断熱窓と遮熱窓を使い分けるポイント
今日のテーマは窓です。窓には断熱窓と遮熱窓があって、家を建てるときには、この2つを使い分ける必要があります。その際のポイントや考え方を解説していきます。
僕のスケッチを見てください。
断熱窓や遮熱窓は何を以って区別しているかというと、窓のガラスの種類になります。
どちらも一般的にはLow-Eガラスと呼ばれる、ガラスの裏面に金属の塗膜があるものが使われています。
Low-Eのペアガラスが1枚立ててあったとして、左側が外、右側が室内と考えます。このとき外側に塗膜が付いているのが遮熱タイプ、内側に塗膜が付いてるやつが断熱タイプになります。遮熱窓と断熱窓は、こういった形で分けられていることを知っておいてください。
ただ、最近はガラスの種類が増えていて、さっきの説明だけではカバーしきれていないなと感じています。そこで今回はもう一度、断熱窓、遮熱窓、Low-Eガラスのことに関して重要なことを確認していきます。
窓を選ぶときに大切なのは「日射取得率」です。これは文字通り、どれだけの太陽の光を獲得できるかという率になります。この日射取得率が50%未満の窓を遮熱窓、日射取得率が50%以上の窓を断熱窓という風にお伝えしたほうが、わかりやすいかなと思います。
というのは、この50%という1つの境目に寄ってきた遮熱窓も登場しているんですね。なので、これまでは「遮熱窓だからダメ」となっていたケースでも、日射取得率を確認すると「名前は遮熱窓だけど使ったほうがいいんじゃないか」となることも出てきました。
ですから、これから家づくりされるみなさんは、窓の日射取得率を意識してください。
今回は窓の日射取得率だけお伝えして終わりにしても良いのですが、せっかくなので、断熱窓と遮熱窓について、もう少し説明したいと思います。
「遮熱」とか「断熱」って、どう違うのかわかりにくくないですか?
おそらくプロでも、家づくりの営業系だと、ちゃんと説明できていない人がいると思います。
まず断熱窓・遮熱窓の使い分けですが「南側には断熱窓を使う」というのが基本中の基本になります。つまり「50%以上の日射取得ができる窓を使ってね」ということです。東・西・北に関しては遮熱窓でいいです。
ここからはAとBの2つのパターンを出しながら説明していきますね。
パターンAは、今僕が話したもの。南側の窓は断熱窓で、あとは遮熱窓にするという形です。
パターンBというのは全部を遮熱窓にするという形です。これは性能を追い求める人がしがちです。
なぜ全部の窓を遮熱窓にしたいかというと、一般的に遮熱窓は断熱窓と比べて断熱性能が高いです。「え、断熱窓と言っているのに遮熱窓より性能悪いの?」と思われたかもしれません。この話をすると、時々怒る人もいらっしゃるんですけど、これはしょうがないんです。
U値で言うと、断熱窓より遮熱窓のほうが数値が小さいんですよね。(U値は小さい方が性能いいということになります。)
そうすると同じ間取り・同じ窓の大きさであっても、パターンAはU値=0.29、パターンBは U値=0.26となります。パターンBの方が性能が上がるんですね。
性能の高い家が欲しい人は「UA値の小さい家が欲しい」とおっしゃることが多いので、お客様からそういったリクエストをいただくと、業者の人も設計の人も「遮熱窓にすればUA値が小さくなる」と思って、こうした形になるケースがあります。
一方で、パターンA・Bとで暖房費・冷房費をシミュレーションすると、暖房費はパターンBの方が高くなります。冷房費に関してはパターンBの方が若干低いです。でも、冷房より暖房のほうが、使うエネルギーって大きいんですよね。だから光熱費の視点でいうとパターンBの方が損します。
性能を求めすぎてU値ばかりを見ていると、よく失敗することの1つに「断熱窓と遮熱窓の使い分けがよくわかっていなかった」というのがあります。
先程もお話ししたように商品名が断熱窓・遮熱窓となっていても、日射取得率を見ると遮熱窓であっても断熱窓に近いぐらいの数値であるケースがあるんですね。なので、忘れずに確認してほしいです。その上で、断熱窓を南面に使うと光熱費収支の点で有利に働くことを知っておいてください。
まとめると、窓に関しては冬に日射を多く取り込めるようにすることが一番大切です。なぜか言うと、暖房は冷房よりもエネルギーを使うからです。次に大切なのは、夏の時期、日がなるべく入らないようにカットすることです。
もし周囲に建物とかがない場合は、南側に必要な分は取りつつ、東・西・北は窓を小さくします。逆に都市部で建てる場合は、建物に囲まれていて日射が確保しにくいことが多いです。その際はは東と西の窓を大きくすることで、日射を確保します。どちらにしても、窓の大きさや配置はシミュレーションして決めます。
あともう1つ大切なのが通風です。これは窓を対角に配置するという手があります。
大切なことを3つ挙げましたが、建物の形によって善し悪しが変わってくることもあります。これも含めて「じゃあ断熱窓と遮熱窓はどう使い分けようか?」と考えていただくのがいいと思います。
僕個人としては、南面の窓は必ずしもトリプルである必要はないと思います。仮にダブルにしても、冬場の日射取得(ダイレクトゲイン)が大きければ、長い目で見ると光熱費が抑えられて、住み心地のいい家ができると考えています。そういったことも頭に置いていただきながら、窓の使い分けを検討してみてください。