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軒下+縁側があると暮らしが豊かになる

今日のテーマは縁側です。

みなさんどうですか? 縁側と聞いてパッと情景浮かびますか?50代以上の人はすぐ浮かぶと思いますが、30代後半の人だと厳しいのかなと思います。

縁側って日本家屋においてはスタンダードなものでしたが、今はずいぶん廃れてしまいましたよね。

縁側のある風景で分かりやすいものを挙げると、サザエさんのお家になります。
サザエさんのお家って縁側がありますよね。長い廊下の横に縁側があって、そこでタマが日向ぼっこしてたり、近所の猫とじゃれあうシーンを見た人は多いんじゃないかなと思います。

こういった風景って昭和の初期・中期ではすごく普通というか、よく見るものでした。

ここで僕のスケッチを見てください。
縁側って等間隔に置かれた柱が屋根を支えているケースもあれば、縁桁と言って杉の丸太の長いやつを両端で受けて片持ちの縁の屋根を作るものもあります。縁桁は昔の大工さんにとって腕の見せ所でした。

僕のおじいちゃんも大工で、この縁桁を刻むことに誇りを持っていた人でした。技術のある大工さんにとっては見せ場にしたい空間で、しかもすごく贅沢な空間でしたね。

若い人からすると、イメージが持ちにくいかもしれませんが、僕と年齢が近い人には、ここで少し縁側の風景を思い出して欲しいなと思います。

僕や友人から聞いた昔話をすると、縁側で夏にしたことって、たくさんあります。
例えば縁側に腰掛けて、おばあちゃんが冷やしてくれたスイカを食べたとか、カルピスを作って、それを濃いとか薄いとか言いながら飲んだり。あとはおじいちゃんたちがビール飲んだり枝豆を食べながら将棋を打っていた姿も覚えています。それから近所のお母さんたちが集まって井戸端会議ならぬ縁側会議していたり、秋口になるとお茶とおまんじゅうを用意してくれたり、社公的な場であったし、すごい楽しい空間でした。

縁側って、そうした空間だったのになぜか廃れてしまいましたよね。なぜ廃れてしまったのかなという話を友人たちと話をしていくと、いくつか理由があるなと思いました。

一番は開放的がゆえに冬寒いということ。全部開口ですからね。昔の縁側は木製の雨戸をガラガラと閉めるようなものでした。しかも縁側の内側は障子で仕切ってましたから断熱性なんてないので、寒くなって当たり前です。それから雨戸を開け締めするのが面倒、というのもあります。

また、おおらかな時代でしたから、鍵がガッチリ掛からなくても大丈夫という面もありました。今、縁側を作るとしたら防犯的にどうかなと思う方もいらっしゃるはずです。

それから人によっては昔の田舎の家のように土地に広さがあるとは限らないですよね。狭い所に建てるのであれば「縁側にするのはもったいない」「縁側よりも部屋を作ったほうがいい」と考える人も多いです。

なにより常に開けっ放しで近隣の人とも触れ合えるオープンな空間というのがプライバシーの点でどうかな…となっていったんだと思うんですよね。

一方で家づくりも変わっていきました。昔の日本家屋に見られた縁側の上に付く軒、通称・下屋と呼ばれるようなものが無くなっていって、合理性を突き詰めて行った結果、総二階の家が増えましたよね。総二階の家は廉価で、一般の人も家が持てるというメリットを生みましたが、その一方で日本家屋が持つ豊かさみたいなのは失っていったと思います。

その状況が今また変わっていって、注文住宅では「合理性だけを考えて家をつくるのは、あまりに味気ない」という想いが住み手側に出てきているのを感じます。だから自然素材をふんだんに使った家などが、再び注目を集めているんだと思うんですね。

今この動画を見ているみなさんの心の中にも、こういう日本の家屋で失った豊かな空間に戻ろうという機運があるんじゃないかなと思って、今回は縁側をテーマに話をしてみました。

また僕は最近何度も飯塚先生の中間領域の話をしています。中間領域というのは内でも外でもない空間で、飯塚先生の話では、この中間領域というのが豊かな家には欠かせないというんですね。

僕が中間領域、中間領域ってマイブームのようにみんなに言ってるので、耳タコの人もいるかもしれません。ただ、今回テーマにした縁側というのは、この中間領域の豊かさをイメージしていただくにはぴったりだと思うんです。せっかく家づくりするなら縁側的な空間を入れて欲しいなという気持ちがあります。

よくある縁側というのは、緑があって、約半間ほどになります。90cmから1mぐらいで作るんですけが、この時、軒はかなり深く出ないと気持ちのいい空間にはならないです。縁が90cmで軒も90cmで収まってしまったら、豊かな空間にはなりにくいです。

じゃあどういうのがいいのかと言うと、こんな感じになります。
これが広縁で普通なら90cmですが、これを180cm の深さにすると意味合いが大きく変わります。

例えば喫茶店でもビルの中にあるものより、外にあってテラスもあって、オーニングかかったり庇があるようなところのほうが居心地がいいですよね。人間って家の中にも居たいんですが、外にも居たい動物なんです。

でも外ってすごい過酷な環境です。日がガンガン当たったり雨が降ってきたり、あるときは強い風が吹いたりします。ところが日が強い時でも、ちょっとした木陰に入ったら気持ちがよかったり、それから少し足伸ばしたら日がかかったり風が当たって気持ちいい、というのもあります。

想像してみてほしいのですが、リゾートホテル行ったとき、気持ちのいい瞬間というのはベッドに寝転がったときよりも、大きい窓を開けたら海が広がっていたり、きれいな湖が見えるとか、そういう時が当てはまると思います。ちょっと外に出た時の内でも外でもない空間というのが気持ちいいんですよ。

みなさん、そんな空間を家に小さくてもいいから作りたくないですか?

ただ、軒がすごく出ている空間には1つ弱点があります。それは冬場の日射取得です。日当たりが確保しにくくなるので部屋が暗くなったりします。なので昔のように全面を縁側にするのではなく、部分的に作るというのがいいです。

出っ張った部分は窓をしっかり取る。それから吹き抜け空間を作って、日当たりを確保する。
中間領域になるような空間の作り方もできます。

オチのない話ですが、これから家づくり考える方に関しては、縁側的な空間を作って、光を取りながら木陰も上手に作るという二律背反することを意識していただくと、すごく豊かな空間ができるはずです。

特に、みんなでゴロゴロできるリビングとかダイニングの延長で作ることができたら、豊かで愛着がわく家になると思いますので、よければ参考にしてみてください。

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