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UA値とQ値を誤解してはいけない理由

今回は「UA値とQ値を誤解してはいけない理由」について解説します。

最近、家づくりの現場にいると、多くの会社が高性能な家づくりをPRするようになってきました。いわゆるパワービルダーやローコスト住宅ビルダーと業界内で分類されるような会社でも、驚くほどの性能を備えた住宅を提供するようになっています。それは、UA値やQ値といった数値を指標として高性能をアピールし、「当社のUA値は○○ですから、だから絶対にうちの家がいいですよ」といった形で競争になっています。

この状況を振り返ると、私の師匠である松尾先生がヨーロッパに行かれたのは約20年前です。その際、日本の家づくりにおける高断熱化の遅れに危機感を覚え、ご自身が直接携わるお客様だけでなく、世の中全体にご自身の持つノウハウを惜しげもなく雑誌に掲載しました。また、セミナーで発信されるなど積極的に啓蒙活動を行われてきました。もちろん松尾先生一人の力ではなく、野池先生や鎌田先生、水川先生といった多くの方々が業界全体に啓蒙し、消費者の意識も変わっていったのだと思います。この流れ自体は非常に良いことだと感じます。

一方、車の世界でもかつて同じようなことが議論されていました。私が若い頃、「車の本質的な価値とは何か」という議論が行われていたことを記憶しています。住宅においても「性能は確かに大切だが、それだけがすべてではない」という視点が必要ではないかと思うのです。そこで今回は、現在ひとつの指標となっているUA値やQ値といった性能値について、それらを誤解して理解したり、誤った形で活用することがないよう、お話ししたいと思います。

この話をするにあたり、辻先生の著書『ぜんぶ絵でわかるエコハウス』を参考にしつつ、私なりの解釈を交えながらお伝えしていきます。まず、UA値についてお話しします。UA値とは、建物の外皮、つまり家が外部と接している部分の平均的な熱貫流率を表す指標です。もう少し具体的に言うと、家の外気に接しているすべての部分から失われる熱量を、その外皮の面積で割った数値になります。

家を平面的に見た場合、本来は立体的な構造ですが、四方から熱が逃げていくことになります。この熱損失をすべて合計し、その面積で割ったものがUA値であり、住宅の断熱性能を端的に表す指標として使われています。

もう一つの指標として、かつてよく使われていたQ値(熱損失係数)があります。Q値の計算方法には分母と分子があり、分子には外皮の総熱損失量が含まれているため、この点ではUA値と共通しています。しかし、Q値の場合はこれに加えて「換気による熱損失」も考慮されています。そして、分母には建物の延べ床面積が使われているのが特徴です。

UA値の場合は外皮面積で割りますが、Q値は床面積で割るため、計算の基準が異なります。この「換気による熱損失」とは、空気が持つ熱量を計算し、建物の容積と換気回数を掛け合わせたものを指します。住宅では24時間換気が行われるため、一般的な基準として1時間あたり0.5回の換気回数が設定されています。

例えば、冬場に暖房をしているときに外の冷たい空気を取り入れると、当然ながら室内の熱が奪われます。また、温めた空気を排気することで、せっかく蓄えた熱も外へ逃げてしまいます。同様に、夏場の冷房時には、外の暖かい空気が入ることで室内の冷気が失われます。こうした換気による熱の出入りを考慮しないと、本当の意味での住宅性能は評価できません。

実際に、外皮の総熱損失が110だとすると、換気による熱損失は40程度にもなります。つまり、換気だけで全体の約3割もの熱が失われているのです。このことを考慮すると、換気による損失も無視できない重要な要素であることが分かります。しかし、現在ではこの視点があまり意識されなくなっているのが実情です。

しかし私が伝えたいのは、UA値やQ値の計算方法ではなく、それをどのように理解し、活用するかという点です。UA値やQ値は数値が小さいほど性能が高いことを意味します。しかし、「UA値が低い=暖かい家である」と単純に考えるのは間違いです。

もし「UA値が低いので、暖かい家になります」と言っていたら、それは非常に乱暴な説明で、本質を理解していません。例えば、同じUA値0.4の住宅が2軒あったとします。1軒目の家は南側に大きな窓を設け、冬場にしっかりと日射取得ができる設計になっているとします。この場合、室内はポカポカと暖かくなります。

一方、もう1軒の家は窓が少なく、UA値を下げるために開口部を減らした設計になっているとします。確かにUA値は同じですが、窓が少ない分、日射取得ができず、暖房をつけないと1日中寒い家になってしまいます。では、どちらの家が「暖かい家」と言えるのでしょうか?

このように、住宅の性能は単なる数値だけでは測れず、設計の工夫や住まい方によって大きく変わるのです。そのため、「UA値が低い=快適な家」と単純に考えるのではなく、総合的な視点を持つことが大切です。また、光熱費はUA値やQ値だけで評価できるものではありません。これらの数値だけを見て判断すると、誤解が生じやすくなります。

では、何を基準に考えるべきかというと、「総熱損失量」です。具体的に説明しましょう。例えば、Q値が1.46の家があるとします。同じQ値であっても、32坪の家と100坪の家を比べた場合、熱損失量は当然異なります。これは、一般的な感覚でも理解しやすいことですが、住宅の性能を語る際に、UA値やQ値だけに注目してはいけません。

例えば外気温が0℃で、室内を20℃に暖房している状況を考えます。32坪の家では温度差は20℃あり、それをQ値に乗じた結果、この家では約3000Wの熱が外へ逃げていきます。一方100坪の家では、床面積が大きくなるため、熱損失も増えます。同じ条件下では、約9600Wもの熱が失われてしまうのです。

つまり、単純にUA値やQ値だけを見て「この家は性能がいい」と評価するのは正しくありません。家の大きさによって熱の損失量が変わるため、総合的に考えることが重要です。UA値やQ値は、確かに住宅の性能を示す一つの指標にはなりますが、それだけを強調して営業トークをする人がいたら、その人とは距離を置いたほうがいいでしょう。それは家を売りたいだけであり、最適な提案をしようという視点を持っていません。

住宅の性能を正しく理解し、冷静に判断することが大切です。UA値やQ値の数値だけに惑わされず、総合的な視点で家づくりを考えていきましょう。

その上で、家の中で「暑い」「寒い」と感じるかどうかは、UA値やQ値だけで決まるわけではありません。実際には、「温熱の6要素」と呼ばれる要因によって決まるとされています。さらに、辻先生はこれにプラスアルファの要素もあるとおっしゃっています。

まず1つ目は「気温」です。当然ですが、気温が低いよりも高いほうが暖かく、高いよりも低いほうが涼しく感じます。2つ目は「相対湿度」です。湿度のコントロールが重要であり、冬場は加湿がないと快適に感じられませんし、夏場は除湿をしないと不快になります。しかし、この湿度のコントロールはUA値やQ値では測れません。Q値には換気量の影響が多少あるため関係しますが、現在よく使われるUA値においては、湿度は考慮されていません。

3つ目は「気流」です。家の中でどのように空気が流れるかも、快適性に大きく影響します。夏は風が流れると涼しく感じますが、冬は気流があると寒くなります。また、夏場でも気流が強すぎると、不快に感じる人もいるため、この要素も重要です。4つ目は「放射温度」です。熱の移動には「熱伝導」「対流」「輻射」の3つの要素があるとされています。このうち「輻射熱移動」とは、壁・天井・床などの表面から電磁波として熱が放射される現象です。この放射の仕方によっても、室内の快適さは大きく変わりますが、これもUA値やQ値だけでは測れません。

5つ目は「着衣量」です。例えば、室内でパンツ1枚で過ごしているのか、どてらを着ているのか、あるいはダウンジャケットを着ているのかによって、感じる暖かさは当然異なります。つまり、どのような暮らしをするのかによって、快適な温熱環境の基準も変わります。6つ目は「活動量」です。掃除や作業をしているときは体が温まりやすく、じっとしていると冷えを感じやすくなります。これらの1~5の要素を簡単にまとめると、「放熱」や「受熱」に関わる要因といえます。そして、6つ目の活動量は「発熱」、つまり体が自ら熱を生み出す要因になります。実は、こうした「内部発熱」も、家の心地よさを決める重要な要素の一つなのです。

つまり、家の快適さはUA値やQ値だけで決まるものではなく、もっと多くの要素が絡み合って成り立っています。このように考えると、「UA値が良い=良い家」と単純に判断するのがいかに乱暴か、お分かりいただけるのではないでしょうか。こうした視点を頭に置いて、冷静に判断していただければと思います。

最後に、辻先生が「温熱環境に影響を与えるプラスアルファの要素は何か?」という質問に対して、「床の材質」と答えられました。なぜ床の材質が重要なのかというと、人が暮らしていて直接肌に触れる部分が床だからです。例えば、タイルの上に座ると冷たく感じますが、絨毯の上に座ると暖かく感じますよね。これは、床の材質によって放熱・受熱の特性が変わるためです。

そのため、UA値がそこまで高くない家であっても、無垢のフローリングを使用していると、実際に住んでみたときに心地よく感じることがあります。逆に、「うちはUA値が非常に低く、高性能な家です!」とアピールされても、表面にウレタン塗装が施されてピカピカになっていると、タイルと同じように冷たく感じることもあります。こうした場合、実際の住み心地は必ずしも快適とは限りません。

つまり、家の快適さというのはUA値やQ値だけで決まるものではなく、それ以外にもさまざまな要素が関係しているのです。他の動画でも、堀部さんのお話を紹介しましたが、住まいの「豊かさ」や「快適さ」を決めるのは、数値だけでは測れない部分が多く存在します。だからこそ、性能競争の中で家を選ぶ際には、一つの指標にとらわれず、総合的に判断することが大切です。ぜひ、冷静に本当に自分たちに合った家を選び、後悔のない家づくりをしていただければと思います。

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