみて得ということはわかると思います。
だからそういうことを考えて、まだまだ新築を建てることに関してはメリットがあるという部分が残ってるんだということを知っておいてください。
ただ、これは今日僕が一番伝えたいことではないんです。
この内容は報道があるので知ってる人も多いと思いますが、僕が一番大事だなと思うのは住宅の購入の上限金額です。
全部対象ではなくて、家の性能、つまり仕様によってリミットがあるんですね。
一般的な普通の家の場合、2021年までは4,000万円までは認めてあげるよとなっていました。(それを越したら適用外になります。)
ZEH(ゼロエネルギー住宅)水準の家も同じく4,000万円でした。
そして長期優良住宅・認定低炭素住宅というお墨付きの付いた性能の高い家なら5,000万円までというのが2021年までありましたが、これが縮小されます。
一般住宅に関しては1,000万円枠が減ります。ということは、たくさん借りた方がローン残高の0.7%の総額って大きくなりますよね。
共働きでいっぱい稼いでる人だったら、よりたくさんの還付が受けられることになっていたのが絞られる。これが重要なことなんです。
ただ、政府はこれにも救済措置を考えていて、省エネ性の高い家、つまり断熱性能・気密性能の高い家を作るのであれば、3,000万円の枠をもう少し上げますよ、という風にしています。
省エネ性が高い家で言うと4,000万円、ZEH水準だったら4,500万円、長期優良住宅だったら5,000万円になります。
今回の改正点の最大のポイントは、1%が0.7%というパッと見たところの損得に気持ちが行くんですけど、実は違うんですね。
この背景を利用して逆ざやを狙うと言うと国の人に怒られると思いますが、そういうことを含めて良い条件で建物を建てていくことに関しては、上限金額に縛りができたことの方が大きいんです。これを頭に置いておいてください。
今の話は2022年から2023年まで続くようですが、2024年になったら、さらに一般住宅はゼロになります。「一般住宅を建てる人にはローン減税なんかしてあげない」ということです。「これからは絶対に性能の高い家を建てないとダメですよ」ということが国の意思になります。
これはローン減税だけではありません。
例えばおじいちゃんから住宅資金の贈与を受ける優遇幅とかってありましたよね。子育て世代の省エネ住宅に関しては補助金を出すということもあって、そのことについても、国からの援助は省エネ性が高い家じゃないとダメになりました。
目先のイニシャルコスト優先で性能を落としても買える値段にするとか、そういった家を建てるというのを国は応援しない、という風になったことを知ってください。
これもよく報道されていることで「カーボンニュートラル」がありますよね。CO2を削減して地球環境に貢献することです。日本としてもちゃんと実行するために、産業界もしっかりしなさい、というのがあります。
個人単位でも家というものに関しては、CO2削減というテーマに対して、ものすごく影響が大きいんですね。なので国としては、「ちゃんとやってください。そうしないと優遇しませんよ」と言っているわけです。
2022年は「じゃあその省エネ住宅って、どれぐらいのものを建てるべきなのか」「それが自分たちの人生にどういう風にいい影響を与えるのか」ということも踏まえて、ローン減税であったり、先程の補助金みたいな制度を利用する段階に入ったと思います。
自分の家づくりを良いものにするためにも、そういったことを頭に置いて、これからの家づくりに取り組んでいただけたらと思います。